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映画「オッペンハイマー」を観た

先週、映画「オッペンハイマー」を観てきた。

今年のアカデミー賞で、作品賞をはじめ7部門を受賞。
公開されたら観に行かなきゃなって思っていた。が、いざ観に行こうと映画公開情報を調べていたら、気軽に観られる映画ではないことに気づく。

まず、3時間を超える長尺であることが、私にはかなりのハードルとなる。
しかも、R15+ってね。PG12でも躊躇してしまう私。何がひっかかるのか調べてみたら、刺激的な性的表現があるからとのこと。グロいとかではないのか、とそこは少し安心した。でも、R指定にしなければいけないなら、あんなセックスシーンいらないんじゃないかって、映画を観終わった後には思っていた。

そして、戦争を扱った映画、ましてや原爆を生み出した話なんて、ただのエンタメとして受け取ることなんてできない。日本での公開がなかなか決まらなかったという事情も知っていた。

しかも私は、クリストファー・ノーラン監督の作品をこれまでに観たことがない。あんなに話題になっていた「TENET」も観ていない。

そんなやつが観に行くなよ。って、映画好きの方には怒られそうだが、それぐらいこの作品についての情報を持っていなかった。

ノーラン作品をよく知らない。
オッペンハイマーという人物についての知識がない。
物理学に興味がない。
第二次世界大戦前後のアメリカの歴史に詳しくない。

そんな私のような人にとっては、決して優しいとは言えない映画だ。

もっと事前準備をしてから観に行けば良かった。
時間軸が交差し、登場人物も多いので、字幕を追いながらついていくのに必死で、最初は白黒とカラーで分けられた映像の違いすら理解できていなかった。

映画を観る前に、こちらのnote記事を読んでおくといいと思う。↓

登場人物が多すぎるのよ。でも、きっとどの人物も欠くことができなかった。一人の科学者の伝記ものではあるものの、その人生は、関わってきた人たちによって大きく変化することもある。改めて見ると、豪華なキャスト陣。ハリウッド俳優についてあまり詳しくない私でも、マット・デイモン出てるじゃん!ってなるし、見たことある俳優さんばかり。

作品についてまったく予習できていなかった私は、観終わった後に、こういった解説記事を読みながら答え合わせをしていた。それでやっと理解できたことも多い。

こちらの記事も時系列がわかりやすくて助かる。↓


この映画は、「原爆の父」と呼ばれているオッペンハイマーの伝記を原作としている。ただ、原爆がいかにして作られたかという話だけでは終わらない。そんなことは、監督がノーランさんだということを知るだけで、きっと誰もが想像できている。
この映画、3時間もあるのに、その長さを感じなかった。時間軸がいったりきたりする複雑さや会話劇の面白さもその理由ではあるが、何より没入感がとても高い。主人公であるオッペンハイマーの心理状態をそのまま体感しているようだ。それは音響による効果が大きいということに、後で解説を読んだりして気づいたけれど、それもノーラン監督の手法のひとつなのだとか。

だから、IMAXが推奨されてたんだ。
体感させたいところって、トリニティ実験のあの迫力だけじゃなかったんだ。まぁ、私は近所にIMAXで観られる劇場がなかったので、通常のスクリーンで観たんだけど。IMAXで観ていたら、その体感による没入感はもっと高かったのかもしれない。

それにしても、アメリカでの「マンハッタン計画」の規模の大きさに驚いた。原爆の実験のために街ごと作っていたのだから。
ドイツやソ連よりも先に原爆開発を成功させなければいけないという、アメリカ、そしてチームの意地みたいなものを感じた。

戦時下、各国で原爆研究は進められていて、オッペンハイマーが開発に成功していなくても、きっとどこかの国で原爆は作られていた。
そういえば、「太陽の子」という作品を観て、当時の日本でも原爆の研究がされていたことを知り、私は驚いた。三浦春馬さん出演の最後の作品で、原爆開発に関わる学生役の柳楽優弥さんの演技も素晴らしい。原爆投下後の広島を見て、初めて、自分が開発していたものの恐ろしさを知るというシーンがある。

オッペンハイマーは広島や長崎には実際に行ってはいないが、彼の妄想の中でその惨状を描き、苦悩することになる。

この作品で私が一番印象に残っている映像は、オッペンハイマーの妄想の中で、核分裂の連鎖により地球が破滅していく様子が描かれたシーンだった。アインシュタインにも相談した、大気に連鎖して地球全体に核爆発が広がる可能性があるという計算結果が出ていたこと。結局実験ではそんなことは起こらなかったけれど、オッペンハイマーの頭の中には「世界の破滅」への恐怖心がずっと残っていたのではないだろうか。

核兵器が生み出された後の世界に、私たちは生きている。

核兵器を最初に開発したオッペンハイマーの苦悩を体感するとともに、そんなことを思い知らされた。

一度観ただけではすべてを理解するには難しい映画ではあるけれど、良い映画に出会えたと思える作品だった。

IMAXでも観るべき?
ノーラン監督の他の作品も、難しそうだけど観たくなった。

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