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実りの秋 ゴッホ「プロヴァンスの収穫期」

秋が深まってきた。
朝夕は、涼しいというより、肌寒いと思う風が吹き抜ける。

時は実りの秋。そろそろ秋の収穫の時期。
この季節は、フィンセント・ファン・ゴッホの「プロヴァンスの収穫期」の絵画を無性に観たくなる。

フィンセント・ファン・ゴッホ作「プロヴァンスの収穫期」(1888年) 所蔵:イスラエル博物館

この「プロヴァンスの収穫期」は、1888年にゴッホによって描かれたもの。
1881年から1890年の亡くなる年までの間に、ゴッホは900点近い作品を制作している。彼の制作意欲と相反するように、この頃に描いた作品は、世の中に評価されることはなかった。なんとも皮肉な話である。

この数年間、ゴッホが描き続けた世界は、生きている上での人間の苦しみや悲しみ、あるいは、生きている中での喜びや楽しみ。その双方の視点から描かれたもの。この「プロヴァンスの収穫期」はどちらかというと、歓喜を描いた作品である。

1888年の夏に描かれた作品であるが、農耕風景や農家の人々、その生きる世界をのびのびと描いたものである。水色の美しい空と、その下に一面と黄色く広がる麦畑の収穫の様子は、躍動感と、どことなく懐かしい田舎の風景を彷彿させる。

1888年という年は、ゴッホにとって大切な人生の転換機とも言える。
この年、ゴッホは大都市パリから、南仏アルル郊外へ住まいを移し替える。
アルルという場所は、ゴッホにとって新しい世界の始まりの地となった。

この南仏アルルは、プロヴァンスの美しい自然と豊穣の恵が溢れんばかりに広がった美しい場所。この地を歩いて見て回って、数えきれないほどのインスピレーションと癒しを当時35歳であったゴッホは得たのだろうか。伸びやかで美しいコントラストを持って描かれた収穫期の様子は、見ているこちら側をプロヴァンスの美しい世界へと誘ってくれる。

手前の黄色い麦畑の収穫の様子を一人の農夫と共に描きながら、奥には夏の太陽の日に照らされた白い建物や緑の木々を描き、また、高い水色の空を描いた筆跡は、この空を夏の風がサラサラと吹き抜けている様子を印象的に描いている。本当に、なぜだか懐かしいという哀愁さえ感じさせる。

私はこの「プロヴァンスの収穫期」の絵が大好きだ。
この秋の深まっていく季節に、無性に見たくなる。時代がどんなに移り変わって、流行や人の在り方が変わっていこうとも、ゴッホが見つめ、描いたこのような美しい世界は、私や私の子ども、そしてその孫の代までずっと、変わらず美しく残っていて欲しいと願う。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
Bless you:)

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