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スベり高等学校 #毎週ショートショートnote

『スベり高等学校』

文字通り「スベる」ことを学ぶ、芸人志望の若者が集まる高校である。

主要5科目の他全ての授業に「如何にスベるか」が盛り込まれ、校庭には故・上島竜兵氏の銅像が置かれている。

入試では学力以上に如何に抵抗無くスベれるかが問われ、面接官全員が笑わないギャグを披露しなければならない。

「スベりこそ、笑いの真髄」
これが学校の理念。

玄関口には歴代校長の、絶妙に面白くない変顔肖像画が並ぶ。

ただスベることが目的ではない。スベることで場の空気を冷えつかせ、その後のひと言で一気に爆笑させる。掌握と爆発のコントロール、それを卒業までに身に付けることを生徒は求められるのだ。

三年生の天翔院龍之介は神童と呼ばれ、入学以来授業中から学園祭、体育祭に至るまで、凡ゆる場面でスベり倒して来た。

生徒会長選挙では、演説の始めから最後まで流麗にスベり、存分に凍りつかせた上に校長の「そらワシの頭やないかい」を引き出し、全校生徒を爆笑させた。

彼が神童のたる所以である。


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