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ヘビの飼い方②コーンスネーク

コーンスネークPantherophis guttatusはボールパイソンPython regiusと並び、飼育種としては最もポピュラーなヘビの1つだと思います。しかし飼育方法に関して言えば、不適切と考えられる情報が広く一般に流通しているように感じます。

コーンスネークに限った話しではありませんが、様々な疾病や拒食(実際には "拒食" と言えるほどの問題ではない場合も多いですが)の原因は "不適切な飼育管理" や "不健全な飼育環境" にあることがほとんどです。

以下にこれまでの飼育経験に基づいた "おおよそ適切だと思われる" コーンスネークの飼育管理の方法について、ポイントを記させていただきます。

運動量は少ないヘビだが……ケージサイズについて

まず、コーンスネークは先にご紹介したガーターヘビhttps://note.com/calliophis/n/nbbea530fbc58)と比較すると、決して動きの多いヘビではありません。
とはいえ、だからと言って狭いケージでの飼育でも問題ないかというと決してそんなことはありません。
脱皮直後や、あるいは寒い時期から暖かい時期に移行して間も無くの頃などには、比較的活発に動き回っている様子がしばしば見られます。

適切なケージのサイズについては、最低でも頭胴長と同じ程度か、あるいは頭胴長×1.5倍くらいがだいたいの目安になります。
これより著しく狭いケージでは肥満傾向やその他の健康障害が発生する可能性が高くなることでしょう。

餌を食べない、という際の原因も多くはケージサイズが小さすぎることに起因しています。ケージサイズが小さいことによる運動量の少なさによって、餌を必要としていないということは、特にコーンスネークの飼育においてしばしば見られるものです。

床材は必ず ”潜れる素材” とすること

床材についてはガーターヘビと同様、半地下の生活を好む傾向がありますので、用土類かウッドシェイブ、あるいは枯葉の堆積などが適しています(https://note.com/calliophis/n/n906bb3c64d5a)。

他のヘビにも言えることですが、性格が穏やかな個体が必ずしも臆病ではないとは限りません。
コーンスネークにおいても動きが少なく、一見して穏やかな性格に見えても、普段はほとんどの時間を床材に潜って過ごしているというケースが少なくありません。

一般的なコーンスネークの飼育スタイルとして、ペットシーツやキッチンペーパーなどを床材に使用している様子がしばしば見られますが、これらの素材は(ヘビが潜ることができないことから)コーンスネークの飼育においては(あるいは他のヘビでも同様ですが)はっきりと不適切だと言えますので、使用することはできません。

温度, 湿度ともに低めが理想

次に温度と湿度の設定についてご紹介しましょう。
ガーターヘビの飼育についてご紹介した記事で、彼らが水に依存する種である旨を記しましたが、コーンスネークについてはそこまで遊泳を好む傾向はないようです。
したがって、飲用のトレーだけでも問題はありませんが、その水に排泄する可能性を考えるとやはりケージ内にはいくつかのウォータープールを設置した方がよいでしょう。

そのように複数のウォータープールを設置することである程度の湿度が保たれますので、わざわざ霧吹きなどでケージ内を湿らす必要はありません。
むしろコーンスネークはヘビの中でも、どちらかというと乾燥傾向を好みますので、高湿には重々注意を払う必要があります。
湿度の目安は乾燥した秋以降、冬季には30%〜40%、比較的湿潤な梅雨時などは60%〜70%程度というのが理想的な数字です。

また、高温に弱いのはガーターヘビと同様で、この辺りはやはり北半球原産ということが関係しているのかもしれません。
一応の目安となる理想的な温度は、気温の低い時期が摂氏15-22,3℃、気温の高い時期は摂氏25℃〜30℃くらいまでくらいです。

バスキングは非常に好むヘビですので、自然光の照射は必須、かつ比較的しっかりと光が射す場所にケージを設置してあげることがよいでしょう。
目安としてのケージ内の日照時間は6-7時間程度です。

またこれは他のヘビにおいても同様ですが、日が射す時間とそうでない時間の光量にははっきりとした差をつけた方が良いでしょう。

餌はガーターヘビ同様ほぼ雑食性

餌についてもご紹介しましょう。
コーンスネークは自然下ではほぼ雑食で、げっ歯類に餌の嗜好が寄っているということはありません。飼育下でもガーターヘビと同様、ほぼなんでも食べてくれる個体がほとんどです。
したがって、給餌の考え方としてはガーターヘビと同様で問題ありません。
すなわち色々な餌をブレンド、ローテーションして栄養価を整えるという方法です(https://note.com/calliophis/n/n51320fc95a69)。

