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実家で年越し

今回の年越しは、10年以上ぶりに実家で過ごしました。

実家では例年、母と姉が年末年始の料理に奮闘しているのですが、今年はわたしも助っ人に参上。助っ人といっても、これまで長年築き上げられた母と姉の大仕事に、急遽駆り出されたバイトみたいなものです。

取り組むのは、お年取料理(大晦日のご馳走)とおせち料理。
材料の買い出しから姉が主導権を握って奔走しておりました。

「お母さんの担当はおせちの定番くらいで、だいたいお姉ちゃんがいつもやってくれるの。ほとんどお任せ。楽になったよー」と社長のように構える母。
そこで直属の上司となる姉に「何作るの?」とバイト(わたし)が尋ねると、「コレ作るから」とズラッといくつも付箋がつけられた料理本を差し出す姉。どうやら付箋が付いたページの料理をすべて作る予定らしい。

「うわぁ~みんな美味しそうだね! すご~~い、コレ全部作ったことあるの?」と聞くと、「イヤ、全然ひとつも作ったことない」と言い切る上司の課長(姉)に、一抹の不安を抱くバイト(わたし)。

「さあ、始めるよー。やること一杯あるから忙しいよ~」という社長(母)の掛け声で料理作りがスタートします。課長(姉)から段取りを指示されて、「ハイッ!」と元気よく取り組むバイト(わたし)。

だいたい野菜を剥いたり刻んだり巻いたり衣つけたり、次々と発生する洗い物を片付けたりという作業が下っ端バイトであるわたしの役目。

課長とバイトがそれぞれの仕事に没頭していると、社長は隣の部屋で他の作業をしながら「そうだ〇〇はね、冷蔵庫のあそこにあるからそれ使って。わかった?」とか「あと〇〇はもうやった? ねえ?」とか、現場を見ずに思いついたことを思いついた時にガンガンに突っ込んでくるので、そのたびに「今やってます!」「今ちょっと無理!」「それ今関係ない」などとキレ気味に答える課長と、オロオロするバイト。

そうこうするうちに、課長から「じゃあこの料理はやって」と刻み仕事以外の過程をお任せいただいたバイト。
そこでレシピをにらんで「ふむふむ、まずゴボウと人参を茹でて5分で人参を出して、ゴボウはさらに5分茹でて、最後にさやいんげんを入れて2分か……」と呟きながら野菜を茹でる手順を確認していると、「そんなの、全部一緒に茹でちゃえばいいんだよ」と課長。

「え、でも野菜ごとに火の通りと歯ごたえが違うから……(そこ結構大事な気が)」と反論を試みるも、「変わんないって!」と手抜きを囁くアバウトな課長。

全体を把握せずに自分の言いたいことを自分のタイミングで言う社長と、全体を把握しているけれど細かいところで雑さをみせる課長の板挟みになるバイトの図。

それでも、社長は時間を見計らってみんなの食事やおやつを用意したり、課長とバイトの間に亀裂が入らないよう声をかけたりして、社員が気持ちよく働けるよう場の雰囲気を整えます。

だけど、食事の間もせっかちな社長は「アレはどうなってる?」「そろそろアレやった方がいい」などと急かすため、課長とバイトから「今まだ昼休憩中なんですけど!」「ブラック実家だな」と訴えられます。

そうやって3人がかりで無事年末年始の料理が出来上がりました。
おせちは買うと何万もするものがあるけれど、この手間と時間と人件費を考えれば(かけているならば)全然高くないなと思います。
そして、料理する以前の「献立や材料調達、段取りを考える」という工程を抜きに、与えられた作業だけに没頭する立場はなんて楽なんだろうと思いました。
時おりウロウロと台所をうろつきつつも料理には一切加わらない、食べるほう専門の部長(父)も存在していたことも付け加えておきます。

久しぶりに、実家で新年を迎えた2022~2023年でした。

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