見出し画像

湯に浸かり、汗を流し、悪口を考える

久しぶりにスーパー銭湯に行った。実に5年ぶり。

5年も遠のいた理由はもちろんコロナ禍もあるが、しばらく通ってない間にサウナブームが到来したのもある。大量の裸の男の中に裸の男Aとして加わるのは気が引けて、ますます行く気がなくなり、すっかり足を運ぶ機会がなくなってしまっていた。

しかし、先日、スーパー銭湯に関する文章書いているうちに、スーパー銭湯に行きたい欲が再沸騰。気づいたら、Googleの履歴は「スーパー銭湯 近所」、「スーパー銭湯 価格」、「スーパー銭湯 日焼けマシン 誰も使ってない」等スーパー銭湯関連まみれになっていた。

ただ、東京のスーパー銭湯は高い!

駅から近いと2000〜3000円という、もうちょっと出したら違う風呂に行けるだろって価格帯のものがザラにあるし、700円で1日入れて漫画読み放題だった地元のスーパー銭湯ってどうやって採算取ってたんだと、なんだか申しわけなくなってきた(調べてみたらしっかり潰れていた)。

結局、700円とは言わずともちょっと手ごろな価格帯の店がバスで30分ぐらいの場所にあったので、もちろん1時間以上歩いて到着した。金はないけれど、時間と体力はあるのが無職なので当たり前の選択である。

入り口に立つと、スーパー銭湯ならでは、銭湯以上テーマパーク未満みたいな高揚感が胸をくすぐる。「お金に余裕があった実家暮らしの頃は結構通ってたな」と懐かしい。ここのスーパー銭湯に来るのは生まれて初めてなんですけどね。

券売機で入浴料を支払い、受け付けでロッカーキーを受け取る。受付のスタッフの対応は、恐ろしいほど事務的だった。うん、それでいい。それがスーパー銭湯なんだ。お前は、銭湯じゃないから親しみやすさなんかいらない。深夜のコンビニバイトも元気に接客とかしなくていい。

ロッカールームで服を脱ぎ、浴場へと足を踏み入れる。大浴場に浸かりたい気持ちをぐっと抑えて、まずは洗体と洗髪。シャンプーは、普段なら1プッシュのところを、今日は3プッシュ。今日は、いくら使っても値段は変わらないシャンプーの1日サブスクみたいなもんだから、備え付けのもんは可能な限りプッシュすべき。過剰に泡立つシャンプーを、隣のおっさんから白い目で見られていないか心配になりながらも洗い流し、大浴場に向かう。

近所の銭湯では到底太刀打ちのできないでっかい湯船に浸かる。

気持ちいい〜!!!

温かいお湯が全身を包み込み、体がほぐれてゆく。目を閉じて深呼吸をすると、心も体もすっかりリラックス。日々の疲れがドッと抜けてくる感覚になる。働いてなくても、こんな感覚になれるので、労働者はみんなスーパー銭湯に行った方がいいよ。

ジェットバスや電気風呂をひと通り試した後、露天風呂へ。

別にそういう趣味があるわけではないが、外で素っ裸になるのってなんか爽快な気分になる。先祖の原始人のDNAがそう思わせるとかあるのだろうか。

もうちょっとこの爽快感を味わいたいところではあるが、外で素っ裸が寒すぎる気候にはDNAも勝てず、すばやく湯船に浸かる。お品書きみたいな看板によると、このお湯は肩こり、腰痛、リウマチに対する効能があるらしい。別に、肩も腰も痛めてないし、リウマチに関しては何なのかもよく分かってないけれど、こういうのは効くなら効いた方が良い。なんか健康になった気がする。

5年ぶりのスパ銭の湯船をじっくり堪能したところで、今度は5年ぶりのサウナだ。

扉を開けると、熱気が押し寄せてくる。何人か先客が座っており、各々時間を楽しんでいる様子だ。僕も、サウナマットを敷いて腰を下ろし、じんわりと汗をかく。

熱風と静寂の見事なコントラスト。サウナでは、テレビの中で大回しをしているひるおびの恵俊彰の声しか響かない。日常の喧騒から解放される瞬間だ。ゆっくりと流れていた汗は、いつしか滝のように溢れ出ていた。

サウナを出た後は、冷たい水風呂に飛び込む。

冷水が全身を包み、シャキッと覚醒するような感覚。気持ち良すぎるだろ。

サウナブームを揶揄している奴らは、これを一生味わえないと思うと可哀想だ。まぁ、整うという言葉には少々違和感があり、「整う」というよりは「法で禁止されていないぶっ飛び方」って感じの気持ちよさだろとは思うけれど。

サウナ後のお楽しみといえば、水風呂と失った水分を補うたっぷりの給水。

だが、「やっぱ誰が飲んだか分からない場所に口つけるの怖いな〜!」と怖気づく。コロナは落ち着いてきてるとはいえ、インフルすごいし、というか、5年前の自分よくガブガブ飲んでたな。

給水器は断念。けれど、水分補給は諦めない。元スーパー銭湯のわりかしヘビーユーザーだったので知っているのだ。たいていのスパ銭の食堂には、コップで飲めるタイプの給水器があることを。

乾いた喉を一刻も早く潤すため、急いで着替えて食堂へ向かう。

給水器があった!

あったけれど、設置されている場所が、調理場の真ん前。店員が目が合った瞬間バトルを挑んでくるポケモントレーナーに見える。それもチャンピオンロードの。

そんな店員を目の前に、注文もしていないのにガバガバ水を入れるのは抵抗があり、またも断念した。無料の給水器では飲みたくないが、食堂に1000円前後を払う余裕はない。妥協案として、自販機でジュースを飲むことにした。

脳内にぼんやりと浮かぶ「水ならタダなのに…」と嘆くケチな鬼畜ロボットを無視して、120円を入れ、ボタンを押す。

ガコン!と音を立て、スプライトが落ちてきた。

うめぇ〜!!!

干からびた体に炭酸、反則過ぎる。これ合法?何かしらの罰が当たるんじゃないか?お金に余裕がない人生しか送っていなかったので気づかなかったけれど、何も成し遂げていなくても、こういった100円200円を払えば手に入れられる幸せって、世の中たくさんあるんだろうな。

大浴場にサウナにスプライトで十分身も心も癒やされたが、回復にダメ押しをするため、うたた寝処的なスペースで横になる。ゆっくり過ごしてチルタイム…とはならず、ゆっくりしながらも、ひと仕事をしなければならない。今日中に書き上げる予定の記事があるのだ。

性格の悪い記事を毎月書いて、「不特定多数に見られたくない」とか理由をつけて有料で投稿し、数少ない収入源にするという、サウナ後のスプライトより全然罰当たりな行為をしている。今日は12月分の記事を仕上げるつもり。もう1月だけれど12月分。罰当たりな上に怠惰。

スーパー銭湯代と想定外の出費のスプライト代を賄うために、本当は心が綺麗なのであまり得意な分野ではない性格の悪い記事を書く。

元々書いてた分と合わせて6000文字以上書けたけれど、あまり得意ではない。

毎月書いてるけれど、全然得意ではない。

再入浴が可能だったため、最後にもうひとっ風呂浴びてからスーパー銭湯を後にする。サウナは入らない。2本目のスプライトは飲めないし、給水機に口をつける勇気も、食堂の給水機を使う勇気もないから。あるのは帰りの1時間以上の徒歩移動だけ。

とぼとぼと歩く性悪の貧乏人を、100円200円が払える幸せな人たちを乗せたバスが横切っていった。

いいなと思ったら応援しよう!