間借りカレー地獄変~7~そして地獄の門は開く

  二升の米を炊かねばならぬ。しかし目の前には一升炊きの炊飯器。即、オーナーに相談に行くとプライベートで使っている一升炊き電気炊飯器をゲット。時間がない。全然時間がない。即焦るが焦っていると時間がすぎる。研いだ二升の米を一升ずつ分けなければならない。目の前には一合を計れる米計量コップ。とりあえず分ける。しかし濡れた米がべったべた手やコップにくっついてきちんと計れているわからない。もうすでに半べそですよ。
 時間がゴリゴリ過ぎていく。なんとかだいたい一升ずつに分けることに成功し、今度は玉ねぎを炒める。飴色になるまで割と時間がかかる。炒めつつ店内にコップなどを配置。飴色になったところでトマトを打ち込む!!トマトあるぞー!!!開けるぞ!!!缶切りがねええええええ!

 居酒屋なのだから缶切りくらいすぐに分かるところにあるだろうが。なぜ、なぜないのだ。またしてもオーナーに助けを求めると「フライヤーの近くにひっかけてある」とのこと。なぜ缶切りをフライヤーの近くに引っ掛けるのだ。店にも缶詰を保管しているコーナーがあるのだからそっちに置いておけば良いじゃないか。フライヤー付近散策!ねえよ!缶切りねえよ!再度オーナーに。このあたりから世界の理不尽さを恨み、全身から怒りが満ち溢れてくる。
 オーナーが厨房を探すと調味料入れの裏にあった。なぜそんなところに。急いで缶切りを使うが焦っているのでうまく行かない。ってかなんでこんな使いにくい缶切りやねん!時間はどんどん減っていく。トマトを深型フライパンに入れる。ああああ!あふれる!全部入らんやんけ!とりあえず適当な鍋に少し移して2つの鍋を扱うDJスタイルで調理。するとコンロの火が消えた。「このコンロ、限界近いから火が消えよるんよ。あと、最強か最弱しか無理」先に!言えよ!それに居酒屋だからこれ、使うだろうが!数分点いては消えるコンロと涙目の格闘。なんとか、なんとかカレーができそうだ。しかし今すでにオープン時間。外を見ると友達が待っている。少し待ってくれとアナウンスはしたが不安しかない。次はハンバーグ作り。今から気合で2kgのひき肉を捏ねてハンバーグを作る。必死で作るが時間が過ぎていく。なんとか成形し、焼いてカレーに入れるとすでに20分程度押している。地獄だ。

 煮込みが完了してやっとオープン。知人たちに待たせてしまったお詫びをしながらカレーの提供。今日はハンバーグが乗ったノーマルカレーのみの販売ってか無料提供。無料な代わりにオペレーションの混乱を許してもらったりフィードバックを貰う。許せ、許せと念じながらオープン!

 お客が、お客様が入ってくる。オープンに合わせて十席以上がうまる。カレー、かけるだけなのでなんとかなると思っていたが全く思い通りにならない。こぼす、乗せる物を乗せ忘れる。スプーンを出し忘れる。脳が焼けてくる。自分で人を呼んでおきながら「もう許して!限界なの!」と心が弱音を吐き続ける。人は止まらない。今日は約30人くるのだ。皿がなくなる。必死で洗って水滴を取る。コップも切れる。必死で洗う。カレーを提供する。
 フィードバック貰うなんてできねえ!しかし、皆は「うまかった!」と言葉を掛けてくれる。それを聞くたびに心と脳がクロックアップしていく。しかし体がついていかない。一升の米が吹き飛ぶ。まだ半分も来ていない。米が尽きる。次の一升を使うと同時にもう五合ほど炊飯せねば。少し待ってもらい、炊飯準備。しかし炊飯器のスイッチが入らない。なぜ!?どうして!?なんと、二台のうち一台は内部の熱が高いうちは炊飯ができない仕様だったのだ。ファアアアアアアアアック!連続炊飯が出来る炊飯器の米をポンコツに移し、そちらで炊飯。まだまだ人は来る。休む時間もない。こんな状態でマジで営業なんて出来るのか?営業日まで約半月しかないんだぞ。

 そんなこんなで混乱と狂乱のうちにプレオープンは終了した。とりあえずグダグダながら戦い切ることができた。体には鉛みたいに重たい疲労。これが、これが飲食なのか。。。

 今日は友達だけだったし、無料なので色々とお目溢しいただいたが、実戦ではそうはいかない。実戦でミスは死あるのみ。食べログではボロクソに書かれるだろうし、悪い口コミが回る。味が良いは問題ではないと考えている。その場にいて「嫌なことがなかった」そんな店がいい感じになるのだろう。そのための対策を考えねば。。。このままオープンすると、確実に死ぬ。

~続~

ヤッホー!年末だね!12/30は年内最終、12/31は阿佐ヶ谷ロフトでイベントだよ!ぜひぜひぜひぜひぜひ来てね!来れない子は。。。おしおきだ!あと、投げ銭とかく~ださい!

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