子どもの成長記録。いつの間にこんなに大きくなっちゃったんだ？いつかこの日を思い出してきっとまた泣いてしまう。

うそこけー。

保育園で覚えたセリフを息子が得意そうに投げかける。

うそこけー。
昔私が子どもの頃にも流行ってて
みんな口にしていた。

嘘なんかこいちゃいない。

私は先日保育園の発表会で泣いた。

泣いたのは私だけでないはずだ。
同じクラスの親御さんのすすり泣く声が聞こえたから。
マスクの中が鼻水と涙でぐしょぐしょになってしまった。

やれやれ、いつの間にこんなに大きくなってしまったんだ、ほんとに。
ゆっくりおっきくなって。
この願い、神様に聞いてもらえたためしはない。

最初の発表会は0歳。
タンバリンをかじってた。
1歳は指を口に入れてたっけ。
2歳は周りの子になんとなく合わせて。
年少さんはスズをがんばってた。
年中さんは楽器も劇のセリフもがんばったね、そして同じ役の子に促されてた。
と、ここまではビデオでの鑑賞だった。
そして息子はどこか周りの子たちに便乗して発表会をやり過ごしていた。

今年はコロナの中でも、先生たちが工夫してくれて年長にして、初めて肉眼で見る発表会だった。

開始2秒で涙腺崩壊した私。

なぜなら、息子は、私の方をまっすぐ見て、深くおじぎをして、大きな声で歌い始めたから。

照れることもなく、誰かの影に隠れることもなく、堂々と発表できるようになった。
晴れ姿をみてほしくてがんばってる。

たったそれだけ。それだけなんだけど。

初めて見た息子の堂々とした姿に胸が熱くなって、僕を見て！と訴えるまっすぐな視線に、胸が苦しくなりそうで、想い溢れて泣いてしまった。

最後までよくがんばっていた。

クラスメイト達もみんな、がんばっていた。
会場があたたかな空気に包まれて、
すすり泣く声があちこちに聞こえた。

保育園の卒園式で、保護者たちが揃いも揃って泣く姿を見てギョッとした記憶がまだ残ってる。
おめでたい日になんで泣くの？
大人でも泣くことあるの？
無邪気な私はそう思っていた。

あれから随分長い月日が経った。
保護者たちの気持ちが分かるようになった。
泣いてしまうよ、そりゃ。
涙を禁じ得ない、とても。

あんなに可愛くて
泣くことしかできなかった赤ちゃんが。
こんなにも、頑張り屋さんになって
堂々と歌も歌い楽器もできてセリフも言える。
自分で努力して乗り越えることも知った。
そして、その力で人を幸せにできる。
こんなに、たくさんのことができて
嬉しい。そしてさみしい。

ままならない息子とままならない母親の
体当たりの日々が
過去になった事実を突きつけられて。
親離れの日がまた近づいた事実を突きつけられて。
やっぱりさみしい。

息子にがんばったね、と褒めたい気持ち。
先生やお友達に感謝したい気持ち。
夫や両親に感謝したい気持ち。
そして自分にもよくがんばったね、と言いたい気持ち。

これからも元気でいてほしい。
たくさんの笑顔をみていたい。

ありとあらゆる気持ちがドッと波のように押し寄せてくる。
心のタンクが溢れ出して、処理できなくなる。
そして涙になって出てくる気がした。
心と体は一体不可分だ。

こんなにも心が動く、気持ちが動く出来事。
これはきっと、冥土の土産になるだろう。


発表会の晩は、名残惜しいような、これからが楽しみなような、ごちゃまぜな気持ちで眠りについた。

発表会が終わったら子どもたちは卒園式の練習をするのだろう。

卒園式まであと2ヶ月弱。

心のタンクが溢れ出すあの瞬間を受け入れよう。
卒園式の日には、笑顔で息子を抱きしめよう。
そして、おめでとう、ありがとうを言おう。
小学校の卒業式の日には抱きしめさせてくれるかわからないから。