今日の一福
2024/03/12
うちの子(犬・8才)がハンストなさる。
いや正直、こんなウソクサ話をよそ様で出来る自信がない。
よってnoteにしたためておくの巻。
年に数回、季節の変わり目にやってくるそれ。この日もまたやってきたそれ。
ゴハンと聞けばシッポで風を巻く彼女だというのに、急なため息―――かのような鼻息ひとつ。のち、半目になってトグロを巻く。
今の時期だとコタツIN。黒い鼻先だけチラ見せして存在こそ主張すれど、いかにも気だるげ。話しかけるな、寄るな、さわるな、うぜえばばあとでもいったところか。
終日それでお構いなし。テコでも動こうとなさらない。
これをやられた初めの頃は、そりゃあもうてんやわんやよ。
一族総出で病院に特攻。鬼の形相で獣医さんをビビらせた。職場にも大変なご迷惑を、至極当然のようにおかけした。
それでいて結果は「?」。できる限りの検査をして異常なし。
仮病使いの疑いがかかったものの、これという証拠は得られず、経過観察。捜査は一旦、凍結の運びとなったのだった。
翌日、うちの子ったら元気いっぱい。お食事をモリモリお召しになられた。シッポも振り回して風を巻いた。
人間どもの茶番などどこ吹く風よ。小ざっぱりとした出で立ちさわやか。目はなぜか涙でうるうる。ギャバ―ッとあくび。
これには安心を突き抜けて、軽くハラタツくらいだった。
(な、なんなの。なんかの浄化? 解呪? 変な呪物でも食ったんか???)
(まあいいんで?)
(いいのか?)
(どうなの?)
(いいってことよ???)
誰もが不燃焼の思いを心底に漂わせながら、それというようなことは口にはしない。これを8年、よくやった。ええやりましたとも。
おかげさまで、毎シーズン、きっちり健康診断をしているようなものだから常に健康、ますます健康、老いてなお盛ん。犬界の黄忠とはうちの子よ。
それでも不安は、あるにはある。万が一のことがあるかもしれない。
死ぬほど心配しすぎて不満にもなる。なんでもないとかどんなメンヘラ。
それでぶつぶつブー垂れてたらば、夫がひと言、何気なく言った。
「自由なんだよ」
食べたければ彼女は食べる。
食べたくなければ別に食べない。
自由そのもの。健康そのもの。
余計な心配もない。不満もない。理屈もない。弁明もない。健康でありたいという、いかにも人間くさい希望または理想さえ欠片もない。
彼女は放たれてのびのびしている。まったくどこまで軽やかなのか。
思えばわたしもたまにやる。
昨日は魚をたべなかった。きらいではない。理由もない。なんとなし食指がうごかないこともあるにはあるなと思い至って、げえっと全身のちからが抜けた。どっと疲れたが不快でなかった。8年越しの呪いが解けた瞬間だった。
それにしても、変なところが似たのかどうだか。
いやはやまったく、育ての親の顔が見てみたい。
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