見出し画像

地域リハビリテーションとインセンティブ事業

1.地域リハビリテーション雑誌の休刊とその意味

2021年1月に、地域リハビリの理念を広めるための一翼を担ってきた「地域リハビリテーション」雑誌が、2006年の創刊から15年の歴史に幕を下ろしました。三輪書店から発行されたこの雑誌は、高齢者や障害者が住み慣れた地域で充実した生活を送ることを目指していました。休刊の事実は、地域リハビリに対する関心が減退していることを示唆しており、多くの専門家や関係者にとっては危機感を抱かせる出来事でした。当時の全国地域リハビリテーション研究会の会長も、最終巻の中でこの問題に触れ、リハビリの未来について展望を述べています。

2.地域リハビリへの提言

記事によれば、現在の介護保険や医療保険の制度では、事業所が高齢者の自立を促進しても、利用者が減少するため、経済的なメリットが少なく、自立支援の動機付けが不足していると指摘されています。つまり、自立支援を行うほど、事業所の経済的利益が減少し、実績向上が難しい状況にあるということです。しかし、地方自治体にとっては、自立支援サービスが給付費用の削減につながり、経済的利益をもたらす可能性があります。そのため、地方自治体が自立支援サービスを効果的に活用し、実績を上げることが求められています。効果的な自立支援サービスの実施は、地域リハビリテーションの問題解決に寄与すると提案されています。

3.行政委託事業とインセンティブの可能性

現行の介護保険や医療保険サービスではインセンティブが不足していますが、医療や福祉の分野で行政から委託される事業では、インセンティブを含む契約が進展しています。この動向は、介護保険や医療保険サービスにおけるインセンティブ報酬制度の拡充につながる可能性を示唆しています。このようなシステムの改善により、事業所の自立支援への取り組みが経済的にも報われるようになることが期待されています。

4.成果連動型民間委託契約方式(PFS)とは

内閣府は、新たな官民連携の形として『成果連動型民間委託契約方式(PFS)』を推進しています。この方式は、従来の業務委託と異なり、民間事業者の裁量に委ねられた仕様で業務を実施し、その成果に基づいて支払額が変動する手法です。

報酬の支払い体系
PFSにおいては、最低支払額と成果に連動した支払額の2つの要素があります。事業達成目標値をどれだけ達成したかによって、最終的な支払額が決定されます。この成果は第三者評価機関によって評価されるため、透明性が保たれます。

ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)
PFSの一環として、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)という仕組みが存在します。この方式では、民間業者が事業に必要な資金を民間の資金提供者から集め、事業の成果に応じて行政から報酬を得て資金提供者に償還します。達成目標が未達の場合、資金提供者は投資した資金を回収できないリスクを負います。

内閣府の重点対象事業
内閣府がPFS導入の重点対象としている分野は「医療と健康」「介護」「再犯予防」とされており、実際の事業例は内閣府のホームページで73事業が紹介されています。地域リハビリが対象となる事業としては、「運動と栄養指導」「習い事支援」「仕事とボランティア支援」「要介護者・障がい者支援」などがあります。

5.事例を紹介

次の記事では、これまでに行われてきた地域リハビリテーションのインセンティブ事業に焦点を当て、さらに詳しく掘り下げていきます。事例を通じて、リハビリテーション業界におけるインセンティブの取り組みやその成果について紹介し、読者の皆様に参考情報を提供することができればと思います。新たな視点や知見を得る機会となれば幸いです。

・参考文献
【1】 柳尚夫著、『地域リハビリテーションの課題と展望』、地域リハビリテーション、2021年1月、第15巻第6号、400-404ページ。
【2】 内閣府H P、成果連動型民間委託契約方式(P F S:Pay For Success)ポータルサイト、『P F S事業事例集』(https://www8.cao.go.jp/pfs/jirei.html)、2022年7月15日時点。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?