腐っても鯛
「腐っても鯛」ということわざ、一度は聞いたことがあるかと思います。
広辞苑でこの言葉を調べると、「本来すぐれた価値を持つものは、おちぶれてもそれなりの値打ちがあることのたとえ。」とあり、大辞林には「本来上等なものは,たとえ腐ってもその品格を失わない。」とあります。
ということは、すでになんとなく腐っている、もしくは腐りかけている状態ってこと?
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さらにこの言葉の由来を調べると以下のように書いてありました。
腐っても鯛の語源は、「めでたい」の響きから縁起がよいとされ、仮に腐ったとしても、おめでたい鯛に変わりはないことから由来したとされている。
鯛は他の魚に比べて腐りにくく、多少悪くなっても食べられる魚であることから、優れたものは痛んでもそれなりの値打ちを保つことができる例えとして、用いられるようになったとも言われている。
これを見た時に「んなことあるかいッ!」って思わず笑ってしまいました。
板前的にダメ出ししたいところだらけだからです。
まず「めでたい」に関してはいいでしょう。
日本料理は語呂に合わせて様々な当て字を使う場面があります。
特にお祝い事ですね。
炊き合わせ→多喜合わせ
焼き物→家喜物
焙烙焼き→宝楽焼き
豆腐→豆富
するめ→寿留女
鱚(きす)→喜寿
etc…
問題はその次です。
「腐っても鯛には変わりない」ってどんな屁理屈だよって感じですよね。
その次も「鯛は他の魚に比べて腐りにくい」なんて聞いたことないですよ(笑)
多少悪くなっても食べられるっていうのももはやギャンブルと一緒じゃないですか。
食べてなんともなければラッキー的な…
むしろその逆で、「たとえ過去に優れていたとしても、落ちぶれたり腐ってしまえばなんの価値も持たない」というのが本来の正解なんじゃないか思えてなりません。
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話を戻しますと、板前的にこの「腐っても鯛」を解釈すると別の意味を感じます。
それは鯛という魚の汎用性の高さです。
むしろこっちの方が本来の意味では?とさえ思ってしまいます。
その汎用性とは具体的に何かというと、まず我々板前が魚を買う時に頭に置くのが生食、つまり「刺身で食べられるかどうか」ということがポイントになってきます。
それはイコール鮮度が良いかどうかということです。
当然ですが、生で使えるものは火を入れても使えます。
その次から塩焼き→漬け焼き(味噌漬け、しょうゆ漬け等)→揚げ物となります。
※ちなみに鮮度に関係なく最初から焼き物向き、揚げ物向きの魚もいます。
今回はあくまでも鮮度ごとの調理法としての場合です。
そして鯛に関して言えば、さらに吸い物や煮物など、お出汁を味わう料理にも使えるという点でも価値が高くなります。
だから、「腐っても鯛」とは“腐るまで幅広く使い道がある”ことから「腐ってもなお鯛が良いと評される」という意味だと思うのです。
どの段階でも使い勝手が良く、味は上品で脂ものっているため、何に仕立ててもオールマイティ。まさに「魚の王様」と言える魚なのです。
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最近は鯛のようなマルチプレイヤー的な人材より、専門的な知識やスキルを持った特化型の人が重宝されるようです。
企業も必要な人材をその都度リモートワークで募集したりするようなところもあるみたいですね。
それも時代の流れと言われてしまえばそれまでですが、これからも組織というのは専門的なスキルに限らず、コミュニケーション能力なども非常に重要だと思うんです。
お客さんに対してもそうですが、社内の仲間に対しても。
リモートワークが主流になるこれからの時代こそ、組織を円滑にまわしていくには鯛のようなマルチプレイヤーが重宝しないのでしょうか?
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我々の業界もAIの波は確実にやってきています。
対お客さんに対してももちろん、従業員同士の感染拡大を防ぐためにも出来るだけ少ない人員でのオペレーションが急務とされているからです。
今後はムードメーカーと言われる人や、怒られ役。
生真面目な人やおっちょこちょいな人の活躍の場はこれから減る一方なのでしょうか?
そんな店はなんだかつまんない気がします。
AI主体のお店だとしたらなおさらそこで働く人間の価値が問われるはずです。
ただ業務をこなすだけの人間とロボットの店に人はどこまで魅力を感じるのでしょうか?
そのうち「AIからも好かれる人」なんていうのが採用基準になる時代が来たらと思うとがっかりです。
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「腐っても鯛」
このことわざはこれからの時代、私たちにとって二つの意味をなすのではないかと思うのです。
ひとつは広辞苑に載っているような「たとえ落ちぶれてもその価値は変わらない」という意味。
もうひとつが「汎用性の高いマルチプレイヤー」の象徴としての意味。
落ち目になってもなお自分には価値があると言い張るのか?
僕は後者としての意味を採用したいと思います。
この先あらゆる時代が来たとしてもそのたびに適応できる汎用性の高い人間。
そんな人間こそ腐っても価値のある、いや腐ることなく活躍し続ける人材なんだと思います。
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