高校野球と人権【読書感想】#理不尽な世界の人間達(その5)<甲子園の魔力>#「お気に入り」について
「お気に入り制度」という保身術〈栄京学園の広田投手〉
城山監督率いる栄京学園に広田という投手がいる。
城山監督が甲子園で優勝する為にスカウトしてきた天才左腕だ。
ずる賢く冷酷な性格であり、城山監督の非情な指示を躊躇いなく遂行する。
城山監督からは優遇され何をやっても許される特別な存在である。
実家は資産家であり裕福な環境で育った。
①監督自身が見込みスカウトした。
②チームを勝利に導く能力を有している。
③チームや監督に対しての資金的援助が見込まれる。
広田投手は「お気にり」の条件である①②③を全て兼ね備えている。
城山監督然り、あだち充先生は、よくもここまで象徴的なキャラクターを登場させたものだと感心する。
監督が絶対的権力を維持する最後のパーツは「お気に入り」である。
著書で暴力を振るっても周囲から支持される監督は「勝たせてくれる先生だからというメリットが優先しているから」と説いている。
城山監督いわく「勝つことこそ正義であり、存在意義」である。
高校野球の場合、「甲子園」と言うのが何よりも優先される免罪符となる。
甲子園を目指して戦うということは「平時」では無く「戦時」を彷彿させるほどの異常性がある。著書でも「その異常性が甲子園の魔力であり、魅力」と表現しており、「軍隊教育とは強制を強制と感じさせないようなプログラム、異常を異常と感じさせないようなプログラム」であると説いている。
監督にとって「甲子園に出場させ優勝に導くこと」が最大の自己保身であり、その利害関係者として「お気に入り」が存在する。
なので広田投手は駒として扱われている他の選手とは違い監督とはパートナーの様な扱いを受けている。
このケースは極端だが監督に贔屓されている「お気に入り」は、監督の保身にとって利用価値のある選手であることが多い。
その様して監督は自らの権力を維持し続けるのだ。
『H2』から30年経過するが、最近、身近でも旧態依然とした選手統制を実施している高校が存在する。
・「吊し上げ」が行われている。
・「干されてる」選手がいる。
・「懲罰交代」が頻繁にある。
・スタメン外野手の守備に違和感がある。
・厳しい中で一部横柄な選手もいる。
そんな傾向を感じたら要注意である。
果たして旧態依然とした体制はいつ終焉を迎えるのであろうか?
『H2』では、その顛末についても描かれている。
あだち充先生は預言者なのかと考えてしまう。
<顛末は次回にて>
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