主星と伴星




人間は恋愛が好きだなあ。もうすぐ神様もどきどきするほどの熱い恋がそこらじゅうで芽生え始める。そうだったらいいなって思ってる。
だけど私は、あなたに恋してない。恋されたいとも思わない。私があなたに抱くこの複雑な感情をどんな言葉で美化しようとしてもそれはやっぱり恋ではないんだ。私はあなたと戦っている。同じものと対峙しているんじゃない。私とあなたが戦っている。
これはきっとどこまで自分の弱さを誤魔化すのかという話なんだ。そして結局はどこまで孤独に耐えられるのかという話なんだ。
こんな問題は私だけに起こっていることじゃない。でもこれは私の問題だ。だって私の目の前で起こっていることだから。
最初は息ができなくなったらいつもみたいにそこから立ち去ればいいだけだと思ってたし、何かを克服する気なんてこれっぽっちもなかった。だけど今は「また逃げることになるよ」とあなたが言うし、「絶望しても言い続ける」と宣言するし、私も戦わなければ死んでしまうから戦い続ける。だから私はあなたに全力でしがみついたまま放してくれと懇願したりするのかもしれない。
あなたの存在さえ消し去ればまた浅薄な恋愛くらいはできるようになるんじゃないかと淡い期待を抱いていたけどそれは私の妄想だ。もうここまできたらあなたに勝たないと人を好きになる資格なんて二度とこの手に返ってこない気がする。
あなたを相手に戦うことに限らず、そして私の問題に限らず、もしも人がどこまでも孤独に耐えることができるなら、たとえ相手に何の感情も抱いてもらえなくとも、自分だけがその人を好きでいるだけでじゅうぶん安らぎを感じられたはず。愛したいから愛する。それだけでよかったはず。誰かを好きでいることにこんなに戸惑ったりしなくて済んだはず。
私は何にでも意味があると思いたい。そうじゃないと困る。人が孤独を選びながら他者や自分の中に愛情を探そうとすることにも絶対に意味があるって信じたい。私達は偶然の重なりの果てに生きているだけじゃないんだって、いつかは思い出もろとも闇に消えてしまうだけの存在じゃないんだって。

やはり人は星だと思う。誰もが宇宙の星なんだと思う。

私はなんとなく生きていたら気づいたときにはあなたの強すぎる引力に引っ張られてぐるぐる回ってた。あなたは強すぎる。いつか引力を上回った遠心力でぶん投げられるんじゃないかと思う。でもそれまでは同じ軌道の上にいさせてください。
でもいつか絶対ぶん投げられる。だからいつも、ちょっと悲しい。



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