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「令和の一向一揆」が行われ、反ワクチン勢はその得票力を見せ付けた〜都知事選と反ワクチン勢のこれから〜

前回記事でその混沌ぶりを紹介した2024年都知事選だが、蓋を開けてみればゼロ打ち、大方の予想通りに小池百合子氏が3選を決めた。

選挙後には様々なチャネルで選挙分析が行われているが、勿論そのほとんどは上位候補に関するもの(石丸氏2位の躍進と蓮舫氏の伸び悩みや、各政党支持者や無党派層の投票行動など)だ。が、筆者をはじめとしたウォッチャーの着眼点は全く異なる。この記事では、主要メディアがほとんど関心を示さない視点で見た都知事選について雑感を述べたい。

「令和の一向一揆」が行われてしまった都知事選

ほとんどの人にとっての選挙戦クライマックスは有力候補のマイク納めだろうが、ウォッチャーにとってのそれは異なる。なにしろ、今回の都知事選では「令和の一向一揆」が行われてしまったのだ。織田信長をも苦しめた宗教一揆が令和の日本、しかも国会議事堂前で行われるという情報を得てしまっては、「一体、首都東京はどうなってしまうのか」と心配しながらも向かわざるを得ない。

今回の都知事選では代替医療界隈では広く知られる内海聡氏と、5月31日の日比谷公園集会にも参加しており、参政党が支援に入っている田母神俊雄氏(さらに言えばMr.都市伝説こと関暁夫氏が積極支援しており、田母神氏は都市伝説候補でもある)という、反ワクチン界隈で支持され、政治的な立ち位置としては保守派である点が共通している候補が並び立っていた。両者の支持層はかなり重複していると見られる(内海氏は代替医療に振り切り、田母神氏は右派色が強いという違いはある)が、6月30日時点で共闘宣言が出されており、両候補の支持者が国会議事堂前に詰めかけると予想されていた。

「令和の一向一揆」こと内海氏による7月6日国会前街宣の宣伝画像。反ワクチン界の著名人が多く集まっている。ちなみに長井秀和氏も現在はこの界隈で活動している。

そして迎えた7月6日、果たして国会前には多くの人々が集結していた。
うだるような暑さの中、昼過ぎに到着した筆者の眼前では既に多くの参加者がごった返しており、その人数は時間が経つごとに増していった。

暑い中、道路の両端に集まった人、人、人

道路を挟んだ向こう側にも大量の人が並んでおり、最終的な人数は3,000人弱というのがウォッチャー内での共通見解である。この聴衆を前にして、内海氏をはじめ、林千勝氏や吉野敏明氏、池田としえ氏や長井秀和氏などこの界隈の著名人が3時間に渡って演説を行った。

街宣の途中では事前に予想された通り田母神氏が合流し、聴衆が一気に沸き立つ場面もあった。田母神陣営からはデヴィ夫人も演説を行い、ワクチンには反対と明言していた。

この「令和の一向一揆」だが、暴動にでもなるのかと危惧していると内海氏が「暴力、暴動は慎むように」と最初から注意しており、暴れる人物が出ることもなく平穏に終わった。暴力沙汰にならないよう心掛けていたのは大変結構なことだ。結構なことなのだが、「一向一揆」と銘打っているため、「一向一揆ナメてんの?」と一方では思ってしまう。

暴動はダメと注意していた内海氏

さらに残念?だったのは、一向一揆なのにもかかわらず阿弥陀如来への言及が一切なかったことである。いや宗教色さえ全くない。

宗教の雰囲気を感じさせた瞬間といえば、途中から激しく雨が降り始め、雷も轟く壮絶な状況で何かが降りてきてしまったのか、池田としえ氏(日野市議)が「雨よ降れ!!私たちのこの強い想いを、地面深く、深く吸い取らせ(中略)風よビュービュー吹け!」などと感極まった様子で言い始めたところで、何故か自分で一向一揆に呼んだはずの内海氏が若干引いているように感じられる様子が見られた瞬間くらいであった(もしかすると池田氏のことが苦手なのではないかと他人ながら心配になった)。

内海氏が「一向一揆」をキャッチフレーズに採用したのは氏が浄土真宗の家系であることによるものと推察されるが、どうも氏は阿弥陀如来に関心がないようである。

果たしてこれで一向一揆と呼べるのだろうか。一向一揆ならばやはり千人、万人規模で念仏を大合唱し、南無阿弥陀仏の幟も立てて、「念仏で政権奪取」と、堂々と言ってもらいたいものだ。

※令和の一向一揆については黒猫ドラネコさんが詳細記事を公開している。

と書いてきたが、やはり暴動は起こらないに越したことはない。これまで4月の池袋集会5月の日比谷公園集会を見てきた筆者の印象としては、大規模集会の主催者はビジネス色が強く、逮捕されてでも大義を貫くようなタイプの人物は見られない。少なくとも主催側から大規模暴動を煽る可能性はかなり低いと見ている。

むしろ危惧しているのは、無名の個人が突発的な行動に出るケースである。今年6月に報じられた保護司殺害事件の容疑者はXアカウントの存在が知られており、その投稿を辿ったところ、陰謀論インフルエンサーに心酔しているものがいくつも確認できた。この手の人物がいきなり過激な行動を起こした場合、被害を防ぐのはかなり難しいのではないだろうか。活動上、筆者も他人事ではない。

