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Mr.都市伝説関暁夫氏や徳政令候補に外山恒一氏も参戦〜都知事選の熱い夏〜

2024年、熱い夏が始まった

6月20日に告示日を迎えた2024年東京都知事選挙は、前代未聞の立候補者数(56人)過激な選挙ポスターを巡る騒動大量擁立によって確保した掲示板区画の販売とも取れる手法の是非など、およそ主要な候補や政策とは別筋の話題が注目の的となりながら始まった。

選挙の告示日は、候補者だけではなく、それを追いかけるウォッチャーや選挙ファンへにとっても行動開始の合図である。ウォッチャーや選挙好きにとって大規模選挙は待ちに待った一大イベントであり、届け出の瞬間や街頭での第一声に立ち会うため、告示日当日は様々な選挙好きが動き出す(勿論告示日前から動いている人もいるが)様子を見ることができた。

候補者と共に動くウォッチャーもまた、選挙戦の風物詩である。多数ある選挙の中でも東京都知事選では国政選挙並みの視線が全国から一か所に集中するため、独特の魅力を放つ。4年に一度(といっても小池百合子氏の前は辞職続きで短スパンだったが)の熱い夏がやってきたのだ。

風変わりな候補が好きなウォッチャーとはいえ、政治思想を訴えるというよりはPV集めのビジネスを目的にしているように見える人々には筆者も色々と思うところがある。それについては共感できる意見を外山恒一氏が語っているので、動画リンクを掲載しておく。

さて、今回都知事選では56人という異例の大量立候補が話題になっているが、そのうち24人はN党関連の候補者である。前回都知事選の立候補者が22人だったことを考えれば、今回の候補者急増はN国党の奇策によるところが大きく、筆者として注目したいのは他の側面にある。それは、陰謀論や代替医療との関係が深い候補者が存在感を示していることである。

この記事では、主要メディアではほとんど報道されないような危うい面を持つ候補者たちについて記述したい。このような動向を記録しておくことも市民の役割の一つだろう。

要注意の候補たち

田母神俊雄:「Mr. 都市伝説」関暁夫氏が応援、都市伝説ファンは票田となるか

今回都知事選では主要候補として扱われている田母神氏をここに挙げるのには理由がある。それは、あの「Mr. 都市伝説」関暁夫氏が積極的に応援しているためだ。ポスター貼りまで手伝う熱心さを見せている。

筆者がX(旧Twitter)でこのような状況を紹介した反応として多かったのが、「関暁夫氏は、あくまでネタとして都市伝説を扱う芸人だと思っていた」というものだった。しかし、現在の関氏は上述の通り田母神氏に接近し、自身が運営するオンラインサロン(情熱倶楽部)のメンバーを集めて「山中での民間防衛勉強会」を行うまでになっている。

関暁夫氏の都市伝説本を追っていくと分かるが、「ネタとして都市伝説を紹介して笑いを誘う」ような路線はごく初期のものだ。現在では「目を覚ませ」と掲げたトークライブを行ったり(ここにも田母神氏がゲスト登場している)涙ながらに発言したりと、初期とはかなり印象の異なるキャラクターになっている。

関氏はこの路線で活動を続けてファンを集め続け、ついには昨年武道館を満員にすることに成功した。その動員力は侮れない。間違いなく現代オカルト界ではトップの集客力を誇っていると言えるだろう。

オカルトといえば月刊誌『ムー』とその周辺が古株だが、関氏は当初、「『ムー』のようなアブない界隈とは違う、お笑い芸人が語る面白話」というスタンスを取ることでオカルトの怪しさを脱色し、ライトなネタとして様々な番組へと出演することに成功した。ところがその言説を見てみると、結局は昔ながらのオカルトやスピリチュアル、陰謀論の流用である(筆者が見たところ、噂話らしい「都市伝説」が主役になっているのは単行本2巻までで、早々に都市伝説ネタが尽きたことが見て取れる)。

にもかかわらず、ここに来て政治に接近しても関氏は「面白半分」に各種メディアに呼ばれている。その割にメディア各社はコンプライアンスにうるさくなっているらしいのだから、判断ロジックがバグってでもいるのかと困惑してしまう。最近ロマン優光氏が『霜降り明星のオールナイトニッポン』に関暁夫氏が呼ばれたことについて、「面白かった。非常によくないなと思った。」と評していたが、筆者も全くその通りだと思う。

本人がどこまで信じているかはともかく、熱心なファンの投稿からは明らかに本気にしている様子が見え、そのような人々をオンラインサロンに囲い込んでいるのだから、結局は本気で発信しているのと変わらない(ちなみにそのオンラインサロンの月額は5,000円である)。少なくとも現在の「信じるか信じないかはあなた次第」は、かつての「たかが都市伝説なので話半分で良い」というニュアンスとは異なったものとなっている。これについてはまた別に書きたい。

