見出し画像

中国から届く謎の種~調査の結果浮かび上がる、ブラッシング詐欺以外の可能性~

ここ数日、中国から送られる謎の種が世間を騒がせている。これは、注文した覚えのない植物の種が中国から送られてくるというもので、米国、英国、カナダ、オーストラリア、そして日本と、様々な国で同様の事象が報告されており、その理由については何らかの詐欺という現実的なものからバイオテロという怪しげなものまで推測されており事態は混沌を極めている。
ちなみに、種の正体は猛毒植物などという情報が出回っているが、今のところそのような確かな情報はない。現在確認されているのはハーブや花など無難なものだ。

この手の怪しい話は僕の大好物であるため、WSJの記事を読んだ僕はすぐ調査に取り掛かった。このnoteでは、あるSNSで知り合いが唱えていた仮説を、僕の調査結果を添えて紹介する。

現在の最有力候補、ブラッシング詐欺

今のところ最もよく言われているのが「ブラッシング詐欺」という手口である。適当な住所に商品を送りつけ、その注文を使ってフェイクレビューを書き込むというものだが、それならば何故規制が掛かる植物の種を使うのかという疑問が残る。紙切れや鉄クズでも良いのではないだろうか。そう思った僕はまず、種の配送情報を探ってみることにした。

種の送り元は一箇所ではない?

「China seed」でTwitterを検索し、届いた種のラベルを色々と見た僕は、伝票番号が記載されているのを見つけた。UJから始まりCNで終わるコードがそれである。そこで、様々な会社の配送情報を検索できる17tracksというサイトにTwitterで見つけた伝票番号を打ち込んだところ、中国から発送され、米国に到着した荷物の情報が表示された。

画像1

この情報から、種は今年2月に発送され、何故かフランクフルトを経由して7月に米国へと到着していることが分かった。意外と簡単に追跡できることが分かった僕は、Twitterで取得した画像から発送地と発送日、到着日を確認し表にまとめた。それがこの表である。

画像2

日本宛ての種は追跡できなかったので発送元だけとなっているが、これを見ると複数の場所から種が送られていることが分かる。共通するのは今年の1,2月に発送され、5ヵ月近くかけて7月に到着していることだ。複数の企業が同じ手口に手を染めているのだろうか。

種の送り主とは

発送地の次に知りたいのはやはり発送者である。さらに調査を進めた僕は、中国の掲示板で、ラベルの電話番号から発送者を特定した投稿を発見した。

画像3

ここに出ている微博のURLにアクセスした結果が次の画像である。

画像4

このアカウントはほとんど使われている形跡がなく、恐らく使い捨てのものと考えられる。電話番号も使い捨てのものだろう。少なくともまともな企業が送ったものでないことは分かった。

偽造されていたラベル

ここまでラベルの情報を頼りに調査を進めてきた僕だが、あるニュースから驚愕の事実を知ることになる。

米中摩擦のさなか、米国の広範囲に“中国郵政”による謎のタネ――品物欄には「宝石」「おもちゃ」など

この記事で注目すべきは次の部分だ。

汪氏は「米当局が中国郵政と確認したところ、これらの郵便にある『中国郵政』の伝票は偽造されており、伝票のレイアウトや情報に多くの誤りがある」と指摘。

あのラベルは偽造されたものだったのだ。確かに、追跡情報を見たときにも怪しいところはあった。もう一度あの画像を掲載しよう。

画像5

画像の上部を見て欲しい。宛先がドイツになっているにも関わらず米国に到着している。これはひょっとすると、伝票を偽装したがために妙な表示になっているのかもしれない。さらに、植物防疫所のHPに記載されている通り、全ての郵便物について海外からの植物は検査証明書添付の上検査が行われるはずだが、そんなものは受けていないだろう。

貨物、手荷物や郵便などで植物を海外から日本へ持ち込む場合、病害虫が植物に付着して日本に侵入することを防ぐために、量や用途を問わずすべての植物について、輸出国政府機関が発行する検査証明書(Phytosanitary Certificate)を添付して、輸入検査を受ける必要があります。

浮かび上がる仮説

ここまでの結果をまとめてみよう。

・種の発送元はバラバラで、発送日についてもある程度ばらついているが到着日はかなり近い。
・発送者の情報として使い捨ての電話番号を利用している。
・伝票は偽造されている。
・植物の種には然るべき検査ががかかるはずだが、恐らくそれを回避している。

そして、ここから浮かび上がる可能性が、「何者かが伝票を偽造し、植物についても検査を回避する方法を編み出した。彼らはテストのために無難な植物の種を何度かに分けて送った。ところがコロナの影響で配達がもたつき、一挙に届いて騒ぎになってしまった。」

というものだ。それでは彼らが本当に送ろうとしたものは何だったのか。使い捨ての情報で、偽造伝票を使ってまで送りたいもの...大麻やケシといった麻薬原料植物なのではないだろうか。

ただ、この仮説にも問題がないわけではない。単なるテストなのであれば、何故これだけ広範に送りつけているのだろうか?

依然真相は闇に包まれている。この事件については継続して調査していきたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?