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AM5:00新宿駅


◆AM5:00新宿駅で、


東京という街に出会ったのは、
22歳のときである。
当時、印象派を代表する画家、
ピエール=オーギュスト・ルノワール
の展示会が開催され、日本初上陸の
「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
の絵をどうしてもひと目見たくて、
夜行バスのチケットを握りしめて、
初めて1人で東京に向かった。


今、考えると日帰りで、
東京に向かおうとしていたことが
恐ろしいけれど、
当時の私は東京は大阪に似ていて
近い存在だと勘違いしていたし
怖いもの知らずだったな。




私は、当時流行っていた
黒い厚底のヒールに、
Aラインの黒いプリーツのスカート
花柄のノースリーブのトップスを着ていた。
私の思う最大限の大人な
ファッションで背伸びしていた。




朝の5時、新宿駅の路線図を眺めていた。
渋谷、池袋、品川、テレビで聞いたこと
ある馴染みの地名で埋め尽くされていた。
どこで時間を潰すかも、
何を食べるかも未定の1人旅。


「品川までは何分くらいでつきますか?」


サングラスを掛けた大きいリュックを
背負ったハーフの男性が声をかけてきた。
私はバカ正直に
「東京には初めて着たのでわかりません」
と答えた。


それが、ナンパの始まりと気付かなかった。

彼は、その後私に
「朝ごはん一緒に食べようよ。」
と誘ってきて、私はついていった。
東京ってこんな街なんだな。
という意味の分からない理由を
こじつけてまんまと
ナンパの口車に乗っかってしまった。

スターバックスで朝ごはんを食べた後、
ネットカフェに連れて行かれた。
そして流れのままに、男女の世界に染まった。



事が済み、
ネットカフェを出てさようならとひと言、
告げて私は去った。



ワンナイトラブだとか、
一回限りの関係だとか、
そんなの初めての経験だった。


身体中に罪悪感が襲ってきて、
東京の街中で大泣きした。
夜行バスを降りて、
ほんの30分後に
起こった出来事が衝撃的すぎて
東京は恐ろしい街だと思った。

自分でも自業自得だよって追い詰めた。
泣いて泣いて泣いて、泣いた。
泣いててもしょうがないと我に帰り
一旦冷静になろうと、展覧会に向かった。


その道中、何を思ったのか
Twitterでしか繋がっていなかった
大学の英語の授業で隣の席だった
素行の悪い彼が東京で仕事を
してることを思い出し連絡した。

これが、これから腐れ縁となる私と彼の、
出会いだった。



meisyan20230818

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