Posh Boys

Posh Boys
How the English public schools ruin Britain
Robert Verkaik

この本を読まずして、イギリスの教育は語れない。

この題名 Posh boys とはイギリスのパブリックスクール(私立学校)で学んだ人たちのこと。

そしてこのサブタイトル
How the English public schools ruin Britain
いかにイングランドのパブリックスクールがイギリスを台無しにするか

イギリスは
United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland 
が正式の国名で、
Great Britain(Britain)はイングランド、スコットランドとウェールズの3か国からなる。

よってこのサブタイトルは、イングランドにあるパブリックスクールが
イギリス全体をダメにすると言っているのだ。

世界中がパンデミックと騒いでいたころと時を同じくして、
一部のパブリックスクールは
海外進出に精を出していた。

そう、イギリスに留学しなくても
自分の暮らしている国でイギリスの教育が受けられるという売りで
せっせと海外校を開校していた。

幼い子供を海外留学させる財力のある家はそれこそ世界中にあり、
でも子供を一人で海外留学させることに抵抗のある
(ある意味良識のある)親にとっては
この海外進出は願ったりかなったりだった。

この本で根本的に問題とされているのは
これらの有名パブリックスクールが
チャリティー団体であるというところだ。

パブリックスクールの成り立ちについてはこの本に詳しく書いてあるが、
そもそもの始まりは
金持ちが金を払って子供に教育を受けさせるのがパブリックスクールの始まりだったわけだけど、
そのうち貧乏な子供にも教育の機会をということで
余裕のある人たちが学校に寄付をして
お金のない子供たちに教育の機会を与えていたことがそもそものパブリックスクールという名前の由来。

だから始まりはチャリティーではあったんだけど。

今はそれこそ英国の平均的な一般人の年収を上回る年間授業料を徴収し、
ビジネスではなくチャリティーであることを言い訳に
税金逃れをしている、というところが問題になっている。

もう一つはクラス。

イギリスは階級社会だというのは聞いたことがあるかもしれないけど、
それは今でも本当にそうで、
それはそもそも今でもパブリックスクールが昔と変わらず教育機関として成り立っていることからもわかる。

要するに、パブリックスクールはミドルクラス以上の家庭の子供たちが集まるところで
公立学校(ステートスクール)に通う子供たちとは家庭環境が全く違うのだ。

いくら奨学金をもらってパブリックスクールに通えたとしても、
もともとその環境で育った子供たちとうまくやっていくには
それなりの努力が必要になるのかもしれない。

この本にもちらっと書いてあることだけど、
ずっとパブリックスクールで学んできた子が
大学に行って初めて「一般人」と交わることになる、と。

平民の生活しか知らない私にしてみれば
それこそ信じられない感覚だが、
彼らから見た私たち一般人というのは
文字通り、遠い世界にいる別の人種のような感覚なんだろうと思う。

それから、面白いなと思ったことをひとつ。

日本では出身大学で人を見るようなところがあると思うけど、
イギリスではどこの大学に行ったかよりも
どのパブリックスクール出身かということのほうが重要らしい。

とにかく、パブリックスクールのネットワークというのが
おそろしく強いらしいのだ。

つまるところ、パブリックスクールに行くメリットは
いい教育を受けるためというよりも
ネットワークづくりといったほうがいいのかもしれない。

これは政治もビジネスもおそらくほとんど
この私たち一般人の知りえないパブリックスクールネットワークで出来上がっているといえるのかもしれない。

同時に無視できない問題もある。

虐待だ。

パブリックスクールの一部はボーディングスクール(寄宿)でもあり、
下は8歳くらいから、上は18歳くらいまで学校で暮らしている。

親の目がないため、学校も子供たちもある意味やりたい放題なのだ。

親と引き離されて心もとないのに
先生やスタッフから虐待を受けることもまれではない。

さらには上級生たちからのいじめもある。

今はだいぶ改善されたと一部の人たちは言っているが、
だいたい幼い子供を見知らぬ大人に託すということ自体、
子供にとっては相当トラウマ的体験であろうことは想像に難くない。

イギリスの首相になる人たちは大概このパブリックスクール出身者なので
国民の声なんて、まったく聴く耳を持たない。

それだけではなく、お役所で働く人たち、
ビジネスのトップやショービズまで
パブリックスクール出身者はたくさんいる。

日本でも知られたパブリックスクール出身の有名人は
Virgin Atranticの リチャード ブランソン
元英国首相 トニー ブレア
俳優の ベネディクト カンバーバッチ
など。

私は今のところ、パブリックスクール出身という人と仲良くなったことはないんだけど、
でもだいたいテレビとか見てると、しゃべり方で分かるような気がする。

それはアクセントではなくて、しゃべり方、
文章の組み立て方とか、言葉の選び方とか、かな。

日本からもイギリスのボーディングスクールに留学している子たちがいるけど、
その親たちは一体どんな情報をもとにその学校が一番その子にあっていると決めたんだろうか?

聞いてみたい。

この本を読んでたら、おそらく違う選択をしてたかもしれないな。