今日の一福
2024/03/26
『家族の健康』―――これぞ我が使命そして生き甲斐。
そう豪語してやまない我が母あけみ。その食におけるこだわりときたら、まこと細やか。それが口に入れるものなら食べ物は当然、歯磨き粉にさえ目を光らせる。
オーガニックには然程こだわらないゆるさはあれど、旬のもの、そして地産地消がお気に入り。「流通コストが抑えられて地球にやさしい!」言いつつお買い物は自家用車で縦横無尽よ。
この矛盾。
娘のお堅い頭にはどうしたもんだかよくわからないが田舎も田舎、その僻地も僻地。きびしいことばかり追究できない。そうしたところで火の七日間ぜよ。地球より先、家庭が滅んでしまうでござる。
なにより本人が意気揚々。見るからに元気はつらつ。まったく楽し気で恐れ入ります。
であるならばよしと、わたしは固く目をつむる。なにがなんでもお口チャックだ。白砂糖は脳を溶かす地獄の怨敵。ところがミスドとは大の友達。おそるおそる何でと訊けば他でもない、
「これスキなの」
つよい。
強すぎるぞ我が母あけみ。
ちなみに砂糖が溶かすのは脳でなし歯とか骨とかカルシウムじゃないのかいというわたしの小声など、笑止千万。どうも次元を隔てた別の地球にお住まいらしい。
こんな調子で一生勝てる気がしないよって、このわたし自身の心身の健康と平和維持のために必要不可欠なボヤキをnoteしておく。
そんな健康ガチ勢我が母あけみにも、なんと弱点がひとつある。
米のひと粒からその色艶かたちがお気に召さなければたちまち暗雲垂れこめてヘルモードに突入するあのあけみにも、娘に隠れてでも一袋開けちまいたい強烈な誘惑がひとつあるのだ。
これぞ神魔もおそれるキング・オブ・スナック。パリッとおいしい、あきないおいしさ、その名も『馬鈴薯三昧』。
「なんでなの」
母が問う。
「あんたなんで帰ってくんのよ」
実家くらいたまに帰らせてもらえませんかね。
母曰く、ポテチをこっそり食おうと袋を開けた途端に娘がやってくるらしい。この現象、ホラーといってよし。まことに不気味でならない。理解に苦しむと、遠慮のないねじれたお顔。
「あんたなんなの」
いや知らんがな。
ミスドは堂々すすめてくるくせ、ポテチは隠す。その違いの方が娘は気になる。理屈があるのかないのか。正義や如何に。
そう膝を詰めて問いただしたいところだが、まちがってはいけない、そこは並行世界で相容れないのだ。
母は母。
わたしはわたし。
お互い様いろいろ思うところはございますわねと、半笑いでポテチをいただく。
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