スクールトラウマ

カウンセリングを学んでいたこともあり、
トラウマについては長い間勉強してきた。

だから、トラウマについての知識は
それなりにあると思っていた。

たとえば、ふいに襲われたとか、想定外の事故にあったとか。
出産、嘔吐、手術や
はてはネグレクトや学校でいじめにあっていたとか。

こういうことが原因でトラウマになるという認識はあった。

ところが、この一年くらいで
まったく新しいトラウマの原因に出くわした。

スクールトラウマ

日本に住んでいないので、日本の現状は知らないが、
イギリスなど英語圏では
school traumaという表現が存在する。

そもそもこの言葉を知るきっかけは
子供の不登校だった。

イギリスでは現在、不登校の子供の数が
年々増えており、社会問題となっている。

特に3年前のロックダウン後に、急激に増えている。

不登校の原因はもちろん個々にいろいろあるわけだけど、
私が今、色々調べた結果落ち着いた結論は、

学校側のシステムが、子供に合っていない。
ということ。

イギリスのセカンダリースクール
(日本の中学と高校に相当)というのは
小学校と打って変わって
急にいろんなルールが厳しくなる。

制服やお化粧などの定番の規則から始まり、
授業に使うペンの色だったり
必要な持ち物についてものすごく細かく指示がある。

遅刻についてもとても厳しく
娘の学校では
一分でも遅刻したら15分の居残り。

20分以上遅れたら1時間の居残り。

宿題ひとつ忘れたらこれも1時間の居残り。

(私が友人たちから聞いた他の学校情報によると
娘の学校は特に厳しかったということが判明した)

先生たちも、これらの罰が
なんの変化も起こさないということは
百も承知で、この悪習を何十年と続けている。

この悪習の被害を受けているのは
まぎれもなくその学校に通う子供たち。

(と、一部の先生たち。
この悪習に抵抗する先生たちは
職場を去る、という選択肢しかない。
だから万年、先生不足)

ここにおもしろい実験をした報告がある。

WE USED SCHOOL RULES, A BEHAVIOUR CHART AND STICKERS ON ADULTS - HERE IS WHAT HAPPENED
(Written by Hanna, Clinical Psychologist at Spectrum Gaming)

校則、行動チャートとステッカーを大人に対して使ったー
何が起こったのかについての報告。

興味のある人はぜひ読んでみてほしい。

I was quickly reminded that young people often don’t have the option to opt out of compliance based systems.
私はすぐに、若者にはコンプライアンスベースのシステムを断る選択肢がないことが多いことに気づきました。

ここに書かれているように、
学校にいる子供たちは校則に従って当たり前、という前提が大人側にあり
交渉の余地、選択の余地がないことが
子供たちに多大なストレスとなっているであろうことが想像できる。
(実際自分はそうだった)

さらに、その子供たちの中でも
どんなルールでも受け入れて
それなりにうまくやっていける子供もいる中で、

どうしてもそのルールからはみ出てしまう子供たちも一定数いる。

これは、今も昔も変わらない。

ここで、発達障害という概念が、これを考えるうえで必要になってくる。

クラスの半分はニューロダイバージェント(ND)という現在、
(診断あるなしにかかわらず、グレーゾーンも含まれる)
こういう子供たちに対応した学校のシステム改革が早急に必要なのに、
何が何でも出席率を上げる、というまったく見当違いの政府の政策は
多くの保護者の反感をかった。

むりやり毎日、学校に連れていかれた子供たちは
当然、それがトラウマになる。

また、学校へは抵抗なく通っていたものの、
実はその環境に耐えがたいストレスを抱えていて、
でもそれを言語化できない子供たちもいる。
(娘がまさにこれだった)

そのトラウマからの復活は、またそれぞれ個人差があるが
年単位でかかる場合も多いと聞く。

イギリスの場合、ホームエデュケーションが認められているので、
これがまた、すごい勢いで増えている。

ちなみに、イギリスではホームエデュケーションが正式な言い方。
ホームスクールはたぶんアメリカ英語で、
イギリスでホームスクールというと、学校に属していて
家で学校の勉強をすることを言う。

私の娘もつい2週間くらい前に
正式に学校を自主退学した。

これで、学校の休みに左右されることなく
旅行に行けるというメリットがある反面、

不登校になった娘に対して
何もサポートをしてくれなった学校に対しては
今でももやもやする。

娘は学校に友達もいたし、
勉強もそれなりにできていた。

本当だったら、楽しい学校生活を送っているはずだった。

しかし、それは学校の環境が娘に合わなかったために
かなわなかったのだ。

それでも学校は、娘のニーズを満たすことを優先せずに
何が何でも出席率を上げることだけにこだわり続けた。

その結果が、不登校から自主退学という
もうそれ以外選択肢がないという状況での選択となった。

(その間にそれを決定づけた事件があるんだけど、それはまた別の機会に)

ということで。

私も子供のころ(特に中学時代)を振り返れば、
あんな環境でよく生きていたな、と思えるくらい
ひどい状況だったけど、
ほんとうに何も言える状態ではなかった。

いや、私の場合、
誰かに何かを言うという発想自体が完全に欠落していたので
一人でもがくしか選択肢がなかった。

それに加えて、最近気づいたことは
自分もNDだということ。

NDたちが平和に過ごせる学校は、イギリスにもあるには、ある。

でも、探せばあるじゃなくて、
どんな公立の学校も、
子供も先生も等しく平和に過ごせる場にならないものかと切に願う。






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