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ブログ『冷頭暖足』の続き〜水とゆらぎ〜


(前半を読まれてない方はこちらからどうぞ。)

我々の身体のスタートである母体から、もっとスピチュアル的な言い方をすれば太古の記憶に触れるから。など何通りも答えは浮かんできますが、科学的にいえば、いわゆる1/fゆらぎというものがあります。超簡略化して言ってしまうと、正確な規則性を持ち切らない揺らぎというのが人に癒しを与えるというものです。水の他には視覚的にいえば炎がわかりやすいですね。人間も生まれながらにして体内に1/fゆらぎを持っているそうで、共振、共鳴の感覚を得るからかもしれません。

例えば、真空管アンプは音を増幅させると同時にノイズを発生させてしまいます。が、そのノイズが温かみとか温もりと言われ人に安心感を与える点も、まさにゆらぎの一つでしょう。レコードやカセットの人気が止まないのもここに理由がありそうですね。しかもこれらを考えていて面白いのは、古いレコードであれば捻れによってレコード針が上下に動いていく姿や、カセットテープが頼りなさげに巻かれていく姿も、見た目通り『ゆらぎ』を感じますよね。

私も音楽を作っている故に、良い音を目指しているわけですが、かつてピアノの師匠に「上手いかどうかは大きい音を出せるかどうかだ」といったニュアンスのことを言われたことがあります。

なるほど、力づくでやっても大きい音というのは出るわけではありません。技術的な結論を言ってしまえば、いかに脱力して効率良く音が出せるのかが大事になります。しかし、もう少し違う視点でいえばどれだけ倍音を綺麗に出せるかということになります。倍音とは、一つの音を出したときに僅かに聴こえる倍もしくは半分の周波数の音で、厳密にはさらに高い音では3倍、4倍、低い音では1/3、1/4と鳴っているのです。要するに上手に音を出せると、倍音が綺麗に出るので、音が大きく聴こえるということなのだろうと思います。
これ言い方を変えてしまえばノイズでもありますよね。つまりノイズとゆらぎと倍音は何処か同じ話をしているところがあるのではないでしょうか。

音楽制作時でも似たような話になります。音楽を作るときに皆が頭を悩ませる、なんか楽曲が小さいんだよな、という問題。率直にいえば、音圧の問題が大きいのです。コンプレッサーと言った機材を使って、音を圧縮させることで厚みを出すことも必要なのですが、個人的な結論の一つとしては、音圧とはバランス良く音が出ているのかというところにあると思っています。一つ一つのパートの音量を上げるだけではカオスになるだけです。そしてバランスとは、位相の配置もそうなのですが、それよりも高い音から低い音の範囲をどこまで出せているのかにかかると思います。つまり各パートの音がもつ倍音を有効活用し合えるのかということです。我々は基本的にPCの画面を通して波形を見ながら調整をしたりするのですが、良い音や良い演奏を録音できたときというのは、綺麗な波形が出てくるものなのです。何が綺麗なのかというと、経験値からそう認識出来てくるところもありますが、なんとなく形が綺麗なのです。そしてここで波と出てきた時点で、また水の話に戻っていますよね。面白いですよね。

ということで、涼める音楽から水の話へと向かい、そこから滴るように書いていきました。最後に近代科学の父と称されるガリレオ・ガリレイの言葉を引用します。

「信じがたいほど遠い彼方に存在する天体の動きよりも、我々の目の前に流れる水の動きについて調べる方がはるかに難しい」

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