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“菊池ひみこ / Don’t Be Stupid” (1980)

[ FUSION DISC GUIDE ] 新装版発行で差し替えられた幻のアルバム評です。
詳しくはこちらでお話ししています。

収録曲
M1 Stormy Spring
M2 What's Baby Singin'
M3 For My Buddy
M4 Vampire
M5 Flight in the Moonlight
M6 Stiff Vamp
M7 Tear Drops
M8 Mambo Is Magic

ヤマハのコンクールをきっかけにプロデビューし、79年にはインナーギャラクシーオーケストラのメンバーとしてモントルー・ジャズ・フェスティバルに参加した経歴をもつ彼女のソロ・デビュー作。サックスのE.ワッツとのコラボレーションを中心にジャズをベースにしながらも、ポピュラーソングのような親しみ易いメロディと軽いタッチのソロが魅力のアルバム。ホーンを効かせたM2、生ピアノをフューチャーした壮大な構成のM5など、多彩な選曲が楽しい。

THE DIG presents DISC GUIDE SERIES 01 FUSION 2000年8月発行 初版105P

このアルバムのプロデュースは別記事でも紹介している沢井原兒氏。自身もサックスで参加していますが、全体にホーン・セクションが凝ってます。そんなホーンの嵐に堂々と対峙しているピアノ・プレイは、デビューアルバムとは思えないほどののびのびとした旋律を披露しています。

一聴すると耳障りの良いBGM扱いされてしまいますが、いやいや堅実なテクニックに裏付けられた、ジャズテイスト満載のフュージョンアルバムです。
当時売出中だったサックス・ブレーヤー、アーニー・ワッツとの絶妙なコラボレーションは秀逸。以降、ひみこさんのアルバムで重要なピースとして存在感を増していきます。

このアルバム以降、毎年新作をリリースしています。当時大学のバンドサークルで活動していた私たちも「Flight in the …」をはじめ、彼女の曲を順にレパートリーにしていました。懐かしい思い出です。

時は流れて2019年5月、暫く彼女の名前はあまり話題にあがらなくなりました。が、とあるライブで配られたフライヤーの中にひみこさんの名前がありました。「え?」驚いた私は、それを配ったミュージシャンの方を直撃(笑)。ひみこさんって未だ活動されていたのですねと。そして訪れた銀座のジャズ系老舗のライブハウス。そこには当時からはお年を重ねた(当たり前)ひみこさんの姿がありました。
ところがピアノプレイは全く衰えていません。バックを支える若手で強力な布陣のブリブリ言わせる演奏を、泰然自若と指先ひとつでまとめあげていく貫禄はさすがでした。
充実のライブで往時の名曲「Flight in the Moonlight」も演奏され、十数人の観客の中でひとり静かに大興奮していた私(笑)。

同じセットで別日に収録されたDVDが発売されています。この時の感動がそのまま詰まった内容。もちろんフェイヴァリットの「Fight in the…」も収められています。機会があれば是非ご覧になってください。

ひみこさんは現役ジャズ・ピアニストとして、鳥取市を拠点として今も精力的に活動されています。かれこれ40年以上になりますが、ずっと応援していますよ。
https://www.facebook.com/kikuchihimiko


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