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シフォンケーキを食べたことのない元銀行員が、米粉のシフォンケーキを商売にして、「今まで食べた中で一番美味しかった」と言われた

元銀行員が定年退職後にパン屋を起業して米粉のパンとシフォンケーキを作った。きっかけはハローワークの職業訓練講座だ。

 レシピは職業訓練講座で用意されていた。教えてもらったのは2回。講師から「あなたは最初はモタモタしてるけど、最後の方になるとつじつまを合わせるわね」と言われたことを覚えている。呆れられたのか誉められたのか(笑)。メレンゲと言う言葉がたびたび出てくるので「それはなんですか」と質問した。シフォンケーキを食べたのはその時が初めてだった。それくらいスイーツ音痴だった。

 職業訓練講座が終了して半年後にデイサービスを間借りしてお試し販売をした。お客さんはデイサービス利用者だった。70歳代から90歳くらいの女性だったが、「ふゎふゎで味がしない。美味しくない」と不評だった。めげずに都内のマルシェに出店した。

銀座マルシェ

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いきなり銀座のど真ん中で始めた。かなり残ってしまったが度胸はついた。懲りずに次は日本橋の復興市マルシェ。↓

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この時は大勢のお客さんが来て完売。少し自信がついて以後あちこちのマルシェに出店した。

海老名イベント

カットしたシフォンを一つだけ買っていったお客さんがすぐ戻ってきた。クレームかと身構えたが「美味しかったから全種類2個ずつ頂戴!」と言われたときは本当にびっくりした。続けて良かったと思った。
 1年後お店をオープンした。その時はシフォンの種類はプレーン、紅茶、オレンジなど6種類の品揃えになっていて、それなりに売れていた。大岡川沿いで毎年桜祭りがあり、桜シフォンを作ることになった。

桜シフォンケーキ ↓

さくらシフォン

桜葉の塩漬けを細かく刻み込んだ季節限定シフォンは、桜の香り・塩味がきび砂糖のほんのりとした甘さと絶妙にマッチしていて、多くのお客さんに好評だった。買って帰られる時のお客さんの笑顔を見るのがとても嬉しかった。季節モノは、レモン、マロン、カボチャなどで、季節毎に交わすお客さんとの話は楽しいひとときだ。
 小学校の総合学習の一環として生徒さんたちと教室でシフォン作りをした。テーブルや床にメレンゲが飛び散り蜂の巣をつついたような騒ぎになり、黄色い声が響きわたって楽しい思い出だ。
 ある時、知人からシフォンケーキ教室を勧められ、喜んでもらえるならと始めた。20回以上やったと思うが、みんなでケーキを作り、焼き上がるまでの待ち時間にランチしてお好みのケーキでお茶しながら雑談をするのは至福のひとときだ。

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 アンケートを書いてもらうのだが「小麦粉よりずっと簡単だった」という感想に紛れて、「今まで食べた中で一番美味しかった」とか「我が家の宝としてレシピを娘に引き継ぎます」とか「全国を食べ歩いて、ようやく巡り会えた味覚」など思いがけない言葉をいただいた。社交辞令だと思うが、伝える方としてこれほど嬉しいことはない。
その後も起業を目指す人に伝えて、何人かがお店を持ったりマルシェで販売してくれている。

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 私はお店を閉めて今は作っていないが、美味しかったから自分で作りたいという人たちが、家族に食べさせたりお客さんに提供してくれていることを思うと感慨深い。ひょんなきっかけから始めたケーキ作りが、素敵なレシピとお客さんに支えられて、第2の人生を豊かにしてもらえた。



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