ちなみにこれまでの飼育において、特にコーンスネークの嗜好性が高い餌としては、しじみやアサリ、エビ(生のむき身のもの)、サケ、ラム肉などです。
脱皮や産卵後、餌の要求量が少なくて心配な場合などにはこれらを中心としたローテーションとするのがよいでしょう。

運動量の少ないヘビであることから、給餌間隔は比較的緩やかにする必要があります。頻繁な給餌は肥満や脂肪肝の原因となり、寿命を縮めるリスクにつながることを忘れないようにしたいところです。
具体的に給餌間隔の一応の理想をご紹介するとすれば、気温の低い時期には3週間〜1カ月に一度、暖かい時期には10日〜2週間に一度程度がよいでしょう。

"初めての繁殖" にも適した種

比較的穏やかな個体が多いことから、コーンスネークは1つのケージにおいて多頭を飼育することに最も不安のないヘビの1つだと言えるかもしれません。
そして繁殖、あるいは産卵後の卵の管理も容易で、初めてヘビの繁殖に挑戦しようという人にもお勧めできるヘビだと言えます。

飼育管理に異常がなければ、多くは気温の低い時期が明けた3月頃から4月、5月あたりまでの間に交尾が行われます。
これもガーターヘビと同様、身体の下半身ないし首から下、尾までの間をオスとメスが絡ませている様子が見られます。

交尾から産卵までに要する時間はおおむね1カ月から1カ月半程度。交尾を確認したら、この間はできるだけケージを普段よりもさらに静かに保つようにします。
親ヘビの健康状態や、交尾後の管理状態に問題がなければ通常15個程度、多い時には20個程度の卵が産み落とされます。

産卵後の卵の保存で注意するべきこと

産卵後、2つ以上の卵がぴったりとくっついた状態で見つかることもありますが、これらは無理に引き剥がそうとせず、そのままにしておきます。卵の管理に問題がなければその状態でも孵化することはよくあります。

産み落とされた卵を見つけたらすぐに上側にマジックで印をつけます。卵が転倒し、上下が逆になってしまった場合には栄養が十分に供給されずに無事に孵化できないことがあるためです。

卵は親ヘビを飼育しているケージから取り出し、タッパーなど別の容器に移し替えます。その際に使用するタッパーは孵化後のケージとは異なり、あまり通気性が高いものである必要はありません。

タッパーの底には濡らした枯葉を1-2㎝程度敷き、その上に卵を乗せ、さらに濡れた枯葉で卵がしっかりと隠れる程度に覆います。
この状態でおよそ2カ月ほど経過を見ます。万が一枯葉の湿り気が失われ、乾いているようでしたら新たに濡れた枯葉と取り替えます。

卵の保管場所は、孵化後のヘビを管理するケージと比べると自然光があまり当たら
ない場所で(全く当たらない場所ではなく、やや薄暗い程度の場所が適しています)保管します。

やがて仔ヘビが自ら卵に傷をつけて外へと出てくることでしょう。栄養状態に問題がなければ多くは10㎝-15㎝程度のサイズの場合が多いようです。

孵化後のヘビは1週間程度餌を与えないようにしますが、その後は親ヘビと同様に栄養価を考えた様々な餌のブレンドを皿に乗せて提供します。

孵化後、さまざまな疾病のリスクが高い時期を乗り越えた "安定期" までに要する時間はおよそ1カ月半から2カ月程度です。

この間の給餌間隔は、成長の様子を窺いつつ2−3日に1回、1週間に1回、そして10日〜2週間に1回と広げてゆきます。
飼育環境に問題がなければ、特に孵化後、長期間にわたって餌を食べないというようなケースは稀な種だと言えるでしょう。


今回は飼育種として最もポピュラーなヘビの1つであるコーンスネークの飼育管理についてご紹介しました。
これだけ数多く飼育されているヘビにも関わらず、いまだに不適切な飼育方法が推奨されているのはとても残念なことです。

ケージサイズ、床材の素材、そして餌について。
最も問題が起きにくいヘビなればこそ、彼らの生態に適した健全な飼育環境を用意してあげることが大切であることはいうまでもありません。

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