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価格設定について(前編)

(こちらの記事は2021年9月に掲載されたものの再投稿となります。)

今回はメニューの価格設定について述べていきます。

個人店が生き残るために絶対にやってはいけないことが「薄利多売」、つまり安くたくさん売るという手法であり、これはチェーン店にかなうわけがないし、「多売」のほうにしてもワンオペの自営業がそんなに多く売りさばくことはそもそも不可能なのと、可能だとしてもそれは一時的であり、ここカフェラボの根幹である「黒字で長く続ける」というスタンスには絶対的に不向きなのであります。

それから、これも重要なのですが、肝心のお客さん側の心理としましても「チェーン店じゃなく個人店なんだから高くてもしょうがないか」って思っているものです。

さらにもっといえば「価格がチェーン店と同じのここの個人店は商品の質がそんなに高くないのではないか」とまで思われてしまう恐れさえあります。

チェーン店と個人店の間ではいい感じの「価格すみ分け」というものが必然的に起こっているものなのです。

チェーン店が商品を安く出来る理由は特にここで説明しなくても皆さんなんとなくおわかりだと思いますので(大規模ロットで原料を仕入れられる、セントラルキッチンの存在等)省きますが、実はチェーン店は安売りは得意なのですが、「高く売る」ことは避けようとします。

チェーン店が「良いものを安く」という言葉が比較的当てはまっているのも事実(単に数の論理や企業努力により)なのですが、私が言いたいのはこのエリアよりもさらに高みの部分の話になります。

つまり「物凄い良いものを高く売る」ということが構造上難しいのです。

具体的にコーヒーの話で説明しますね。

コーヒーは嗜好品である以上「物凄いおいしいコーヒー」という定義はなかなか難しいものではありますが、そこを敢えて「国際品評会で認められたコーヒー=美味しい」とここでは乱暴に決めてみます(レコード大賞や芥川賞直木賞受賞した作品が良いとは限らないと同様にコーヒーももちろんそれが美味しいかどうかなんてわかりませんがそこはここでは無視します)。

この「国際品評会で受賞したコーヒー」というのは結果的にほとんどが小規模農家さんによる農園であることが多いのです。

そしてこれらの優秀農園のコーヒーをチェーン店が落札することはもちろん可能です。

でもそれをいくら高価で販売しようとも絶対数が少ないわけでそのチェーン店全体で扱う量すらなく、一部の店舗でのみ扱うことになったとしても下手すりゃたった一日で販売終了してしまうくらいの量だと思います。

これではチェーン店にとってはなんのウマ味もありません。

ブラジルでは九州と同じくらいの面積の農園があると聞きます。

そんな農園を動かしていくためにはやはりそれなりのスケールが必要であり、農薬もヘリコプターで一斉散布といったレベルになってきます。

でも例えばこういう手法により育ったコーヒーが「物凄く美味しい」という可能性だってあるにも関わらず、結果的に受賞するコーヒーにそういうところの豆が無いというのはなんだか「神は細部に宿る」的な感じで私は好きです。

いや、好きとか嫌いの話ではなく、扱う商品がもし「コーヒー」などの作物ではなく、自動車や電化製品等になるとこのすみ分けが起こらず、「物凄く良いもの」までが大手チェーン店が手掛けて商売としても成立してしまったりします。

そんなわけで飲食店は大手と個人それぞれの聖域というものがあってそこを侵すべきではないのです(というかお互い異なる聖域で勝負したらどちらも負けます)。

それからこれも押さえておかねばならないポイントとして、個人店は「良いモノを高く」ではやはり勝負が厳しい世の中になってきています。

というのも、大手チェーンが異なる業態で実は高級ブランドを出店していたりします。

トヨタのレクサスなんかはわかりやすいですが、飲食店でもドトールコーヒーがエクセルシオール、タリーズが倉式コーヒー(あんまり知られてない?)等いろいろ展開して、しかも「良いもの(美味しいもの)が適正価格で」売られているため個人店も苦戦を強いられてきています。

なのでここはやはり「すごく良いもの(美味しいもの)を高く」という部分が空席となり、そここそが個人店の「聖域」なのです。

さて、ここでまず「すごく良いもの」に関してですが、例えばコーヒーは「スペシャルティコーヒー」であるとか、お米ならコシヒカリ、肉は松坂牛とか単にハイグレードなものというのはもちろんわかりやすい話なのでありますが、当然仕入れ価格も高くなります。

こうした高品質系のものを仕入れるというのももちろんわかりやすくて良いのですが、もっと大事な話をします。

それは「注文を受けてから豆を挽く」や「鮮度が古くなった豆は絶対使わず勇気を出して廃棄、もしくは異なる使途(消臭剤等)に利用する」ということを徹底することです。

これにはお金がかかりません(廃棄ロスはあるかもしれませんが)。

例えば珈琲文明と一緒に、というより断然こっちのほうがメインの店としてドラマ「孤独のグルメ」で舞台となった近所の「キッチン友」さんの「スペシャル友風焼き」は注文があってから玉ねぎを切るところからスタートしたり、サラダのマヨネーズも自家製です。

もちろん手間暇はかかるし、提供時間だってその分長くなりお客さんを待たせることになりますが、でも逆にいえばこういう部分はだからこそ大手が手を出してこない「聖域」となり得るのです。

それから先ほど述べた「原料に高価なものを使う」ということに関して重要なことを補足します。

それは、その店舗の「全ての商品に高価なモノを使うというわけではない」ということです。

あくまでもその店の主力、根幹、四番バッターの商品にしっかりとかけるということです(このへんの話の詳細はまた次回ゆっくり述べます)。

さて、「うん、わ、わかった、頑張って安売りしないで高い値段にしてみるよ」って思った人が今思っていることを当ててみましょうか?

「高い値段って言っても具体的にどれくらいを高いというのか」

「さすがに東京都心と田舎では違うだろう、うちは地方だからやっぱりあんまり高いのは怖いなぁ」

この2つじゃないですか?きっと当たりですよね?なんでわかるかというと私がもちろんそういう考えだったからです。

それぞれに説明していきますね。

まず「高いつってもどれくらいの値段を高いっていうの?」の話ですが、これはもちろんその商品の統計的平均値を探るのです。

コーヒーの場合はファミレスやチェーン店から高級店まで全てひっくるめて(※さすがにコンビニは省くはず)400円とされていますので、400円以上であれば「高い」とはなると思います。

しかし、もう少しコーヒー以外のいろんな商品のことも知りたいと思いますので、以下に珈琲文明の全メニューラインナップ価格構成を一挙公開します!

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