赤界

　夜空は亡霊たちの祝祭で
　無数のミトコンドリアが昇っていく
　白い光を放ちながら

　一、ニ、三の合図で重なって
　すべての生き物はことばを失い
　手足を伸ばしながら裏返った

　赤い光線が心臓を撃ち抜いた
　瞼を閉じても燐光が灼きつける
　あの日の夕さりのように


　平行線を蔦って饗宴に向かう
　にんじんの槍を持ったうさぎさんが
　深紅の瞳でこっちを見ている

　話しかけても　ピクリともしない
　こりゃダメだ　諦めようか
　ああそうか　はじめから死んでた

　ここには深緋色の花が咲くのね
　肩を組んで並んでいるけど
　私のことを笑っているのかい？

　今はもう誰も　ここにはいない
　土星の輪っかにぶら下がったりもするよ　
　どこかで　君にみててほしいからさ

　花を胸に携えて
　破れた心臓を動かしながら
　土の中で待ってるね