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【エッセイ】双極性障害、一人暮らし。②

物件選び

一人暮らしを始めよう。
決めてからの展開は早かった。

1ヶ月半前


「不動産屋に行くのいつにしましょうか。今日行っちゃいます?」そんなノリで、担当さんが不動産会社にアポを取ってくれた。

物件選びをするにあたって私が提示した希望条件は、家賃、通勤時間、初期費用の分割、都市ガスくらいだった。
正直、低収入の私が実家から出られるのなら、日当たりなんてどうでもいいし、築年数なんかも全く気にならなかった。
紹介された選択肢の中から決めようと決めていたのだ。

家賃設定が格安であることや、初期費用の分割が条件だっただけに、紹介された物件は2件だけだった。
どちらもプロパンガスで、病死による事故物件だ。
事故物件に関しては、医療職を経験しているためあまり気にならなかったが、プロパンガスは高いんだよなぁ…と少し悩んだ。

「持ち帰って考えさせてください」
間取り図が書かれた2枚の紙を持ち帰り、実家の部屋の本棚に隠すようにしまっておく。
この時点で家族には一人暮らしを始めることは伝えていない。

1ヶ月前

契約し、鍵を貰う。
鍵を貰ってすぐ家に行き、何も無い部屋でコンビニで買ったざる蕎麦を床に置いて食べた。
蕎麦を食べ終わると、カバンを枕に横になる。
思わず「はぁ〜」と息を吐き、脱力する。

部屋のドアを閉めても聞こえる喧嘩の声、親の顔色を伺う生活、部屋に入ってこられるかもしれないという不安。
実家にいると常に緊張感があり、肩に力が入りっぱなしだった。
これから私はここで1人で生活することになるんだ。
そう思うと、体の力が抜けて、ここから動きたくないという気持ちでいっぱいになった。

結局その日は、部屋の中の計測、汚れや傷の確認を行い、近くのリサイクルショップに行き、家電探しなどとしてから実家に帰った。

この時もまだ、家族には一人暮らしをすることを伝えていない。

1週間前

鍵を貰った日から、時間を見つけては新居に行って、家電や日用品を揃えていた。
もちろん、家族には内緒で、だ。
最初に買った家電は、冷蔵庫、洗濯機、IH、炊飯器、電気くらいだっただろうか。
冷蔵庫、洗濯機、電気は、サイクルショップで値引き交渉をして購入したものだ。
記憶が正しければ、5点揃えて5万円程度に収まっていたはずだ。
我ながらお買い物上手。

実家の荷物は、タクシーで運んだ。
荷物整理をしたところ、タクシーの荷台に乗る程度にしか持っていくものが無かったのだ。
というのも、私の場合は家族と絶縁するつもりは無かったからだ。
一先ず必要になるものを厳選し、その他は必要になったらその都度取りに帰る。そういう予定で荷造りをしたためだ。

準備が整って、一週間後から住み始めると決めてからようやく家族に話した。
「来週から一人暮らしすることにした。」
母から言われたのは確か、「出来ると思う」「けど突然なんで?」とかだった気がする。
もちろん一人暮らしを始める理由は、親子関係が悪いから以外に無かったが、私は一人暮らしした後、関係が良くなる方に賭けようと思ったから、「夢だったから、チャレンジしてみたい」と前向きな理由を伝え、応援してもらう形で家を出ることになった。

1週間前まで伝えなかった理由

一言で言うと、経験上、なんとなくそうした方が良さそうだったからだ。
今まで家族の行動パターンを見てきた自分の想像からすると、1ヶ月前に伝えてしまったら、その分考えて質問する時間が増えてしまう気がしたのだ。
具体的に言うと、どこら辺なの?お金はどうしたの?準備手伝おうか?なんて言われそうだ。
どこの家庭も似たようなものだと思うが、親というのは子どもがすることに何かと口出しをしたくなるものだから、事後報告くらいが丁度いいと私は心得ている。
いやどうだろう。私の親専用の攻略方法かもしれない。


入居時状況の確認。
大事な証拠写真。

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