このような事情もあり、田母神俊雄氏が何票獲得するのかは興味深い。また、関暁夫氏が応援演説を行うなどして本格的に政治と接近する姿勢を見せるのかについても要注目だ。

木宮光喜:まさかのGESARA陰謀論を主軸に据えウォッチャーの人気を攫う

かつてのインディーズ候補・独立候補の魅力は、その「謎」にあったのではないかと思う。何故わざわざ落選するであろう選挙に立候補し、風変わりな主張を行うのか?そこで生まれる謎を解くべく、本人の話を聞きに行きたくなってしまう。
このような謎が生まれるのも、あくまで本人がその主張に思いを持って取り組んでいるためだ。これが売名やPVビジネスといった目的がはっきりしていては面白みがない。まるで税金を使ったスパム広告を見せられているような気分になる。

PVビジネスの行き着く先とも言える今回の選挙を巡る騒動には陰鬱な気持ちになるが、そんな中でも古き良き(?)独立候補の雰囲気を感じさせてくれることで一躍ウォッチャーの人気を攫っているのが、未来党の木宮光喜氏である。未来党の魅力は、何といっても「光の勢力が勝つと発動し、借金が帳消しになる法案」GESARA陰謀論を中核に据えるという常識の超越ぶりであり、しかもそれをストレートに主張している点だ。

筆者は街宣に出向いて木宮氏とも会話したが、その演説はGESARA法案の内容を一つ一つ挙げていくというもので、木宮氏の話からもこの説を素直に信じている様子が伝わってきた。ここまで一貫しているのであれば、その主張には全く同意できないものの、人としての誠実さ(?)には共感できるところがある。陰謀論について少し突っ込まれると「あくまで紹介しているだけ」などと誤魔化す政治家やインフルエンサーは、木宮氏の爪の垢を煎じて飲むべきである。

この党のフリーダムさは群を抜いており、何と告示前に当確宣言をしてしまっていた。未来党にとっては、選挙など些細な問題なのかもしれない。陰謀論を利用するのであれば小さくまとまるのではなく、これくらい突き抜けてもらいたいところだ。本当に自分を光の戦士だと信じられれば、落選など怖くないだろう。

ただし、GESARA陰謀論は詐欺に使われやすい(その出自からすれば詐欺から生まれた陰謀論とも言える)ため、危うい方向に進まないことを祈っている。木宮氏も恐らく人柄は良いのだろうと思うが、過去の配信ではスピリチュアル混じりの陰謀論ブログで知られる「Judy note」を情報源とする(これもイラクディナール詐欺関連のサイトに埋め込まれており、詐欺のターゲットを集めるのに一役かっている)と共に馬渕睦夫氏や河添恵子氏を支持していると証言しており、その思想にもやはり、一抹の不安を覚えるのである。

また、代表の石川新一郎氏が以前公明党に所属していたことが筆者は気になっていたが、石川氏、木宮氏の両氏(さらに夫の木宮憲市氏も)は創価学会の脱会者であると証言している。公明党もまさか、脱会した議員がこのような党を立ち上げるとは思っていなかっただろう。選挙戦では公明党への言及有無についても注目したい。

内海聡:代替医療の大物がついに参戦

代替医療や現代医療批判関連の書籍を多数発行し、Xのフォロワー数が20万を超えている内海聡氏は、界隈でもトップクラスの知名度を誇る医師だ。代替医療や反ワクチンに関心のある人なら、一度は見聞きしたことのある人物だろう。

内海氏は池田としえ氏(HPVワクチンの頃から反ワクチン運動を主導してきたことで知られる日野市議)、谷本誠一氏(機内でのマスク着用を拒んだことから離陸前に降ろされた騒動がニュースとなり、取材に対しては「新型コロナの裏に『闇の勢力』あり」と主張した元呉市議)などが所属する議員や医師などの連合体、「チーム日本」にも名を連ねていることから、そのうち政治の世界にも打って出るのではとウォッチャーの間でも囁かれていた。

内海氏の肩書としては「『市民がつくる政治の会』代表」というものがよく登場するが、これは「母の愛が地球を救う!」という旗印の下に代替医療や疑似科学、陰謀論に関連した人々によって結成された「日本母親連盟」が改名した組織である。この日本母親連盟は、講演に山本太郎氏を呼んだものの、その主要人物の陰謀論・疑似科学・スピリチュアル・歴史修正主義への傾倒ぶりから、「これは一緒にやれない」と山本氏に詳細な指摘を受けた団体としてウォッチャーの間では知られている。

そして、HPVワクチン反対の頃から長年反ワクチン運動を取材してきた鈴木エイト氏に対しては敵対意識を持っているようで、5月31日に行われた反WHO大規模集会では鈴木エイト氏を「クソみたいなジャーナリスト」呼ばわりしていた。

そしてまた、内海氏はレプティリアン陰謀論界のゴッドファーザー、デヴィッド・アイクの翻訳書の監修を務めていたこともあり、代替医療だけではなく、陰謀論の世界でも大きな存在感を放っている。

今回都知事選では街頭で参政党からの応援を受けていた田母神氏とこの内海聡氏が陰謀論・スピリチュアル・代替医療票の二大巨頭となるだろう。特に内海聡氏は代替医療に振り切った存在であり(主張自体には保守と相性が良いところもあるが)、新型コロナ禍でその存在を目立たせてきたワクチン否定派や代替医療心酔層が、どこまで票の数を見せつけるのかに要注目である。