ウォッチャーたちとマイク納め

「令和の一向一揆」には別の見どころもあった。選挙戦における最大規模の反ワクチン集会だったことから、主催側だけでなくウォッチャー側も勢揃いしていたのである。大規模集会には自然とウォッチャーが集まり、現場で、またXのタイムライン上で同じ空間を共有していることを確認する。

どのマイク納めへ向かうか?ウォッチャー各自の好みが反映される

そんなウォッチャーたちが令和の一向一揆後に向かった場所といえば、各候補のマイク納めである。東京都内とはいっても距離があるため全てを見るわけにはいかない。ウォッチャー各自がそれぞれの光景を求めてマイク納めへと向かう様子を眺めていると、同時に複数の人物を追うドキュメンタリーを見ているような感覚になった。

今回注目されていた地域を挙げれば下記のようになる。

  • 新宿:有力候補である蓮舫氏のマイク納めが一般的な関心事項と考えられるが、ウォッチャーにとっては陰謀論徳政令の未来党と、衆院東京15区補選の行動で激しい批判を浴びたつばさの党を両方見られる有力スポット。多くのウォッチャーが新宿に向かっていた。
    特に未来党はそれまでの演説から内容を大幅にグレードアップさせ、「岸田首相はゴム人間!」という石川氏の発言に「知ってる〜!ゴムー!!ゴムー!!」と支持者が応答するという、およそ有力候補では見られないであろう(そして選挙分析でも全く触れられないであろう)光景が繰り広げられていた。
    やや日刊カルト新聞総裁の藤倉氏は、「二子玉川に大量に表れたUFO」の話に始まり陰謀論用語を連呼する怪老人の取材に成功し、未知との遭遇を果たしていた。

  • 上野:演説者と聴衆の濃さでいえば未来党に太刀打ちできる候補は存在しないが、「追いかけるなら反ワクチン一本!」という気骨のあるウォッチャーならやはり内海聡氏のマイク納めは外せない。豪雨で新幹線が止まってしまい一向一揆に出られなかった三宅洋平氏も、このマイク納めには間に合っていた。

  • 秋葉原:右派ウォッチャーにとっては秋葉原も外せない。最近は表に出る機会が減っていたとはいえ、桜井誠氏は一時期のウェブ空間においてはかなりの勢いを誇り、前回の都知事選では18万票を集めた人物である。その配信からは、現在でも熱心な支持者が確実に存在しており、独特の熱気が雨の中漂っていた様子が伝わってきた。

  • 東京:知名度という点では小池氏、蓮舫氏にかなりの遅れを取っていたにもかかわらず小池氏に次ぐ2位につけるという「石丸ショック」を巻き起こした石丸氏は、既存メディアとの対立を演出しながら聴衆やボランティアを仲間と意識させることを狙った演説を行い、普段ウォッチャーが追う候補とはレベルの違う数のファンを抱えていた。「本当に勝てるのではないか」という熱気を感じるならば、東京駅の演説会場こそがそれに相応しかっただろう。

  • 東銀座:田母神氏は今や右派反ワクチン界隈の著名人であり、メディアでは主要4候補として扱われていただけに、内海氏とはまた違った雰囲気がある。可能であれば内海氏の聴衆との差を確認しておきたいところだ。デヴィ夫人、西岡徳馬氏、せんだみつお氏といった芸能人が応援演説を行っているのも魅力の一つだろうか。ちなみに、筆者が注目している関暁夫氏はマイク納めの応援演説は行わなかった(関氏は7月3日の五反田演説では応援弁士として登壇し、「売国奴の政治家が(国外勢力に)水や土地を売っている」「政治家は中国人寄りの政策やビジネスばかり」といった主張を行っていた)。

  • 渋谷:ポスター問題によって、今回選挙戦ではある意味最大の注目を集めたN国党勢は渋谷駅前で合同演説会を実施していた。N国党にも専門家と言えるウォッチャー勢がおり、もちろん渋谷に向かっていた。筆者はN国党関連についてはそうした専門家に任せているが、N国党関連の出来事として注目していたのは、「三浦春馬陰謀論動画を発信していたYoutuberがN国党の枠でポスターを貼っていたところ批判され、『チマチマ言わんとストレートにこっちこんかい』と意気がっていたが、実際にアミューズ事務所が声明を発表したところ速攻で謝罪した」事例である。謝罪するのは結構だが、それくらいの覚悟と根性しかないのなら最初からやらなければ良いのではないだろうか。

そんな筆者はと言えば、最後は真面目に期待している候補の応援に行きたかったため、有楽町で安野氏のマイク納めを聞いていたのだった(安野氏については出馬表明当初から注目しており、メン獄氏や樋口恭介氏の投稿から支持者の雰囲気を感じ取っていた)。

マイク納めでの安野夫妻

田母神氏26万7千票、内海氏12万票と反ワクチン勢のこれから

そうして迎えた投開票日、結果はといえば田母神氏は約26万7千票で4位、内海氏は約12万票で6位とかなりの成績を収めた。特に内海氏が6位に着けたことにはウォッチャーの間でも驚きが広がった。(ちなみに、公示日前から当確を出していた、未来党木宮みつき氏の得票数は約4,800票であった)。

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