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『下克上球児』をブラバン応援で考察する(ネタバレあり)

鈴木亮平さんが主演を務めるTBS日曜劇場『下克上球児』の第9話が12月10日に放送されました。

前回、『下克上球児』で『モンキーターン』という曲が登場したという説明をしたばかりなので第9話の内容はビックリです。

第9話は「第8話は前振りだったのか」と言わんばかりの「ブラバン応援歌回」となりました(勿論、内容も涙無しでは語れない感動回でしたが)ので、ブラバン応援を軸として考察していきます。

いきなり『モンキーターン』

鈴木亮平さんが演じる南雲監督が率いる越山高校と甲子園常連校の強豪・星葉高校の対戦となった三重県予選準決勝。
1回表、星葉高校のブラバン応援がいきなり炸裂します。

第8話で南雲監督が、「試合に飲まれないように聞いておけ」と言っていた『モンキーターン』が演奏されました。

越山高校の先発投手は初先発の根室君。
応援の迫力に押され先頭打者に四球を与えてしまいます。

『モンキーターン』の正式名はSGラッシュ優勝戦BGM(CHIBAチャンステーマ Version)と言って、千葉ロッテマリーンズのチャンステーマでした。

元々はパチスロの導入曲でしたが、今では甲子園応援歌の定番となっており、「美爆音」で有名な習志野高校の『モンキーターン』は有名です。

続いては『夏祭り』

星葉高校は手を緩めません。
続く2番バッターには『夏祭り』を演奏しました。

2000年にリリースした「Whiteberry」の曲が有名ですが、
元々は「JITTE RINN’JINN」が1990年に発表した曲です。

夏の甲子園をイメージさせる「夏祭り」と本塁打を連想させる「打ち上げ花火」そして「君とみた夏は遠い夢の中」
という歌詞は甲子園の儚さを感じさせてくれます。
こちらも甲子園定番曲です。

強豪・星葉高校の進撃が止まらない『江蓮の弓矢』

1回表、1アウト1塁3塁で4番の超高校級打者、しっかり丸刈りの江戸川君に打席が回ります。

ここで『モンキーターン』かと思いきや、まさかの『江蓮の弓矢』でした。
『江蓮の弓矢』はアニメ「進撃の巨人」の前期OPです。

野球は勿論、吹奏楽でも全国区である大阪桐蔭高校の『江蓮の弓矢』は有名で破壊力も全国区です。

質実剛健である江戸川君のイメージが「進撃の巨人」とマッチしたのかも知れませんね。

江戸川君はこのチャンスにきっちりと犠牲フライを決め星葉高校は先制点を取ります。


手堅く『サウスポー』

次にブラバン応援が登場するのは、4回裏、越山高校の攻撃です。
2番打者の日置弟に対して応援されたのは元祖応援歌『サウスポー』です。

原曲は1978年にリリースされた『サウスポー』は、当時のスーパーアイドル「ピンクレディ」が歌っていました。

歌詞は世界のホームラン王である王選手と左投げの投手が真っ向勝負を展開する内容になっており、甲子園応援歌になるべくしてなったという曲です。
全国津々浦々で応援歌として愛されているレジェント級の一曲です。

やっぱり『モンキーターン』

8回表、越山高校のピンチで4番の江戸川君に打席が回ります。
満を持しての『モンキーターン』です。

粘り強い投球を見せる根室君は、江戸川君をセンターフライに打ち取るも、センターとライトが激突。
不運にも2点を献上し、逆転を許してしまいました。

越山の選手達が「応援で声が全然聞こえない」と言ってましたが、観客がいない環境に慣れている選手は「選手同士の声かけ」や「ボールがバットに当たる音」が聞こえ無いことでパニックになることがあります。

私の高校は地区大会の決勝に進出するまでは、全校応援に行かないという暗黙のルールがありました。

有難いことに最後の夏、決勝戦へ進出することが叶ったのですが、私のブラバン応援初体験は、両校応援や観客を合わせて4,000人ほどの声援付きという、身の丈に合わないものになってしまいました。

生まれて初めての経験だった為、何も聞こえない状態となり、センターだった私は見事にフライの目測を誤ってランニングホームランにしてしまった苦い思い出があります。

なのでお互いの声かけが聞こえず激突する事は十分に考えられます。

最終回で『スピードスター』

越山高校、最後の攻撃です。

途中出場した椿屋主将の打席、応援歌は『スピードスター』でした。

根室君の美人なお姉さん(山下美月さん)が、ずっと『スピードスター』のボードを持っていたので、いつかは来ると思ってましたが、最終回にやっと登場しました。

美人姉さんの応援空しく三振に終わりましたが、南雲監督が「よく粘った」と労っていたところが涙を誘います。

元々は千葉ロッテマリーンズの西岡選手の応援歌です。
今では高校野球の応援歌としても有名で、前回の北海道大会編でも取り上げた曲です。

続く日置弟は4回裏同様、『サウスポー』でした。
高校野球もプロ野球と同じく応援歌が選手に紐つくことが一般的で、大阪桐蔭全盛期の根尾昂選手は「かっせー!パワプロ」が応援歌でした。