黒川敦彦:過激な行動で一躍悪名を轟かせるも、その主張にも注目

今年の選挙を利用した活動で最も知名度向上に成功した人物といえば、間違いなくつばさの党の黒川氏だろう。電話ボックスに上ってのスキャンダル煽りや選挙カーでのカーチェイスといった行動が問題視され、地上波でも盛んに取り上げられた黒川氏は公職選挙法違反で逮捕されているが、今回都知事選では獄中立候補に成功している。

つばさの党のYouTubeチャンネルがBANされている上にニコニコ動画もいまだ復旧していないために、黒川氏がモニターの前に立って解説する近年のスタイルでの動画は見られないが、氏の陰謀論の主な要素は過去の政見放送でも確認できる。

例えば、第49回衆院選の政見放送内で言われているのはおおよそ下記の主張であった。

・岸信介は巣鴨プリズン投獄から首相になった米国のスパイ。その孫である安倍晋三氏も総理大臣になっていることからも分かる通り、戦後の日本は米国の指示通りに動いてきた。
その米国の中心はウォール街だが、金融界はユダヤマネーによって支配されている。すなわち米国はユダヤ金融資本の支配下にあり、自民党もその手先である。

・対する立憲民主党の支持母体は労働組合。労働者の監視を目的として、この労働組合の普及を主導したのも米国だったのだから、自民と立民は対立しているようでありながら、米国の手先であることに変わりはない。

・共産党についても、共産主義勢力を拡大していった人達の中にはユダヤ人がいるのだから、これもユダヤ勢力の手先である。

どうだろうか。昨今流行するような、初見で荒唐無稽と分かる類の陰謀論に違和感を覚えている人も、これには「これこそがあの頃自分が熱中した『陰謀論』だ!」と胸が熱くなり、涙を流してしまうかもしれない。

黒川氏の主張は「事実や、嘘とも言えない繋がりを強調していくとこういう見方をすることもできる」というタイプの陰謀論で、これは日本の書店が棚の片隅で養成してきた、トラディショナルでクラシックスタイルな陰謀論である。

このタイプの陰謀論はある程度は歴史や政治上の事実も含まれているために一般的な政治の話から延長しやすく(特に大きいのは宇宙人が登場しないところで、地球に留まったまま話を展開できる)、オカルトやスピリチュアルに慣れていない人にも理解はしやすい。

この手の陰謀論が好きな人からすれば、「大規模火災はグローバリストが仕掛けた指向性エネルギー兵器によるもの」や「世界を支配しているのは爬虫類型宇宙人」といった、「構造としては陰謀論だが、荒唐無稽すぎる、またはスピリチュアル色が強すぎる説」は何を言っているのやらよく分からないし、理解できたら怖いように感じられるだろう(ただし、前者と後者を同時に主張している人物もおり、両者の線引は曖昧である)。

と、このように書くと何やら良いもののようにも思えてくるが、上記のような陰謀論は現実味を与えやすいだけに政治と接近しやすく、またつまるところは古典的なユダヤ陰謀論であるために人種差別にも非常に近く(日本の場合はユダヤ人の部分を在日コリアンに入れ替えた陰謀論が流行しがちである)、やはり危うい。

つばさの党は黒川氏に根本氏という目立つ人物が逮捕されてしまったため、現在は外山まき氏が選挙活動を主導している。ここで補選の時のように暴れていれば面白がった配信者たちが駆けつけていただろうが、外山氏はそのようなタイプではないため今のところは無風といった印象だ。選択としては正しいと思うが、これはこれで寂しい気もする。

つばさの党は、中心メンバーの逮捕と引き換えに獲得した知名度を、今後どのように活用していくのだろうか。

混沌とした都知事選に外山恒一氏も参戦

今回の都知事選が混沌としたものになるであろうことは告示日前から言われており、様々な要因が影響したにせよ、その一端を開いたと言えるのは冒頭でも触れた外山恒一氏と言って差し支えないだろう。ここは責任を取って(?)出馬すべきではないだろうか、と筆者が考えていたところ、外山氏がX(旧Twitter)で参戦を宣言していた。

現状の活動としてはアキノリ将軍未満氏の枠に外山恒一氏のポスターを貼り(アキノリ氏は外山氏のところに居候していたことがあるらしい)、その主張を訴えているようである。

人の数だけ選挙の見方がある

様々な候補に触れてきたが、いずれにせよ都知事選は首都の行方を左右する重要な選挙である。自分なりの見方を持って選挙に関われば、短い選挙期間を充実させることができるだろう。そして投開票日に宴を開けば、そこは実に楽しい場所となる。あなたにも是非友人とテーブルを囲み、選挙談議に花を咲かせて頂きたい。

都知事選翌週の7月13日(土)には、毎年黒猫ドラネコさんと行っている陰謀論・スピリチュアルに関するトークライブを予定している。そこでは勿論都知事選についても話すつもりだ。ネイキッドロフトという場所は都知事選とも縁のある場所だと考えているが、それについては現地で話したいと思う。

その他の気になる候補たち

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