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DX責任者になってしまったら、すぐにDXベンダーさんやコンサルティング会社を探して伴走してもらうのではなく、まずは事業会社で成功しているCDOなどの識者と仲良くなって相談に乗ってもらうことが有効な件

はじめに

筆者は生命保険会社のデジタル共創オフィサーとして、社内のデジタル戦略や執行支援をする傍ら、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援や官公庁のDX推進委員を務めており、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。その関係でDXやビジネス、人材育成、地域活性化について相談を受けることも多い。

最近、ある電力開発供給系のDX責任者から「DXを推進していく上で、何から手をつけるべきか分からない。コンサル会社に伴走を依頼すべきか迷っている」という質問を受けた。DXに関しては、業界や企業によって状況が大きく異なるため、一概に答えを出すのは難しい。

しかし、いきなりコンサル会社やベンダーに頼るのではなく、まずは自社の状況を冷静に分析し、他社の成功事例を参考にしながら、自分たちでできることから着手していくことが重要だと思う。

DXの目的を明確にする

DXを進める上で最も重要なのは、その目的を明確にすることだ。単に「DXをやらないといけない」という漠然とした思いでは、うまくいかない。例えば、ある大手家電メーカーでは、「お客様の生活をより豊かにする」という明確なビジョンを掲げ、そのためにデジタル技術をどう活用するかを考えている。単なる効率化やコスト削減ではなく、顧客価値の向上につながるDXを目指しているのだ。

DXの目的を明確にするためには、自社のビジネスモデルや競争環境を十分に理解する必要がある。また、経営層とDX担当者が密にコミュニケーションを取り、会社全体としての方向性を共有することも重要だ。DXは一部の部署だけでできるものではない。全社的な取り組みとして推進していかなければならない。

自社の強みと弱みを分析

次に重要なのは、自社の強みと弱みを冷静に分析することだ。どんな企業でも、得意分野と不得意分野がある。その上で、強みを伸ばし、弱みを補うためにデジタル技術をどう活用するかを考えるべきだ。例えば、ある大手流通企業では、店舗網という強みを活かしつつ、ECという弱みを補うために、オムニチャネル戦略を推進している。店舗とECの融合により、お客様により良い買い物体験を提供しようとしている。

自社の強みと弱みを分析する際は、客観的なデータに基づいて行うことが大切だ。自社の製品やサービスに対する顧客の評価、競合他社との比較、財務状況など、様々な角度から分析する必要がある。その上で、デジタル技術を活用することで、強みを更に伸ばし、弱みを克服する方法を考える。

他社の成功事例を参考に

DXの取り組みは、業界によって大きく異なる。そのため、自社と似た状況にある他社の成功事例を参考にすることが有効だ。特に、同業他社ではなく、異業種の事例を見ることで、新しい気づきが得られる。例えば、あるメガバンクでは、銀行ではなく、小売業の事例を参考にしてデジタル化を進めている。銀行と小売業では業態が全く異なるが、顧客接点のデジタル化という点では共通しているからだ。

他社の事例を参考にする際は、単に表面的な取り組みを真似るのではなく、その背景にある考え方や戦略を理解することが重要だ。なぜその企業はそのような取り組みを行ったのか、どのような効果があったのか、自社にどう応用できるのかを考えなければならない。他社の事例はあくまで参考であって、自社の状況に合わせてカスタマイズする必要がある。

社内の意識改革を進める

DXを進める上で、もう一つ重要なのは、社内の意識改革だ。デジタル技術を導入するだけでは不十分で、それを活用する人材の育成と、業務プロセスの見直しが必要不可欠だ。例えば、ある大手製造業では、全社員がデジタルリテラシーを身につけるための研修を実施している。また、業務のデジタル化に合わせて、組織横断的なプロジェクトチームを編成し、スピーディーな意思決定を可能にしている。

社外の識者に相談する

DXを進める上で、社内の知見だけでは限界がある。そのため、社外の識者に相談することも有効だ。特に、他社でDXを成功させているCDOなどの経験者は、貴重なアドバイスをくれるはずだ。また、エグゼクティブセミナーやCDOのサロン的な集まりに参加することで、同じ悩みを抱える仲間と出会い、情報交換することができる。

社外の識者に相談する際は、自社の状況を正直に伝えることが大切だ。うまくいっていることも、困っていることも、包み隠さずに話すことで、適切なアドバイスを得られるはずだ。また、一度や二度の相談で終わりにするのではなく、継続的に関係を築いていくことが重要だ。DXは一朝一夕にはできない。長い道のりを共に歩んでくれる仲間が必要だ。

まとめ

DXを推進する上で、何から手をつけるべきか迷っている企業は多いだろう。しかし、いきなりコンサル会社やベンダーに頼るのではなく、まずは自社の状況を冷静に分析し、他社の成功事例を参考にしながら、自分たちでできることから着手していくことが重要だ。その際、DXの目的を明確にし、自社の強みと弱みを見極め、社内の意識改革を進めることが鍵となる。

また、社外の識者に相談することも有効だ。特に、他社でDXを成功させているCDOなどとの繋がりを持つことで、貴重なアドバイスを得られるはずだ。エグゼクティブセミナーやCDOのサロン的な集まりに通って仲良くなれば、親身になって相談に乗ってくれるだろう。

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