教材のメッセージを伝える「ひとりぼっち」

『教材のメッセージを伝える』

最近の追い求めたいテーマです。

メッセージとは、生き方や人格形成にかかわるようなメッセージです。

たとえば、4年国語「ごんぎつね」なら、「人はかんたんに他人と分かり合えない」「時には、諦めも必要」「かんたんに分かり合えないという前提に立ち、あなたはどう行動するかを考えなさい」ということです。

「ごんぎつね」は悲劇です。

5年国語「大造じいさんとガン」なら、「大造じいさんは、ガンと最後に通じ合えたと思うのは大造じいさんの思い込みだ」「ガンは、一瞬間一瞬間で最善の行動を取り、その行動が大造じいさんの想定を常に上回った」「敵わない人にはずっと敵わない」ということです。

「大造じいさんとガン」はガンという自然との闘いです。

以上は、私の解釈なので、異論も含めて意見があるとは思います。

またご意見を教えて下さい。


私が今、考えていることはその教材がもっているメッセージ性を意識して、子どもに伝えることです。

◯なぜその教材を今の子どもたちに授業するのか

この問いに対して、「その教材にしかないメッセージ」を探し当てるべきだと考えます。

メッセージを探し当てるためには、似たようなメッセージ性のある教材と比べる必要があります。

さきほどの「ごんぎつね」には【ひとりぼっち】も1つのメッセージになると捉えることもできます。

ごんと兵十は、それぞれ【ひとりぼっち】です。

【ひとりぼっち】をテーマにしている作品はいくつかあります。

「ちいちゃんのかげおくり」

この作品の【ひとりぼっち】は、空襲によってお母さんやお姉さんと離れてしまい、餓死する寸前で【ひとりぼっち】を感じます。

お腹が空いて、体が軽くなって、【ひとりぼっち】→【家族と一緒になれた喜び】という悲劇の中に空想世界が含まれています。

かげおくりができる青い空が【ひとりぼっち】→【家族といっしょになれた喜び】へのつなぐ役割を果たしています。

読後感として、悲しい物語なのだけど、家族と一緒になれて安堵したという気持ちが読者に残ります。

「スイミー」

この作品は小さな赤い魚のきょうだいたちの中で一匹だけカラス貝よりも真っ黒い魚であるスイミー。

この作品中で「ひとりぼっち」という表現はないです。

「一匹だけ」という表現です。

また、「こわかった。さびしかった。とてもかなしかった。」という表現には、「ひとりぼっち」という意味合いが含まれているかと考えます。

さらに、この作品では、ひとりだったからこそ、水中のすばらしいものに出会えた喜びを味わうことができました。今まで、赤い魚たちといたときにも、一瞬でもチラッとは見てきたはずです。ひとりになったからこそ、見える世界が変わったという場面だと思います。

仲間を失っても、今まで見えていなかった自分を支えてくれる存在に気付けたのだと思います。

その目をもったスイミーは成長しました。

成長したスイミーは失った赤い魚たちと似たような仲間を見つけ、彼らを鼓舞します。

そして、自分の黒という個性を生かして、大きな魚よりさらに大きい魚になれることに気付き、みんなが成長して大きな魚を追い出せるという結末です。

3作品を比べてみても、「ひとり」への捉え方は微妙に異なると思います。

これを同じ「ひとりぼっち」と捉えてはいけないと思います。

「スイミー」は、コンプレックスと思っている何かを背負っている子どもの心を変える力のある作品です。

「ちいちゃんとかげおくり」は、家族とつながる何かを共有しておくことが自分の心を支えるというメッセージのある作品で、家族愛への目覚めを促す力のある作品です。

「ごんぎつね」は、ひとりぼっち同士の2人が、互いの勘違いやすれ違いがあり、一時期、分かり合いそうな時期はあったものの、最後には分かり合えなかったという人生もあるというメッセージ性のある作品です。



「ひとりぼっち」

これを苦に思わない子もいるし、苦に思う子もいます。

苦に思う子は、「スイミー」という作品が大きな支えになるのではないでしょうか。

苦に思わない子は、「ちいちゃんとかげおくり」という作品はちいちゃんの天真爛漫に家族を愛している姿は一石を投じられた気分になるのではないでしょうか。

「ごんぎつね」は悲劇。悲劇の捉え方が非常に難しいです。

「現実を直視しなさい・受け止めなさい」という捉え方、

「その後の兵十は幸せになったか」という予測的な捉え方、

「あの時、こうしていれば」という過去を責める捉え方。

ヒントになる一文が次の文です。

「青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。」

青い煙の解釈は多数あります。

1つの絶対的な解釈はないと思います。

確実に言えることは、ごんは死んだという事実です。

ひとりぼっちは、いろいろな行動の末、死ぬこともあるということです。

努力が報われず、分かり合えない悲しさです。

事実との向き合い方を教えてくださったのだと考えます。

ひとりぼっちの人は、ひとりぼっちのままということが言いたかったのだと考えます。現実をしっかりと受け止めてこそ、強く生きられるという作者の主張が詰まっている気がします。

作品特有のメッセージ、私は正しく読み取り、子どもたちに伝えていきたいです。

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