還りたい

 この手に首に
 巻きつけられた細くて青い

 食い込む縄の力強さに

 ぐいぐい引き寄せられるまま
 連れてこられたその先で

 知恵と知識と
 意味と理由を呑まされて

 むせれば髪を掴まれて
 こぼすな生きろとささやかれ

 ともに見たブヨブヨに対しては
 きれいだろうと微笑まれ

 無言でいればあごを掴まれ
 首をかすかにでも横へと振れば

 絞められ蹴られ

 ありがとうをぶら下げていないと
 途端にぶたれるこの場所で

 機械がごとく
 幸福という名の

 偽りの神への賛美歌を歌わされ
 美しいと唱えねばならず

 強奪された安らぎへの恋しさから
 昼寝したくとも許可は下りずに

 そうして体を動かしているうちに

 己が血肉ではなく
 二つの欲望と意図によって紡がれていると

 この押しつけられた肌で気がついたとき
 縄の繋がっている先が見えてしまって

 慟哭に溺れ

 けれど縛りを切るために
 刃をあてがうこともできず

 そもそも銀など置かれておらず
 隠されていて見つけられずに

 ただ背を丸めながら
 そっとみなもを仰ぎ

 還りたいとつぶやいた

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