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新卒いびり。

昔むかし、高校を卒業して
初めて就職したのは靴屋だった。

靴に全く興味がないくせに
なんでそこをセレクトしたのか未だに謎だが
とにかくわたしは何故か靴屋に入った。
手が空いてる間は、せっせと靴紐を通し続け
お客さんを見かけたら
「何かお探しですか?」と必ず声をかけるルール。

とにかく店内にいるスタッフ全員が
そのルールで働いているので
お客さんはスタッフに遭遇するたびに
「何かお探しですか?」と声をかけられる
極上迷惑システム。

今思えば、なんかいいのないかな〜って
フワフワ漂うことが許されないなんて狂っている。
当時のわたしは初めての社会人として
疑問も持たず真面目に守っていて、素直ってこわい。

その会社は毎日、営業が終わったあとに
新卒だけ呼び出されて
店長からのありがたいお言葉タイムがあった。
それも2時間くらい立ちっぱなしで聞く。
純新無垢だったわたしは
これまた律儀に耳を傾けていたのである。

そしてセールの日は何がどの値段で売り出されるか
知らされない。
自分で朝、新聞を買って広告を見て出勤までに覚える。
18歳女子が電車で新聞を広げ
靴の広告部分をひたすら見つめ続ける異様な光景。
そして日中靴紐を通しまくり
靴を売り続け、わたしは3日で100足以上売った。
それでもお説教タイムは免れないの、不毛すぎ。

しばらくして新卒全員が招集された。
そして社長から司令が下される。
「休みの日に、他の店舗に行って1足売りなさい。
1足売ったら次の店舗へ行きなさい。
関西にある店舗へは全部行きなさい。」

は?休みの日に?なんで???

この辺りからもう「しょーもな」としか
思わなくなってしまった。
なんで休みの日に働かんとあかんねん。
アホちゃうか。休みちゃうやんけ。
そしてわたしはさっさと退職した。

退職したけど得たものもある。
人生で無駄な経験はない、と思うんやけど
靴屋のことだって無駄とは思ってない。
なんか新人いびりじみた、しょーもない慣習には
馴染めなかったが
社長が教えてくれた事がある。
新卒招集の時、全員が社長に質問された。
「お給料安いと思う人は?」
ほぼ全員挙手した。
そしたら社長がピシャリと言った。

「この中で、それを言っていいのは
成績がトップの人だけだ。その人以外は言う権利ない。」

あぁ、そうか。
文句を言うにも権利がいるんやな。
社長が言ったことはちょっと横暴やけど
すごくハッとした。
たしかにやらなあかん事をやりもせずに
文句言うてるやつ、おるもんなー。 
そうはなりたくない。

こんな大事なこと教えてくれて
靴屋の社長にはめちゃくちゃ感謝している。
新卒いびりがなかったら、もっとよかったけどな。







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