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エフェクチュエーション実践講座16「競争」ではなく「共創」にエフェクチュエーションを使う

はじめに

エフェクチュエーションは、不確実性の高いビジネス環境において、新規事業や革新的な取り組みを推進する際に有効な思考法です。特に、限られた資源を活用しながら、リスクを最小限に抑えつつ、可能性を広げていくというその特徴は、事業会社においても適切に活用すれば大きな成果を生み出すことができます。

筆者は、あるエグゼクティブセミナー(アカデミーの位置付け)に3ヶ月通いました。これはネットワーキングが目的だったのですが、そのアカデミーでは共創エコシステムがテーマになっていました。参加企業のエグゼクティブ(筆者も含めて)は満足度が高いと言っていたので、それだけ共創エコシステムの関心が高いということでしょう。

アカデミーの卒業式 本格的でビックリ

そこで、筆者が実施しているエフェクチュエーションを企業共創に活用する方法を紹介したいと思います。エフェクチュエーションを活用した「エコシステムの形成」では、他企業が持つ資源や能力を結集し、新たな価値を創造していきます。これには信頼関係の構築が重要であり、エフェクチュエーションの原則を活用することで、効果的に進めることが可能です。

エフェクチュエーションを活用した共創の進め方(筆者の場合)

1. 他企業とのネットワーキング

セミナーやワークショップを通じて、他企業関係者との接点を持ち、DX(デジタルトランスフォーメーション)の悩みや課題を共有します。この場を通じて、相互の知見を深め、共創の機会を探ります。以下はアカデミーで知り合った企業様(タイヘイ株式会社)と共創ミーティングをした際の写真です。

タイヘイ様のキャラクター
タイヘイ様のイス

2. DXビジネス発想研修の提供

DXのお悩みや課題に対する解決策として、DX人財育成やビジネス改善のためのDXビジネス発想研修を提供します。この研修の場が、共創のきっかけとなり、エコシステムに興味を持ってもらえるキーセッションになります。

DXビジネス発想研修の提案プレゼン

3. エコシステム参加の打診

研修を通じて築いた信頼関係を基に、より広範なエコシステムへの参加を呼びかけます。これにより、各社が持つ資源や強みを活かした共創が進みます。

エフェクチュエーションのコツ

①自分が持っているものに注目

自社の持つ資源、ノウハウ、人脈などを見つめ直し、それらを活用することから始めます。このステップは、新しい事業のアイデアを見つけ出す際の出発点となります 。うちの場合は内製したビジネス発想力研修や検定です。お金がかかっていません。研修内容は以下参照。

②許容できる損失に基づいてリスクを取る

投資するリソースには限界があります。失っても大きなダメージを受けない範囲でのリスクを冒すことが重要です。これにより、失敗を恐れずに新しい挑戦ができます 。自分のできる範囲でやるのでダメージがないです。

③協力とパートナーシップに注目

競争ではなく、共創と協力を通じて新しい機会を形成します。他社との連携を深めることで、共に価値を創造していくことが可能です 。

企業が「共創エコシステム」にエフェクチュエーションを使う場合の注意点

エフェクチュエーションを使う場合、利用範囲や組織構造上特有の課題があります。

しかし、適切な対策を講じることで課題を克服し、活用することが可能です。要は課題の対策を最初から作り込んでおけば良いだけです。

①意思決定の遅延問題

エフェクチュエーションを活用する際、企業では部門間の調整や上層部の承認が必要となりがちです。意思決定の遅延を避けるためには、小規模で自由に動けるチームを設置し、迅速な意思決定を可能にする体制を整えましょう。

許容できるリスクの範囲内で決定権を下位に委譲し、実験的なプロジェクトを推進することが重要です。上が関与し過ぎると上手くいきません。

②リスク回避文化の問題

企業は安定を重視し、リスクを避ける文化が根強いので、「許容できる損失」原則を前面に打ち出し、失敗を許容する文化の醸成が重要です。

③内部資源活用が困難な問題

企業は人的や資本的、資産的に多様な資源を有していますが、有効に活用するための情報共有や連携が不足していることがあります。「Bird in Hand Principle」に基づき、内部の資源や能力を明確にし、それらを活用するためのプラットフォームや仕組みを構築することが必要です。

④外部との共創の難しさ

「Crazy Quilt Principle」に従い、外部のステークホルダーとの協力を深める必要があります。しかし、企業は外部との連携において、自社のルールや条件を押し付けがちです。相互の利益となる共創のためには、柔軟な姿勢を持ち、パートナー企業の意見や条件も尊重することが大切です。

まとめ

エフェクチュエーションは、事業会社が直面する不確実性を乗り越え、新規事業やイノベーションを成功に導くための強力なツールです。その原則を理解し、賢く活用することで、限られた資源を最大限に活かしながら、新たなビジネスチャンスを掴むことができます。

エフェクチュエーションを企業の共創エコシステムに適用することで、新たな事業機会の創出や革新的な価値提供が可能になります。課題を認識し、それに対する具体的な対策を講じることが成功への鍵です。是非共創エコシステム形成にエフェクチュエーションを使ってみてください。

最後に重要なことを言います。そもそも企業が共創エコシステムを必要としていることが前提です。企業にそのニーズがないのにエフェクチュエーションが役に立たないと企業の上層部に言われて凹んでいる新規事業担当者がいたとすれば、それは経営戦略との不一致です。

エフェクチュエーション自体が悪いのではなく、「経営戦略を変えないままエフェクチュエーションを使おうとすること自体に無理がある」のです。新規事業担当者はそのことを理解する必要があります。

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