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20年ぶりに再会した曲

Spotifyありがとう


もう一度聴きたいな…と長年恋しく思っていた曲がある。
が、曲名もアーティスト名も全然わからず、手掛かりはうろ覚えの歌詞のみ。
何度か歌詞で検索なんてかけてみたけれど、そもそも歌詞もうろ覚えのため、うまくヒットせず。恋しく思いながらも、その曲にはたどり着けずにいた。

その曲は、2003年ころに、ある人からもらったCDに入っていた1曲である。
その人は歌うたいであり、自身で作曲もしており、私にもいろいろ歌ってくれた。
ジョアン・ジルベルトのセクシーさについて語られたことを覚えている。
ある日、その人が2枚のCDをくれた。
1枚はおすすめのボサノヴァが20曲ほど入っており、もう1枚はおすすめの邦楽を集めたもので、私に聴いてほしいと、わざわざCDに焼いてくれたのだった。
ちなみにCDには手書きでタイトルだけ書いてくれていて、「ボサノヴァ♪」と「つじあやのなど♬」である。そう、収録曲については書いてくれていなかった。

思い出せなかったその曲は、邦楽のCDのほうに入っていた。
CDの3曲目だったと思う。つじあやのさんの、「月が泣いている」の次に入っていた。
とても好きだった。
電車の中で何度も聴いた。CDをもらった季節は春だった。お茶の水駅の聖橋口のほうに桜が咲いていて、それを観ながら聴いたことも覚えている。

今度会ったら誰のなんて曲なのか教えてもらおう、と思っていた。
さっさとメールすればよかったのだが、会ったときにCDについての感想とか、その曲についてとか、色々話せばいいと思っていたのだ。
メール不精が仇となってしまった。
次に会ったとき、その人とささいなことで険悪になってしまったことで、私はCDの感想も、その曲についても話せないまま、その人とお別れすることになってしまった。
気まずいままお別れしたことで、なんとなくそのCDを聴くこともなくなり、私が知りたかった曲については迷宮入りしたのであった。

時を経ること20年。
再会は唐突に訪れた。

私は社用車であちこちへ行く仕事をしているので、Spotifyで音楽を聴いている。
どのサブスクにもある機能だが、Spotifyにも、ユーザーが好きそうな曲を自動で流し続けてくれる機能がある。ある本屋の駐車場で一息ついていたその時、なんと、あの曲が再生されたのだ。

空気公団 「レモンを買おう」


ありがとうSpotify。
私の好きな音楽の傾向を日々しっかり拾ってくれていていたからこそ、そこにたどり着いたのだろう。(20年間、趣味嗜好があんまり変わってないってことなんだろうな。)
その日は、この空気公団の「レモンを買おう」を20回以上聴いた。

20歳そこそこの私にとって、この曲のどこがそんなに刺さったのかはわからない。
しかし、20年たって改めて聴いても、私はやはりこの曲が大好きだ。

何の意味もなく生きているようで 
いつでも何かを忘れてはいなかった

初めて聴いた20年前、あのころ目に映っていた景色は、全部フィルム写真のように優しい色で、時に輪郭は曖昧になってしまって、はっきり思い出すことはできない。でも、そんな心の景色にもまた、この曲はぴったりだ。

うれしかったな。また聴けて。

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