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ドラマ「舟を編む」最終回感想
ドラマ「舟を編む」が最終回をむかえた。
1話でグイっと引き込まれ、その後も玄武書房・辞書編集部の皆さんと一緒に航海をしているような、そんな濃密な時間を過ごすことができた全10話だった。
ドラマ1話の感想などを書いた記事↓
最終回直前に書いた記事↓
※以下ネタバレあり
まずは、「大渡海」が無事に刊行されて、良かった。
って、そこはさすがに原作から変わらないか。でも、ドラマもまだまだ観ていたかったから、シーズン2まで延ばしていただいても良かったかも、なんて。
コロナ流行によって新しく出現した言葉を「大渡海」に入れるべきではないか、と校了直前に言い出す馬締さん。松本先生の病気のこともあり、一刻も早く「大渡海」を刊行したいという思いのある荒木さんは、それに反対する。
そんな議論をしている辞書編集部に、松本先生の奥様が「用例採集カード」を届けに来た。松本先生も病床の中、コロナ関連の言葉を集めていた。
残すべき言葉は、手渡すための言葉
手渡すものとは、嵐の避け方、越え方。
災害や病気による困難に抗いながら人は、それを後世に手渡してきた。
2020年3月。いったい何が起きているのか、先の見えない不安を誰もが抱えていた。入院中の大切な人にも会いに行くことができない。そんな時に生まれた言葉たち。
辞書に載せる判断の基準、残る言葉だけでなく、残すべき言葉もある。
松本先生の思いも受け取り、「大渡海」にコロナ関連の用語を追加することに決めた。
でも、どうやって刊行日に間に合わすのか?と頭を抱えていたところに、製紙会社の宮本さんが現れて、対応できる印刷機を増やせることになったと報告する。わぁ、矢本悠馬、じゃなくて宮本さん、やっぱり仕事できすぎる。
三省堂辞書出版部さんの、実際に同じような経験をしたというpostを見つけ、私は、ドラマ制作チームの熱い思いに改めて気づかされた。
大渡海は校了締め切り直前、コロナ用語の追加を決断しました。同じく2020年に刊行した『#新明解国語辞典 第八版』もコロナ用語の採否を悩みに悩んだ末、残ってほしくない言葉であるが、確かにこういう時代があって、これらの言葉はその記録であると、採録に踏み切りました。
このコロナ用語を入れるかどうかのシーンだけでも、このドラマがいかに丁寧に作られているかがわかる。
ドラマの最終回は、そのほとんどが原作にないシーンだったが、もうそんなことはどうでもいいというか。どのシーンも素敵だったし、心に残るたくさんの言葉が溢れ出ていた。
松本先生の奥様・千鶴子さんと荒木さんが土手で話すシーンも印象に残っている。千鶴子さんが松本先生への思いを語るのに使った言葉がとても素敵だった。
私、言っちゃったの。私と辞書どっちが大切?って
あの人ものすごく困った顔で、
「それは君、靴の右と左どちらが大切かと訊ねるのと同義だよ」って。
なーんだって。
私、あの人の全部にならなくてもいいし、
あの人を私の全部にしなくてもいいんだわって。
だからね、私、安心なんです。
どんなときでも、どちらかがいないときでも、
あの人と私は裸足にはならないんです。
ケンケンパでも前には進めるでしょ。
この松本先生の靴の話、馬締さんと香具矢さん夫婦に当てはまるように思えた。コロナの影響で、二人は物理的に離れることになってしまい、気持ちもすれ違いかけていた。そんなとき、松本先生やみどりの言葉により、言葉でつながることの大切さについて改めて気づき、京都へ出発する香具矢に「いってらっしゃい」と伝えることができた馬締さん。
そうそう、いろいろな愛のカタチをこのドラマでは見せてくれる。
素敵なシーンばかりの最終回だが、一番グッときたのは、「大渡海」刊行祝賀パーティーでの松本先生から辞書編集部員へ向けたメッセージ。リモート参加の松本先生が、ひとりずつ丁寧に感謝を伝えていく。優しいあの話し方で、それぞれに響くメッセージを。
その言葉を受け取った人たちの表情を見るだけで、こちらもグッとくる。
西岡さんへのメッセージもあり、感極まる西岡さん。良いシーンだ。
このドラマのシーンにかぶせてなのかどうなのかわからないけど、脚本の蛭田直美さんやプロデューサーさんが、それぞれのキャラを演じた俳優さんへのコメントをXでPostされている。
柴田さんの松本先生が大好きです。
— 蛭田直美 (@naoanzu) April 21, 2024
最終話に、私の苦しかった体験を元に書いた松本先生の台詞があります。柴田さんの松本先生だから書けました。完パケでそれを観た時、その体験をしてよかったと心から思いました。そんな日が来るなんて思ってなかった。
柴田さんの松本先生のおかげです。#舟を編む https://t.co/16Zjrg4HOs
そして、原作の三浦しをんさんもブログでドラマの感想を書いていたりして、関わっている方たちが皆、お互いのことを称えあってる感じがなんとも愛おしく思えた。
話それますが、あぶ刑事ファンとしては、野田さんのこの投稿にも歓喜↓
僕が小学校時代から「あぶない刑事」が大好きだったことを撮影前にプロデューサーの高さんに話していたら、柴田さんクランクアップの日にサングラス🕶️を用意して頂きなんとも嬉しいショットを。
— Yojiro Noda (@YojiNoda1) April 18, 2024
まじで、歓喜。
「舟を編む」チーム全員でも😎
今週4.21 いよいよ最終回です。#舟を編む#あぶデカ pic.twitter.com/pMvAHXhiTR
このドラマのキャスト全員が愛おしすぎて、私もひとりずつコメントしたいぐらいなんだけど、長くなってしまうので、ここではやめておきます。
そして、松本先生、お元気になられて良かった~!
最終回の途中までいろいろなことを覚悟しながら観ていたものだから、2024年にあのベンチで二人が楽しそうに話している姿を見たときは、正直ちょっと驚いた。でも、なんて嬉しいサプライズなんでしょう。
「癌」の語釈も変化するように、医学も進歩している。
生きるとは変わること
みどりが発したこの言葉も、私の心に強く残っている。
令和版「舟を編む」もまた、変わることで生きていると言えるのではないか。この令和の時代に合わせて変化しながら、原作から変わらない大切なものを繋いで生きている。
原作からこんなにも変わっているのに、誰も文句を付けられない。
あらためて素晴らしい脚本だなと思う。
こんなに何度も観返したくなるドラマって、他にないかも。
脚本の蛭田直美さんをはじめ、このドラマにかかわったすべての方に、感謝。
あと、「大渡海」欲しくなるよね。
どこかに売ってないの?
あの素敵な装丁を見つけたら、絶対買っちゃう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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