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価格設定について(中編)

(こちらの記事は2021年9月に掲載されたものの再投稿となります。)

前回(「価格設定について 前編」)に引き続き「価格設定における注意点」を述べていきますが、その前に私がここで価格について「高く設定すべし」等を謳ってることは何も大上段から殿様商売的に言ってるわけではなく、私のお店自体が実は現在進行形で卸元からさらなる値上げ通知が来て凹んでいるところでありまして、前回ここで10月1日からの値上げの告知文書も紹介しましたが、そこではつまり「10円~20円」の値上げに対してああいった正式表明文を重々しく書いたわけですが、卸元は「10円20円」の話ではない実に10%以上の値上げ要求をしてきたところで、まぁこれも嫌がらせでも何でもなく世界的コーヒー情勢というのに起因しているためやむを得ない話であるとはいえ、はい、大いに凹んでいます・・・。

ここで愚痴を言うつもりはなくて、言いたいことはつまり「私の店も現在進行形で値上げによる世間の強風にさらされている」という状況下でこれを書いているということで共に頑張りましょう。

最初にまず言えることは珈琲文明が「創業時」即ち、スタートの最初の時点でコーヒー1杯600円で始めたということがその後現在に至るまで本当に助かったなぁという実感です。

さて、そこで前回の続きになりますが、「そうはいっても都心と地方じゃ違うっしょ」という点についてまずは述べていきます。

ここ指南書をズズズイ~っと遡って「高価格帯にビビらない」、ぜひこちらも必ず一読してほしいのですが、そこで述べたことの繰り返しになりますが、私の前職学習塾は全国に当時で1,500以上(現在は2,000を超えています)の教室がある国内最大の学習塾チェーンを展開していたわけですが、東京都心一等地にある教室も地方にある教室も一律で同じ月謝でした。


実際私がまず入社当時副教室長(という名の雑用係)をしていたのは目黒区池尻大橋(渋谷のすぐ隣の駅)という「ここ家賃いくらよ!?」みたいなとんでもない都会でそこの生徒も芸能人の子供もしくは生徒自体が芸能人っていう子もいました。

その後私が正式に教室長として赴任したのが打って変わって山梨県の大月、その後に富士吉田市という地方でした。

富士吉田市の全人口で5万人、つまり東京ドームのライブ1回分であります(笑)。

「都心と同じ月謝だし、保護者は受け入れないだろうなぁ」とかそういう気持ちはもちろんありつつもだからといって値下げするという選択の余地もなかったこともあり当然そのままの月謝で運営していました。

結果論ではありますが私の富士吉田教室はその前に副教室長をやっていた目黒の教室の生徒数も売上も抜き、全国表彰もされました。

ここで言いたいことは自慢話ではなく、私が塾のオーナーではなく、雇われの身(居酒屋の店長みたいなものです)であったことで、「値下げをしなきゃ」などの考えをする余地すらなかったということと、それゆえ「このままの価格でいかに勝負するか」というほうにひたすら知恵を絞ったということであります。

教室のトイレをホテルやカフェのようにほんのり照らす間接照明にしてみたり、来た生徒と帰る生徒(もしくは保護者も含む)には講師たちも含め全員で(仮に授業中であったとしても)その都度「こんにちは、さようなら」と挨拶するように取り決めたり(そんな決まりは本部からは言われていなかったけど)、特に意味もなく御用聞きのように保護者に電話連絡をしたり(時代もあるんで今がそれが良いかは別です)、有益な受験情報や自身のコラムをお手紙にしたり、色々としてみました。

近隣にあった昔ながらの集団教室の塾の先生方は概ねハイテンションで熱血指導系で、生徒もわんぱく揃いだった感じで、なんとなく私の教室の講師や生徒とはすみ分けが起きていたように思います。

話が逸れそうなので戻しますと、「値下げ」等の考えはハナからなく与えられた条件でやってみて成果をあげられたことが、その後自分自身が(業種は異なれど)今度はオーナーとなった今、「安売りで勝負」ということをしなくなった、なれた、ということがよかったと思っています。

もちろん、オーナーとして(オーナーだからこそ)の怖さもありました。

創業前に、関西にいる中学時代からの親友(彼は某コーヒーメーカーに勤務していました)に「コーヒーは1杯600円でいこうと思う」と伝えると、「あかんて!とんでもないわそんなん、500円でもみんな怒るで、悪いことは言わんからやめときや、ほんでモーニングするんや、トースト出してゆで卵つけて、そないして単価上げんとあかんて」と矢継ぎ早に反論が来たのを覚えています。

もちろんその友人は自身が仕事で日々多くの喫茶店に豆を卸して歩いて、各店が苦戦する様をリアルに見てきているだけに親身になって助言してくれたのも本当によくわかりますが、それをそのまま受け入れていたならばやはり私のお店はその友人が日々見てきている苦戦する喫茶店になっていたという結果が待っていただけだったように思います。

ここでさらにこんな声にお答えします「いやいや、5万人なんていいほうだよ、うちの町なんて数千人いるかどうか・・・」という方、きっといらっしゃいますよね?これまた大上段から言うのではなく私自身がもしも今実際にこれらの過疎化の地方にカフェを開くとなった場合、という強烈に私事として真剣にシミュレーションしてみますね。


まず、コーヒー1杯あたり600円といかないまでも絶対に500円にはします。

はい、どんなに田舎だろうが、そこに現存する喫茶店や食堂では300円とか400円とかでコーヒーを提供していようがです。

もう少し細かい話までしてしまうと(私事だし)520円とかにします(この辺の話は次回します)。


そして、スイーツをなるべく自家製で頑張って、さらに仕入れの冷凍ケーキも数種導入します。

仕入れのケーキの場合は仕入れ額に100円~せいぜい150円上乗せするにとどめます。

ランチはやりませんが、どうしてもフードを入れたい場合はサンドウィッチ(自家製)にします(「サンドウィッチ」は飲み物が飲みたくてしょうがなくなるためきっとドリンクもオーダーされるはずだから)。

あ、でもこれ私事でしたね、であればここはやはりカレーパンを出します(笑)。


ここで赤澤メソッドでの単価測定の話を思い出してください(他のあらゆる書物で私の知る限りまだ言われておらず、私自身が多くのお店や店主への調査統計により算出した数値、これまた過去の指南書を遡ってください)。

そのお店の単価=そのお店のメインドリンクの値段×1.2

でしたね。

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