灯台に住んでいる人と出会った
アンティーク屋さんに行ったら
パステルカラーの少し悲しげな人物の油絵がいっぱい飾ってあって
「誰が描いたんですか」
「僕だよ」
描いたのはそのお店のオーナーだった。
イギリスっぽいツイードジャケットを着た、お店の雰囲気に似て眼鏡をかけた丸い目と少し出歯がお茶目な男性の髪は長めで私と同じように少し白髪が入っている。
「アーティストですか」
と聞いたら大げさに首を振って
「ただの趣味だよ!」
そこまでムキになって否定しなくても充分うまいけど。
アフリカの布地使ったテーブルランプとか、クロシェ編みの膝掛けとか、個人の部屋っぽいので、
「ここって、ちょっとあなたの部屋みたいな感じ?」
「いや違うよ!ここはちょっと気違いじみて変な店だろう?」
とまたしても自虐的に返された。
「あそこの灯台に住んでいるんだ」
私の住む町は海のそばにあり、河口に立つと灯台が少なくとも4つ見える。
そのうちの2つは灯台としてしはもう使われてなくて、前からどんな人が住んでるんだろうと思ってた。
我が家は築140年だけど、この灯台は確か200年近く前の年号が、正面に刻印されてあった気がする。
そんなとこ住んでることの方が、アンティークとモダンミックスしたオシャレインテリアのこの店より、よっぽど気違いじみてると思う。
「灯台に住むのはどんな感じ?」
「トイレに行くのにたくさん階段を降りなくちゃいけない。カナダに住んでいて1年ちょっと前にこちらに引っ越した」
「カナダ人なの?」
「この辺出身だけど、カナダに10年住んでた。いつも貧乏なんだ。この辺は家賃が安いから借りて店を始めた」
確かに訛りがこの辺の人なのに私ったらばかげた質問した。名古屋人が名古屋訛りの人に奈良県出身の方ですかって聞くようなものだな。
「私は日本に住んでいたけどコロナで夫が日本に帰国できず、こちらに住むことになった」
「日本は住みたい国だな」
私がイギリスに来る時手放したのとそっくりな地球儀が置いてあった。
「日本で持っていて大好きだった地球儀に似てる」というと、
「ワインボトルを2本入れられるんだよ」
と言われて意味がわかんなかったけど、後で調べたら、イギリスではお酒を入れる地球儀は、グローブキャビネットと言って普通らしい。
※イギリスにはアンティークショップが多数ある。
チャリティーショップにも似たようなものか置いてあるけど、アンティークショップだと、オーナーに選ばれた品々で、この店のように統一感やアートな感じのディスプレイであることが多い。
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