どうする団塊ジュニア世代(#14)<異なる封建制>
introduction
敗戦後の第一次ベビーブームにより誕生した世代は「団塊世代」と呼ばれ、戦後日本の復興に大きな影響を与えました。
「団塊世代」は文化的、思想的な部分で共通しているという特徴を有しており、この特徴こそが戦後日本復興の大きな要因であると考えます。
私は戦後日本を早急に復興せさるため、何者かが恣意的に第一次ベビーブーマーを団塊化させたのではと推察します。
あくまで個人的な見解ですので、ホラ話と思って読んで下さい。
*前回はこちら
くい違う2人
時は遡り1946年 大日本生命館にて
(完全にフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ありません)
新憲法草案作成の期限まで「あと7日」
新憲法の草案を10日で作成するという無理難題を押し付けられた加藤法制局部長は『マッカーサー三原則』のうち「封建制廃止」について完全に煮詰まっていた。
加藤の持論はこうだ。
「明治維新で封建制は廃止されている」
明治新政府が「版籍奉還(はんせきほうかん)」を実施したことにより、土地や人が藩から国のものになる。
また「廃藩置県(はいはんちけん)」により、藩知事(実際に治めていたのは元大名)を廃止して、中央政府からの役人を県知事に配置した。
これにより鎌倉時代の「御恩と奉公」から始まる土地(領地)を介した主従関係に基づく政治体制が終焉して、日本は「近世」から「近代」に変遷したのだ。
「今更、封建制なんて」
袋小路へ迷い込んでいる加藤の耳に、勢いよくドアを開く音が響く。
「加藤部長さんはどちらにいます?」
息を切らしたMSK25最年少の声だ。
「通訳のシロータさんですね。私に何か用ですか?」
加藤は若干、面倒臭げに尋ねる。
「封建制度を無くしたいのですが、どうしたら良いですか?」
いきなりの質問だが、シロータの目には迷いは無い。
「シロータ お前もか・・」
加藤はそう思いながら、気を取り直しこう答える。
「日本は既に近代国家です。封建国家ではありません」
「じゃ、なぜ女性に権利が認められないの?」
加藤の予想に反して彼女は悲しげに反論した。
「米森のおっちゃんが、日本には沢山の偉い人たちがいて、国民の人権を制限して縛り付けているって言ってた」
「加藤部長も偉い人の仲間なの?」
彼女は質問を立て続ける。
「言っている意味がわからない」
呆気に取られるも、加藤は質問に興味をしめした。
「女性の権利が封建制度にどう関係あるのですか?」
彼女の勢いにつられ、加藤は思わず質問を返してしまった。
「それはわからない。でも日本は、とても封建的よね。」
彼女は素直に答える。
「素人の方が本質が見える」
不意にヒューストンGHQ民政局長の言葉が蘇る。
「私はバイアスの檻から出られずに、煮詰まっていたかもしれない」
加藤はそう思い、一つ気になっていた名前を尋ねた。
「米森という人物はどんな人?」
シロータは笑顔で答える。
「米森さんは、図書館にいつもいる暇なおっちゃん。」
「でもね。部長の事は知ってるみたい」
「それでね。困っているようだったらこう伝えてって言われた。」
「米森さんは何と?」
加藤はすっかりシロータのペースにハマり、尋ねずにはいられない。
「本音と建前」
シロータが伝えたこの言葉に、何か強烈なメッセージが込められてるのを加藤は感じた。
本音と建前
日本は明治維新以降、近代化を目指して闇雲に邁進した。
その結果、80年足らずで列強諸国の脅威となるも、大戦に巻き込まれ全てを失うこととなる。
加藤は自問自答する。
「なぜ、日本は近代化を急いだのか?」
もう1人の加藤が答える。
「列強諸国の脅威に対抗するため」
そうだ。
日本は脅威に対抗するために脅威の存在になったのだ。
加藤は近代化の本来の意味を知っている。
近代化とは封建的なものを排除して、産業化・資本主義化・合理化・民主化していくことである。
そして列強諸国のそれは技術革新による産業構造の変化で、プレイヤーは産業資本家であり、民主化がセットとなる。
しかし日本は「富国強兵」を目的に政府が政策として近代化を進めた。
それは民主主義的というよりも、社会主義的な計画性が色濃い。
「本音と建前」
建前は「近代化」だが本音は「封建制度の欧米化」である。
明治維新のプレイヤーは封建時代と同じ支配階級の武士なのだから、封建的な体質は新しい指導者にとっても生命線となる。
「全てをリセットする」
『マッカーサー三原則』は、全てをリセットするために提示された。
その意味でも「封建制廃止」は必須なのかもしれない。
「明治維新で封建制は廃止されている」
まず自らの持論を疑うことが必要だと加藤は感じた。
明治維新はリセットでは無い。
まずは「明治維新は何を変わり何が変わらなかったのか」を考えることから始める必要がある。
悪い癖が炸裂
またまた終始、小芝居風の物語で終わってしまいました。
そしてシロータはどこに行ってしまったのでしょうか?
ちなみに終戦直後は近代を近代と呼んでいないと思いますが、分かりやすいですように「近代」と表記しました。
また悪い癖が出ました。
我ながら呆れており、皆さんには飽きられても仕方ないと感じております。
今回は「なぜ封建制廃止が必要か」を説明しました。
次回は「明治維新で封建制はどうなった」という内容を説明する予定です。
<続く>
*次の作品
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