#38 恋文の技術


題名:恋文の技術
著者:森見 登美彦
発行所:株式会社ポプラ社

【説明】
京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた男が一人。無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。

【感想】
私が個人的に好きな森見登美彦先生の書簡体小説となっている。やはり、主人公は少しひねくれており不器用ながらも周りから愛される、「森見作品に相応しい学生」といった感じがした。
実験所に飛ばされて谷口さん主導のもと、実験に悪戦苦闘しつつも、京都に残る友人達との繰り広げられる文通が主な内容となっているが、大塚先輩との文通が特に面白かった。
大塚先輩の無茶振りの数々、京都への帰省を機に反撃を試みるが撃沈する主人公、思いがけない協力者。
主人公を起点にそれぞれの人物と主人公の物語が同時進行で進む形が、四畳半神話体系を彷彿とさせた。
もし、この作品を読んだことがある人なら賛同してもらえると思うが、伊吹さんからのお返事が気になるところだ。
しかし、成就した恋ほど語るに値しないものはないゆえに描かれていないのだろうか。

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