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高校野球と人権【読書感想】#理不尽な世界の人間達(その6)<フランス革命と人権>#絶対王政の終焉

「絶対王政の終焉」〈捨て駒たちの反乱〉

栄京学園は、夏の大会で主人公が所属する千川高校と対戦する。
千川高校を率いるのは、かつて高校時代に3年間ベンチ入りするも、城山監督の嫌がらせで、一度も試合に出ることの出来なかった経験を持つ古賀監督である。

主人公である天才右腕の国見比呂と城山監督のお気に入りである広田投手の投手戦により試合が拮抗するが、広田投手が肩に違和感を覚え交代すると次第に千川高校のリードが広がっていく。

城山監督は勝つために姑息な手段を多用するも、かつて師弟関係にあった古賀監督にはお見通しであり通用しない。
苛立ちを隠せない城山監督は意に沿わない選手を次々と懲罰交代し、しまいには自分の息のかかっていない学年の3年生を全員交代させてしまう。

今まで城山監督に虐げられてきた部員達は、選手層が薄くなったのを見計らい初めて反逆を試みる。
実力が秀でるも監督に嫌われ干された小倉捕手を出場させるため、最後の捕手が自ら負傷し、小倉捕手を出さざるを得ない状況にしたのだ。

自らのポリシーを曲げるのは屈辱だが敗北したら元も子も無いことから、城山監督はやむを得ず小倉捕手を試合に出場させる。
小倉捕手が出場すると栄京学園は小倉のチームとなり、城山監督の影響力が及ばなくなったのだ。

あだち充『H2』16巻P176

小倉捕手によりまとまった英京学園は見違える程強くなり、千川高校を猛追するも、あと一歩及ばず敗北。プライドを取り戻した英京学園の選手達は、敗れるも代え難い達成感に満ち溢れていた。

一方、城山監督は自分が嫌った教え子に敗れ、駒だった選手達にも裏切られ、お気に入りの広田投手にも見捨てられた。
絶対的な権力を振るえなくなった監督は何もすることが出来ず、野球部という居場所を失った監督はただのプライドの塊でしか無い。

その後、城山監督は体調不良を理由に姿を消した。
贔屓にしていた広田投手からも「逃げ出した」と言われる始末である。

著書でも、フランス革命について、それまで「はい」しか言わなかった選手たちが突然、監督に対して「もうあなたの好き勝手にはさせませんよ。野球部はあなたのものではない、俺たちのものだ!」と言う。
ブルブル震えながら。でも、決然と。ありえないですよ。その状況と同じなのだと考えると、世界的な革命における摩擦たるや想像を絶します。
と評している。

本年、選手を「捨て駒」と罵倒して解任された監督がいたと聞く。
権力でしか人間と関われない指導者は、権力が無くなると消えるしかない。
フランス革命ではルイ14世が断頭台に送られた。
それが20世紀型監督の行先である。

<続く 次回が最終です>


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