【名盤伝説】”The Crusaders / Street Life”
お気に入りのミュージシャンとその作品を紹介しています。ソウルフルなジャズ
テイストのインスト・ナンバーで人気のクルセイダーズが1979年にリリースした『ストリート・ライフ』です。
クルセイダーズはサックスのウィルトン・フェルダー、トロンボーンのウェイン・ヘンダーソン、ピアノのジョー・サンプル、ドラムのスティックス・フーバーらにより1971年に結成されました(バンドの前身のジャズ・クルセイダーズは1961年結成) 。その黒っぽいテイストから彼らのサウンドはジャズ・ファンクとか、日本ではジャズとソウルミュージックが融合した「クロス・オーバー」とか「フュージョン」などと呼ばれていました。
1974年リリースのライヴ盤『スクラッチ』は、彼らのもつ黒っぽいグルーヴとジャズ・センスが融合した、時代のクロスオーバー・サウンドの名盤だと私は思っています。
その後に彼らは『ゾーズ・サザン・ナイツ』(1975)や『フリー・アズ・ザ・ウィンド』(1976)などのアルバムをリリースするものの、ブレイクするほどには至りませんでした・・・良い曲もあるんですけどね。
その後メンバーがウイルトン・フェルダー(Sax)、スティックス・フーパー(Drs)、ジョー・サンプル(Pf)の3人体制となった1979年、新作アルバムのレコーディングが始まります。バンドとしてよりポップな方向性へのチャレンジとして、本格的なボーカル・チューンを収録します。抜擢されたのは女性ジャズ・ボーカリストのランディ・クロフォードでした。
ランディは1976年にアルバム『Everything Must Change』でデビューします。このアルバムには75年11月にLAで開催されワールド・ジャズ・アソシエイションというジャズ・フェスのライヴ録音が収められています。このフェスにはジョーを始めとしてロバート・ポップウェル(Bs)、アンソニー・ジャクソン(Bs)、ラリー・カールトン(G)、エリック・ゲイル(G)、ジェイ・グレイドン(G)、ラルフ・マクドナルド(Perc)など、その後に一流ミュージシャンとして活躍する名プレイヤーが多数参加しています。
アルバムにはソロデビューしたラリー・カールトンに変わって、カッティング・ギターの名手バリー・フィナーティ、ローランド・バウティスタにポール・ジャクソン Jr、渋さ抜群のデビッド・T・ウォーカーなど複数のギタリストが大挙して参加して、曲ごとに特徴のあるアンサンブルが実現します。そして完成したのがこの『ストリート・ライフ』です。
新作アルバムは大評判となります。USジャズ・アルバム・チャートでは第1位を獲得。ブラック・チャートで3位、そして何とポップ・アルバム・チャートでも18位というバンド最大のヒット作になりました。
ストリングと大編成ホーン隊によるゴージャスなアレンジのタイトル曲のM1。アルバムに収められているオリジナル・テイクは11分超えの長尺作品。当時のLPサイズではA面にはたった2曲しか収められていませんでした。
このフル・スケールでは当然ラジオ局では流せません。そういえばラジオ・エディットはないものかと色々探してみると、7分31秒、5分32秒、3分58秒と様々なバージョンが見つかりました。オフィシャルということで最短のこちらのPVをご覧ください。妙に着飾る衣装に時代を感じます。しかも皆んな若い^^;;。この若さでこの渋さ、やはりこの人達、只者ではありません。
その後、この曲は映画「ジャッキー・ブラウン」(クエンティン・タランティーノ監督1997年作品)で、多分ランディのセルフ・カバー・バージョンがサウンド・トラックとして採用されています。
ストリート・ライフといっても決して路上生活のことではありません。「夜の街に響く寂しい音楽をいつも聴いている。私にはそれが全て。行くあてなどないけれど、こんな生き方が自由で自分らしいと思っている」(超意訳)。都会生活者の孤独と自由がテーマなのかなと思って聴いてます。
その後の彼らのステージでも好んで演奏されていたM5。ドラムのスティックス・フーパーの作品。ポーリニョ・ダ・コスタ(Perc)とのリズム・バトルが楽しいです。こんな渋い曲調が実にクルセイダーズっぽいなと感じます。
このアルバムの成功は様々なミュージシャンにも影響して、インスト物のアルバムにボーカル・チューンを収めるのがブームになります。もちろん彼らもこの手法でアルバムを制作していきます。そしてそれが奇しくもバンドの最も売れた時期となることには、何か微妙な感じがします。
クルセイダーズは時代のビッグスターとして輝いていましたね。良い時代だったと思います。
こちらのマガジンで1970〜80年代の洋物FUSION系の記事をまとめています。宜しければどうぞお立ち寄りください。
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