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JTCは「新しいことをさせない雰囲気があるので生成AIも活きないだろうと思う」件

はじめに

筆者は生命保険会社のデジタル共創オフィサーとして、社内のデジタル戦略や執行支援を行い、顧問先やパートナー企業のDX支援、自治体向けのビジネス発想支援、官公庁のDX推進委員も務めている。このような立場から、日本全体のDX推進や人材育成のあり方を考える活動に携わっている。

JTC(伝統的日本企業)の社員は色々な意味で守られている。禁止されていることも多い。筆者も12年前に社内のブランド部門にSNSを教えたが、同時にSNSのルールとして禁止事項の作成にも関わった。今にして思えば、何故もっと寛容なものにしておかなかったのか悔やむ。

当時はSNSをさせないことが社員を守ることだと思っていたが、今はSNSをさせることが社員を成長させることだと思う。このようにJTCには今の時代にはそぐわないものが多い。それを今回もテーマにしたい。

JTCという世界

JTCの特徴として挙げられるのは、(だいぶ崩れたが)年功序列や終身雇用といった人事制度だ。つまり社員として会社に出勤すると給与が貰える制度である。これらの制度は、社員に安定と安心感を与える一方で、新しいことに挑戦する意欲を削ぎ、変化を嫌う風土を醸す。

若手社員や新入社員が新しいアイデアを提案しても、年功序列の壁に阻まれ、上層部の承認を得るのが難しいのが現実だ。地位が高い者が意思決定をするのだからJTCではこれは当たり前である。

また、会議文化や稟議制度もJTCの特徴の一つである。多くの日本企業では、何か新しいことを始めるには多数の会議を経て、最終的には稟議を通さなければならない。このプロセスは時間がかかり、迅速な意思決定が求められる現代のビジネス環境には適していないのかもしれない。

しかし良い面もある。一人の判断で会社の意向が決まらないという点だ。これは大企業を危険に晒さないという安全弁の役割を担う。大企業は何かあるとダメージが大きい。だから進化の過程でダメージを受けないようになった。それがJTCの良くも悪くも特徴になっている。

しかし生成AIのようなイノベーションの技術は、JTCのこの特徴が悪い方に出る。生成AIはJTCの新規ビジネスや社員の大きな成長に寄与する可能性のツールになる。それには迅速な導入と試行が求められるが、JTCのプロセスではそれが難しい。「何で使う必要があるの?」「デジタルは嫌い」「思ったようには使えない」など新しいことを嫌う人が多い。JTCの特徴が悪く出る典型だ。

生成AIの活用可能性と阻害要因

生成AIは、自然言語処理や画像生成、データ解析など多岐にわたる分野で革新的な成果を上げている。その潜在的な応用範囲は広く、マーケティング、カスタマーサービス、製品開発など多くの分野での活用が期待される。しかし、JTCの風土の中では、生成AIの導入と活用が進まないという問題がある。

第一に、新しい技術への理解と教育の不足が挙げられる。多くの日本企業では、技術に対する理解が浅く、導入に対する抵抗感が強い。特に、生成AIのような高度な技術は、理解するために専門的な知識が求められるため、その教育に力を入れないと、導入が難しい。

第二に、リスクを嫌う文化が生成AIの導入を妨げている。生成AIはその特性上、初期段階では試行錯誤が必要であり、その結果が必ずしも成功するとは限らない。このリスクを受け入れる文化がないと、新しい技術を試すこと自体が難しくなる。

生成AI導入の成功事例とその要因

一方で、生成AIの導入に成功しているJTCも存在する。成功している企業の共通点として、以下の要因が挙げられる。

まず、トップダウンでの強力なリーダーシップがあること。新しい技術を導入する際、トップがその重要性を理解し、強力に推進することが不可欠である。トップダウンのアプローチにより、組織全体が一丸となって新しい技術を受け入れる風土が醸成される。弊社の勤務するJTC生命保険会社では社長にプライベートレッスンをしたところ大変気に入ってもらえて、他の役員にもレッスンするようになった。

役員だけでなく、一般社員の教育とトレーニングに力を入れることも重要だ。生成AIのような新しい技術を導入するためには、社員全体のスキルアップが不可欠である。定期的なトレーニングや教育プログラムを通じて、社員が技術を理解し、実際に活用できるようにすることが求められる。弊社では自作のキャラを作って親しみやすい雰囲気を作っている。

JTCと生成AI

JTCの特徴が風土化し、「特に要らない」「忙しい」「これ以上新しいものは嫌」という具合に「生成AIの活用」を拒んでいる。しかし、DXの波は確実に広がっており、変化を受け入れるJTCも増えてきている。JTCの風土を変えていくことが重要である。

まとめ

JTCの風土が新しいことをさせない雰囲気を醸成しているため、生成AIの活用が進まない現状がある。しかし、DXの波が広がる中で、変化を受け入れ、生成AIを活用する企業も増えてきている。成功するためには、トップダウンのリーダーシップ、失敗を許容する文化、社員の教育とトレーニングが不可欠である。これらを実現することで、JTCも生成AIを効果的に活用し、競争力を高めることができるだろう。

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