大人の事情を知って嫌な気分になっていた

幼稚園から大学生までずっとエレクトーンを習っていた。
大学一年生の時、新しいエレクトーンを買わないかとの話が来た。
その頃の私の理解ではまず次の演奏試験を受けるのに家にあるわたしのエレクトーンではダメとかなんとか。それで新しいのがいるだろうということだった。
先生はいつのまにか私の父に連絡して、先生と、私の知らない男性が一緒に家にまで来ることになった。今思うと営業マンだ。

家で散々褒めちぎられ、さらに演奏アルバイトまで紹介された。
エレクトーンを買う話は考えておくということでとりあえずアルバイトは始まった。
前の人が都合で辞めるからと言う話だった。まずは見学からということでその人の演奏を聞きに行くことになった。
レストランで弾くのだからとても魅力的だった。
そしてその人は辞めて次の月から私になった。

ところが…

3ヶ月ほどして父がやはりエレクトーンは買わないと先生に伝えた。私もちょっと不安だった。300万ほどもするそんな高いものを買って私が続けなかったら、と思うと買って欲しいとは言えなかった。
するとほどなくして、先生から、「ごめんね、前の人がまたアルバイトをやりたいって言い出したんだって。」
こうして私の演奏アルバイトは3ヶ月で終わった。

社会に出てからだった。真相を父から聞いたのは。
買わないと言った途端、その営業マンが無愛想になったらしい。そしてその後すぐに私のアルバイトが終わったことを私から聞かされたとのことだった。
話す父はかなり不愉快そうだった。

私は大人の汚れた面を初めて知ってショックだった。どろっとした気持ち悪い感じがしたのを覚えている。

利用されて、得がなさそうとわかるとポイ、って本当にあるんだ。

今ならもうショックも受けないだろう。
仕返しだってしてるかも⁈

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なにも知らないずいぶん若かった頃の話でした。