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39歳のハローワーク⑦モラハラを受けて辞めるまでの日々

 社員だったエリちゃんが突然去ったことにより、当然だけどお店は人員不足になった。求人を出したもののあまりピンと来る人がいなかったというオーナーから、ランチ営業も出てみないかと声をかけられるのにも時間はかからなかった。

人間、無理なものはやっぱり無理

 お店の面接に来た時から一貫して「ホールは無理です、私にはできません」とオーナーには断っていた。でも、エリちゃんがいる間の奇跡の数ヶ月のおかげで私は自己肯定感が変に上がっていて、頑張れるかもしれない、と思ってしまった。
 こういうところが私のおバカなところだと思う。もう2度と飲食のホールはしないと心に決めていたのに、誘われるとすぐ調子に乗るところ。

 それで、お菓子の仕込みをする朝だけでなく、ランチの時間にもホール担当でお店に出ることになった。
 1日目の感想は、「やっぱり無理かもしれない」だった。身体的な疲れよりも、ひどく心が削られた感じがしてそっちの方が辛かった。久しぶりに接客をして、そう言えばこんなにしんどかったんだと一気に思い出した日だった。

そして始まったオーナーのパワハラ

 それでもバイトは続いてゆく。何日も入らないうちにすぐわかったのは、オーナーのとてつもなく冷たい態度だった。正直、オーナーが忙しい時間帯にピリピリする人だというのは私のようなほぼすれ違いの勤務しかしていない人間でも感じていた。

 オーナーは、普段はおおらかで優しい人なのだが仕事になると急にピリピリするところがあった。怒鳴るとか意地悪なことを言って来るわけではないが、ある意味その反対で、こちらのいうことを無視したり、黙って食器をガシャン!とやったりするので「怒ってるんだな」というのはすぐにわかる。そしてこれが案外心にズシンと来るのだった。
 そのことについて私が主婦仲間に話すと、みんなが口を揃えて「あれ、本当にしんどいよね」と言った。みんなそんなのにずっと耐えながら仕事していたんだと、その時私にもようやくわかった。

パワハラは本当にしんどい。

 パワハラを側から見ているのもつらいが、直接受けるのはもっともっとつらい。私はオーナーが隣にいるだけで手が震えるようになった。オーナーがいるといつもびくびくして落ち着かず、普通にできる作業でもミスを連発するようになった。
 そんな私を見てオーナーはさらに苛々しているようだった。機嫌を取ろうと話しかけてみたこともあったが、ほとんど返事もしてもらえなかった

なぜ私がこんな扱いを受けなければならないのかという怒りとオーナーへの恐怖とで頭がごちゃごちゃになり、仕事中に涙が止まらなくなることもあった。
 それで、もうやめようと決めた。

ハラスメントはそこに在り続ける

 思い返せば今まで私が色々なアルバイトを辞めることになったのも、上司や先輩からのパワハラが引き金になることがほとんどだった。
 そのハラスメントの多くは、無視だった。挨拶を無視する、わからないことを聞いても答えてくれない、ミスしたことについて謝っても返事すらもらえない。挙げ句、「何もしないでいいからそこに立ってて」と、そういうことだけは言われる。
 これらは、私が仕事ができないせいで受けたというよりは、わりと平等にみんなが受けているハラスメントだった。
 要するに、そういうものへの耐性のある人は職場に残り、ない人は去るというだけの話で、ハラスメントはいつまでもずっとそこに在り続けるのだった。

 私は目の前の理不尽なことに対してすごくストレスを感じるタイプで、受け流すことが難しい。特に直接何か言われるとか、無視されるとか、そういうものは耐え難かったし、それは年齢を重ねても、何度経験しても、慣れることがなかった。

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