親の所有物として生まれた子どもの

 わたしは、あなたの夢を叶えるかみさまじゃない。

 わたしは、あなたの洋服遊びに付き合わされるためのお人形じゃない。

 わたしは、あなたの学歴コンプレックスを抑えるための薬じゃない。

 わたしは、あなたの感じ方という水にスッと溶けるような砂糖じゃない。

 わたしは、あなたの耳を周囲のやかましさから守るための耳栓じゃない。

 わたしは、あなたの思考をトレースさせられるための薄紙じゃない。

 わたしは、あなたという土壌を豊かにするための肥料じゃない。

 わたしは、あなたたちの幸せの結晶なんかじゃない。

 わたしは、あなたたちが描いた幸福の絵を飾るための額縁じゃない。

 わたしは、あなたたちのストレスを捨てるゴミ箱じゃない。

 わたしは、あなたたちを好きになるようプログラムされた機械じゃない。

 わたしは、あなたたちの優越感を湿らせるための水じゃない。

 わたしは、あなたたちの離れている心を繋ぐ橋じゃない。

 わたしは、あなたたちの孫という緑を芽吹かせるための太陽じゃない。

 わたしは、あなたたちの名をリレーしていくためのバケツじゃない。

 わたしは、あなたたちの排泄物を受け止めるためのおむつじゃない。

 ひとりの人間です。

 あなたたちの、甘ったるい声や湿った息によってつくられた、ひとりの。

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