間借りカレー地獄変~4~シュマルツ

 私はキレた。キレたんだよ。おわかりですか!?

 某ヤサイアブラニンニクマシラーメン店の勢い。あのパンチ力が欲しくて私は背脂を煮込んでいた。水、醤油、ネギ、生姜、そして背脂。グズグズと煮込んでいる。部屋には脂の塊が鼻腔に侵入してきそうな香り。そして顔がテッカテカになる!テッカマン!

 二時間煮込んだ。目の前にあるのは未だ原型を留めている背脂。スプーンで切ろうにもぷるぷるしていて中々切れない。

「なんでや!こんなに煮込んでるのにあのトロットロの感じにならないじゃないか!」

 背脂、カレーの上に乗せようとしているし、これがある種のウリになると感じているので有料トッピングにする訳にはいかない。しかしここまで業務コストを掛けてしまうと無料で出すと死んでしまう。もはやここまで。奥義「死!あるのみ」の発動だ!

 しかし美味ければ心は満たされる。とりあえず妙にドゥルドゥルの脂をカレーに掛けてみた。

「うん!ぜんぜんうまくねえ!一体感が全くないぞ!」

 作戦は失敗だった。目の前には使おうにも使い道がない背脂約1kg。シンクに流すと一撃で詰まるのがわかっているのでゴミ袋に新聞紙を何枚も敷いて燃えるゴミとして出さねばならない。マズい試作をしてしまうと心が本当に折れる。食材に申し訳ないしお金や時間もすべてが無駄になる。

「ウオオオォォォァァァァー!背脂!背脂の料理ってないんか!?世界にはヨォ!」

 Welcome to INTERNET!インターネットにはすべてがある。聡明で思慮深い私はインターネットでこう検索した。

「背脂 調味料」

 ラーメンしかでねえよボケ!そっから持ってきて大失敗しとるんじゃ!インターネットなら人間の疑問に答えてくださらないかしら!?ファックですわね!?

 私は取り乱してはいない。取り乱していないのだ。もう少し、もう少し検索を深めよう。

「背脂 なりたけ 都内」

 あ!なりたけって池袋にあるんか!ギタギタのラーメン食べたいゅ。。。なるほどなるほど、次は「ラーメン wikipedia」ふむふむ!メンマってどうやって作るんだろう!?メンマをタップして読み進めよ!

 数時間後、ラーメンについて多少詳しくなった店主が台所で三角座りして泣いていたのです。外は雨。心も雨。アナタはワタシの傘になってくれるのかしら?いらねーよ!金くれや!5kg金くれ!

 しかしwikipediaで知識を深めてもなんともかんともにんともかんともである。人間は考える葦。どういう意味じゃ!またwiki。。。違う。ちーがーうーだーろ!背脂!現実逃避はやめろ!コレが決まらないとどうにもならないのはわかっているんだろうが!とりあえず調べろ!
 豚肉、そう、背脂は豚肉だ。豚肉をめっちゃ使う国はどこだろうか。中国か?「背脂 中国」ラードの作り方が出てきた。うーん、いや、そうだろうね。だけど違うんだよ。わかってくれたまい。
 豚肉料理を思い浮かべろ。トンカツ、豚丼、チチャロン、アドボ、ポークソテー、アイスヴァイン。アイスヴァイン?ドイツか。。。なるほど、私がよく購入する豚肉はデンマーク産が多い。デンマークもドイツ圏って感じか。

「背脂 ドイツ」

 あ!!!!コレは!!!!なんだこれ!?!?

 シ ュ マ ル ツ!?!?!?!?