日置弟は150キロ右腕の児玉君からいい当たりを打つも、サード江戸川の好守に阻まれ2アウト。

ちなみに150キロ右腕として登場した児玉君は、中日ドラゴンズの岡林優希選手がモデルです。

3番の楡君も『スピードスター』。
即席応援団のレパートリーの少なさが出てしまいますが、見事にレフト前ヒットを放ち出塁を果たします。

私が全校応援された時のブラバンも当日結成の超即席だったので、『コンバットマーチ』と『篠塚のテーマ』の繰り返しでした。

ちなみに『コンバットマーチ』は、「ARE」で有名な岡田監督の応援歌です。意外と渋いですね。

ジュノンボーイは『狙いうち』 そして・・・

最後に紹介するのは4番中世古君です。
父親に中山秀征さんを持つジュノンボーイの応援歌は『狙いうち』でした。

原曲は1973年にリリースされ山本リンダさんが歌ってました。
冒頭の「🎵ウララ🎵ウララ〜」が印象的な曲です。

『狙いうち』は、東京六大学野球の明治大学応援団がチャンステーマとして導入したのが始まりです。

中世古君は「明日も必ずここに立つ」と、頼もしくも初々しいセリフを残して四球を選択して出塁。

ここで真打、犬塚御曹司のお目見えとなります。

そして当確のアニメ演出の後、見事にサヨナラ安打を決め、涙の大円団となりました。

「翔君凄いな」という小日向さんのセリフが胸に沁みます。

ブラバンも甲子園を目指していた。

「うちのブラスバンドと応援団も越山のスタンドに入れてやってくれ」
「あいつらも不完全燃焼だ」

『下克上球児』第9話より

試合後の松平健さんが演じる星葉高校監督のセリフです。
「不完全燃焼?」
と思った方も多いでしょうが、
ブラスバンドも応援団も甲子園を夢見て弛まむ努力を続けて来たのです。

ベンチ外でスタンド応援していた3年生の選手、ブラスバンドや応援団の3年生。それぞれの「最後の夏」があるのです。

その気持ちを汲んでの心配りには頭が下がります。
試合中のイザコザ仲裁といい流石、『暴れん坊将軍』様です。

心温まる話『それぞれの最後の夏』

1991年、北海道の地方にある公立の進学校には、旧制学校時に甲子園に出場して以来、甲子園に縁遠い野球部があった。

近年では北海道大会への出場権をかけた地区決勝にさえも進出することが叶わず、当時の3年生が入学した時は、先輩6名の廃部寸前状態であった。

そんな野球部がある公立の進学校の校長は、当時の3年生が入学した時に転任してきた。
彼はこの学校で定年を迎える予定であり、今年が最後の年度である。

教員生活の最後を迎えるに当たり、彼には一つ心残りがあった。
自分が校長の在任時に高校野球の全校応援を行いたい。
しかし、その公立高校には暗黙のルールが存在したのだ。

「地区大会決勝までは全校応援できない」

過去、野球部が強かった頃の名残であろうか、地元伝統校のプライドからか、その不文律は揺らぐことはない。

聞くと野球部は10年以上地区決勝に進出した事がないという。

「叶わぬ夢か」

諦めかけるも、最後の足掻きと野球部の合宿に行き激励することにする。

激励した際に「全校応援ついて触れるべきか」「そんな事を言ったら変わり者と笑われるか」と悩んでいたところ、野球部の主将から校長にお願いがあるとのことだった。

「決勝まで行ったら全校応援して下さい」

変わり者はもう1人いた。

校長はそう思い「約束する」とだけ言い残し激励は終了した。

かくして校長の「最後の夏」は開幕した。

野球部は1回戦をコールド勝ち。
だが初戦突破は3大会振りだ。
これだけでも上出来の感がある。

地区大会準決勝の相手はドラフト候補左腕を有する注目校。
その後、その投手は実際にプロで活躍するほどの実力だ。
「運もここまでか」と思っていたが、なんと好投手を攻略して勝利した。

校長の学校は12年振りの決勝進出を果たしたのだ。

もう1人の変わり者は約束を果たした。

決勝戦は定期テストのど真ん中だったが、校長はバスを手配し全校応援を決行した。

今度は校長が約束を果たした。

球場のスタンドに自分の学校の生徒約1,300人が集結している。
余談であるが、その中にはTBSアナウンサーの安住紳一郎さんもいて、熱心に応援していたという。

試合は負けてしまったが「最後の夏」を目に焼き付けた。
心残りが晴れた瞬間である。

誰しもそれぞれの「最後の夏」がある。

おまけ編はこちら

番外編はこちら(別角度から考察してます)。


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