おちゃめなフランス人
今週の木曜日、辻仁成さんのオンラインボルドーツアーがあると友人に教えてもらって意気揚々と参加した。3年住んだ街。もう十数年経つし、実は写真もあまり残っていない。記憶の中のボルドーはおぼろげ。もはや別の人生のできごとだったかな...と思ってしまうくらい、遠い思い出。
それでも。
動画が始まった瞬間に街の記憶全部が蘇るくらい、鮮明に思い出した。何度も渡った大きな橋、おやつに買ったカヌレ、フラン、ケバブ。雨宿りのサンタンドレ大聖堂。映画館の横のスーパー「カジノ」。
ほんとに、昨日のことのよう。
曇りの日が多かったな、大学そばのTabacに行くのが好きだったな、本屋に一日中いたりもしたな…。
いろいろ思い出しながら、ボルドーを歩く辻さんを見る。
ボルドーは今ちょうどワインのお祭りをしていて、世界中からたくさんのお客さんが来ている。
私の頭には、ボルドーの赤ワイン、よく食べていたステーク・フリット、マーシュのサラダが浮かんだ。あ、そういえば。友だち数人とちょっと良いレストランに行った日。フランスでは外食をほとんどしなかったから、とてもよく覚えている。
「ステーキ、何グラムにする?」
日本の感覚で、
「150…」
と言おうとしていると、隣に座っていた可愛いフランス人の友だちが、
「500かな」
と言った。
サラダもポテトフライもこんもり付いてくるのに、500!バゲットも食べ放題なのに、500…!!
友人は、そのステーキをしあわせそうに平らげて、おちゃめな表情で腰のベルトをふたつ緩めた。
「ふー、これで大丈夫」
ウィンクをして、〆のデザートを頼んだ。
その友人が大好きになった。
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