 背脂を刻んで煮込んで香味野菜やりんごを打ち込んで冷やした後にパンに塗って食べる物質が飛び込んできた。私が見たサイトは文字だけで写真がない。しかし、これは、これはひょっとするぞ。そこからシュマルツについて調べ倒す。You Tubeでも検索してみる。やべえ、なんだこれ。ヤベエじゃねえか。

 善は急げとはこんな時に使うのである。背脂の塊を背負い自宅に爆走。走れ走れ東武東上線。自宅に帰り、とりあえずノリで作ってみる。背脂を細かく刻んで鍋にポイ!ガンガン加熱じゃ!そして香味野菜を数種類ギャアアアアアアア!泡が!泡が吹きこぼれてコンロが地獄のような有様に!タ、タスケテー!お、大人の人ー!大人の人来てー!!!!
 火を落としてコンロを掃除、そして粗熱をとってからタッパーに流し込んでしばし待つ。すると、そこには白い脂が存在していた。

「頼む。。。うまく行ってくれ!!!」

 試作カレーを温め、飯をよそって待機。そこにシュマルツを大さじ一杯。。。

「なんじゃこれ!?油田食ってるみたいで全然うまくねえ!あとりんごの風味が邪魔!!!!」

 しかし、パンチはめちゃくちゃ効いている。むしろパンチ以外の何も感じない。これは失敗だが、方向性はあっている気がする。シュマルツには可能性と未来を感じる。昔の私を見ているようだ。もっとも、ボクチンの未来はボッコボコでもう風船につかまってお空を散歩したいよ~ん!って感じで終わってはいるがそれはまたの機会に。。。

「シュマルツは使える。いや、絶対に使いたい。だが、油がギットギトのこのカレーでは脂と油でオーバーフローしてしまう。。。こうなったら!」

 私はレシピが固まっていたカレーをもう一度組み直すことにした。何度も試作してたどり着いたのでかなり抵抗があったが、その抵抗を粉砕したいと思えるパンチがシュマルツにはあったのだ。

「シュマルツが合うカレーってなんだ!?ドイツのカレーを調べるか。カリーヴルスト!?強そう!なにこれ!?ウインナーにカレー粉とケチャップかけただけやないか!なめとんか!もっとカレー食えや!」

 しかし考え方を変えた。ドイツの食べ物ならドイツ料理に合わせれば良い。カレーに近い食べ物はなんだ?シチューか?調べるとアイントプフとグヤーシュが出てきた。アイントプフは豆のスープ、グヤーシュは味噌汁みたいなノリの食べ物。グヤーシュは種類がありすぎるのか見るレシピがすべて違う。その複雑怪奇さ、そして人によって違う味、これはもはやカレーでは?

 とりあえずグヤーシュを作る。カレーを作る時と同じノリで作る。スパイス、玉ねぎを炒め、トマトを入れて塩で味を整える。カレーとほぼ同じだが水分量や各種香味野菜などを入れてみる。そこにとりあえず黄金比でパウダースパイスを入れる。以前のレシピよりも油が少ない。そして水分が多い。ドロっとしていたカレーがシャバシャバのスープカレーのようになった。かなり大きな変化に戸惑いながらもそれを白米に掛けてシュマルツを乗せる。

「うめえ!」

 しかしまだうまくなる。まだまだうまくなる確信がある。インドのハンバーグことコフタも変えるか?ハンバーグ、名前からして思い切りドイツ。ドイツのハンバーグを調べるとフリカデレというハンバーグの元祖が現れた。そのレシピをもとに改良を加える。

「パキスタンカレーはアティテュード!その雰囲気を残しながら俺はドイツに舵を切る!ドイツ風カレーじゃ!」

 試作、試作、また試作。そして納得できる形になった時、カレーとシュマルツを間借りさせてもらう予定の串カツ屋に持っていった。もう年末も近づいていた。

「あれ!?スープカレーみたいになってる!前の方がビジュアル的に良かったね~」

「このカレーに。。。この脂を乗せて完成です。食べてみてください。。。」

「うめえええええ!なにこれ!?これ、カレーなの!?なんて名前のカレーなの!?」

「。。。ハードコアカレーです」

 ハードコアカレー、ここに爆誕!

~続く~

このコンテンツは有料なんだ!でも無料で全部見られるようにしているよ!何が言いたいかわかるかな!?愛してるぜ。

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