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秋の空時計 #毎週ショートショートnote

秋の空時計はまるであてにならない。女心に例えられたのも納得と言えば納得だ。

移り変わりが早く、さっきまで朝のような顔をしていると思ったら、気付けば夕方の雰囲気を醸している。

空時計読みを生業にしている私にとっては、一番苦労させられる季節なのだ。

「すみません、今度の日曜日に、彼女プロポーズしようかと思ってるんです。空時計、読んで頂けますか」

客は20代後半の、少し神経質そうな、リムレス眼鏡をかけた男性。

「わかりました。ではこちらへ」

客を連れ、屋上へ行く。空時計は屋上に設置してあり、人が乗ることで針が動き始める。気候や風速、多くの要素が混ざり合い、やがて針が止まる。うん、OK。

「その日は晴天です。夜、よく夜景の観える場所が良さそうですね」

男性は礼を言い、笑顔で帰って行った。

その週の日曜日は大荒れの天気だった。

鳴り響くスマートフォンの電源を切り、店を閉めてパチンコ屋へと向かう。

一万円負けた。

嗚呼、だから秋は嫌いなんだ。


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