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『生き物の死にざま』稲垣栄洋 著

カフェ店主おすすめの一冊と、個人的に気に入っているツボをご紹介します。
珈琲片手にぜひどうぞ。

このたびご紹介するのは、昆虫から哺乳類まで様々な生き物が懸命に生きる姿とその最期を描くエッセイ『生き物の死にざま』(稲垣栄洋 著)です。

産んだ卵を世話して守り続けたうえ、自らの体を孵化した幼虫の餌として差し出すハサミムシ。交尾中にもメスに食べられるカマキリのオス。精巣だけを異様に発達させてメスの体に寄生し、その一部となってまさにヒモ状態で生きたのち、最期はそのままメスの体に吸収されて消えていくチョウチンアンコウのオス。集団で役割分担社会を築くアリやハチ、アブラムシも、その最期は階級にかかわらず等しく孤独な運命が待ち受けます。

どんな生き物も、種を絶やさないという「命のバトン」をつなぐため、長い歴史の中で編み出したそれぞれの戦略にしたがって、必死に、ひたむきに、精一杯生き抜く。そして最期の時を迎えるのは、遺伝子にプログラムされた使命を終えた時。あるいは怪我や病気で弱った時、他の動物に襲われた時、不慮の事故の時。
そう、人間も同じなのです。自分にはどんな使命がプログラムされているのだろう、とふと考えてしまいます。

それにしても、こういった生き物の生態ってだいたいメスが勇ましくてオスが哀れで切ないなあ、面白いわーなんて思っていると、本書の終盤に肝心のツボの登場です。
この一冊のツボは、全29章=29の生き物の中の第25章「ニワトリ」以降の5章=5つの生き物の死にざまです。ぜひともオモシロ話で終わらずに最後まで読んでいただきたい重要なポイント。

この本には載っていないけれど、罪深い「人間」という生き物の死にざまは果たしてどんなものになるのでしょう。
希望と絶望を抱いて冬の空を仰ぎたくなる一冊、ぜひどうぞ。

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