見出し画像

80歳夫婦イタリア絵画旅行記 (15)

【イタリア・あの愛しい人達に】
カスティリオーネ・オローナ

(6) 愛すべきマソリーノ
 この洗礼堂内では至る所にフレスコ画が描かれています。壁と言わず天井と言わず柱と言わず。
 上の画像は、壁と壁を補強するアーチ型の壁面に、左右対称に宙を舞う天使が描かれていました。画集などでは殆ど目に入らないような部分で、堂内に入って初めて見つけた時はその優美な姿に感激しました。腰から下の衣がたいへん長く、たなびくように描かれいて、宙を舞う姿にたいへんロマンを感じました。マソリーノが良く使う天使の黒い翼や光輪に白い衣装の組み合わせもセンス良い調和と思えます。アーチ型壁面の対称の左側の天使は、かろうじて形を見い出せるくらいに劣化し薄れていて、たいへん残念でしたが…。

ヨハネの首を受取るヘロデア

 この洗礼堂内で一番心魅かれるのは、なんと言っても (上の図) ヘロデアの姿です。綺麗なオデコに被りものの形もシンプルで美しく、また衣装の平明で単純化された形態やマチェールも良く、シモーネ・マルティーニやフラ・アンジェリコの「受胎告知」のマリアの衣を想起させるような形態の綺麗さ。それらと対照的に顔や首が肉感的でボカシのグラデーションがたいへん柔らかく美しく艶めかしい。ほのかに赤みを帯びた頬と共に紅潮したかのような耳元。長めの首から背に掛けてのしなやかで艶やかな姿態など、ある種妖艶ささえ感じさせるヘロデアの姿はたいへん魅力的です。

サロメ達の群像の一人
(写真資料:L'ARTE RACCONTAより)

(14)のタイトル画像・(14)の中程にある群像の中の人物で、ひとり反対方向に顔を向けていて、ひとりだけ左から光を受けているように描かれています。たいへん顔や目の表情が良く、ボカシも柔らかで暖かみもあってとても綺麗で印象的な美しい顔をしています。赤みの頬と黄緑っぽい陰への変化がマソリーノの穏やかな特徴的な色合いとなって、柔らかな甘みのある美しさを感じさせます。キリストの洗礼図の傍らの3人の天使もとても美しい顔で描かれており、マソリーノの得意としたところかと思います。

洗礼堂の扉口を出る妻

 洗礼堂を出ると、陽は低げで夕方近くを感じさせる影が…。夢中で見ていてすっかり長居したんだなぁと思いました。その間、案内の女性は洗礼堂の外に控えて、私達二人とマソリーノとの至極のひと時を提供してくれました。
 洗礼堂の扉を出ると直ぐ前に小さな建物が向かい合うようにして有りました。

劣化した受胎告知のマリアと天使

 その建物に入ると右手一面に微妙な様子の大きな壁が広がっていて、よくよく見るとかなり劣化した壁で、右にマリア、左に天使を確認することが出来ました。どうやら洗礼堂の扉口の外壁左右に描かれていたようで、雨や外気の影響を受けたのか?随分劣化した状態です。現代の技術(ストラッポ法など)でこの場へ壁ごと移されたのかと思われます。
 ただ劣化した状態ながら、この受胎告知からたいへん心地良いものを感じました。特に天使の横顔 (下段の図) はたいへん美しく、とても良い描写かと思います。現状の劣化した状態がたいへん残念でなりませんが、とても愛着募るものでした。

マリア像

 この「受胎告知」が良い状態で残っていたらきっとマソリーノの代表的な絵になっていたのではとさえ思えてなりません。

天使ガブリエル

 この後、案内して貰ったmuseo(博物館)やcollegiata(参事会聖堂)などを一巡して見て回りました。


*拙い文をお読み頂きありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?