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アジェンダブログ:都市とオープンデータ

  • パンデミックは、質の高いコミュニティレベルのオープンデータが都市のレジリエンスにとって非常に重要であることを示しました。

  • 一方で、各都市での質の高いオープンデータ実現のために、G20 Global Smart Cities Alliance (GSCA) は、36のパイオニア都市とともにベストプラクティスに基づいたオープンデータポリシーの実装を推進してきましたが、都市での実装には、もう一段踏み込んだ取り組みが必要です。

  • 2022-2023年のG20議長国であるインド政府とも協調し、GSCAはこの課題に焦点を当てた「Global City Data Movement」を開発しています。

本記事はアジェンダブログ「Here's how we can make the most of open data in our cities」を簡易翻訳・編集した日本語版です。原文(筆者:Andrew CollingeYasunori MochizukiShefali Rai)はこちらをご覧ください↓

オープンデータのインパクト

パンデミックは、オープンデータの重要性を多くの人に理解させました。ジョンズ・ホプキンス大学のオープンデータに基づいたCOVID-19ダッシュボードが世界中の人々から注目を集め、あっという間に10億ページビューを超えたことはまだ記憶に新しいことと思います。また多くの都市がきめ細かいデータに基づいてコミュニティのリスクプロファイル、リソース管理ツール、リアルタイムの感染マップに取り組み、一定の成果をあげました。

出典:ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター

パンデミック以外にも、気候変動、エネルギー危機、さらには社会的格差から犯罪まで、世界が直面するさまざまな危機と課題への対応としてオープンデータの可能性は無限です。エネルギー、インフラ、不動産、交通、消費者行動、気象などあらゆるセクターが絡み合う複雑さ、さらにはオープンデータと機微データとの関係においても、ガバナンスと連携基盤を備えたオープンデータのエコシステムに改めて注目が集まっています。

オープンデータとG20モデルポリシー

ロンドン、ニューヨーク、バルセロナ、アムステルダム、ドバイなどが事例として取り上げられるように、政府や自治体によるオープンデータの取り組みには10年以上の歴史があります。データによるサービスのデジタル化、ガバナンスの効いたデータ管理によって都市全体の価値を向上させることは、長い間、関係者の間で議論されてきました。

2020年11月、G20 Global Smart Cities Alliance(GSCA)は、Global Policy Roadmapのひとつとして、オープンデータのモデルポリシーを発表しました。世界の有識者達によって作成されたこのモデルポリシーは、オープンデータ活用を目指す都市を対象に、ガバナンス、技術標準、データインフラ、ステークホルダーとエコシステムの巻き込みなどを網羅し、オープンデータのビジネスと行政面の実践事例をつくることを支援するツールを備えています。

オープンデータポリシー実装という挑戦

ただしオープンデータポリシーを導入しても、多くの都市がそのエコシステム構築に悩み、オープンデータによって生み出された価値の把握と立証に苦労しているのも事実です。GSCA加盟メンバーでもあるパイオニア都市との学び合いでは、特定の課題とデータ連携に焦点を当てたエコシステムと民間セクターとの関係、複合的な協働を促すデジタル・アプローチ、そしてデータから得られた結果やサービスがもたらす成果にフォーカスすることの重要性が共有されています。

そのほか、データ分析やエンジニアリングに必要とされるスキル、そのデリバリーや製品開発に関する課題、データプライバシーに関する懸念 (ロンドンは33の自治体当局に対して「サービスとしてのデータ倫理」を確立)、データ管理プロセスの自動化に起因するテクノロジー・ガバナンスなども重要であることが指摘されています。

実際、都市とデータに関する議論は、オープンデータの成果を吟味したうえで、最前線にいる担当者、有識者、民間パートナーなどと連携していく必要があり、その活動は広がりをみせています。例えばNYCのOpen Data Policy Lab(https://opendatapolicylab.org/)は、目的主導型のオープンデータ公開を推進しています。Open Data InstituteのSmart Data Innovation Guidebookは、オープンバンキングからエネルギーまでの分野において、行政当局主導でエコシステム全体のデータ共有を行ってイノベーションを推進する事例を紹介しています。エネルギー領域のIcebreaker OneのOpen Energyイニシアチブでは、エネルギーデータの発見、アクセス、共有のためのガバナンス、標準、技術を提供しています。こうした活動は、オープンデータが生み出す価値と投資効率という根本的な課題に対するインサイト獲得にもつながるでしょう。さらにフェイスブックのData for Good世界資源研究所などが公開しているデータやツールからは、データをどのように保存、共有、利用するのか、そして誰がどのような目的で利用するのかなど、注目すべき視座が得られる場となっています。

G20 Global City Data Movement

GSCAは、インドがG20議長国を引き継ぐにあたり、スマートシティ・ミッションとして運営されているインド国内にある100を超えるスマートシティから得られた膨大なデータ関連の知見をもとに、G20 Global City Data Movementを提案しています。このイニシアチブではデータ戦略の成熟度を問わず、スマートシティに取り組む都市を結びつけ、ワークショップ、P2Pラーニング、エビデンス収集、実施支援を通じて都市当局によるデータ活用の信頼性を高め、活動開始から1年以内に事例と成果のグローバルレポジトリを作成する予定です。

こうしたイニシアティブは、データ主導による都市変革とテクノロジーガバナンスに大きな推進力を与えます。インドおよび世界の都市を対象に、自治体における脱炭素化、収入源となるデータ収益化、都市の価値創造、第四次産業革命技術に対応し管理するための行政当局での人材開発など、都市の変革目標とデータの力を実装・評価するために必要となる現場の力を最大限、支援する予定です。

G20 Global City Data Movementは、GSCA日本でも展開予定です。ご関心のある方は、GSCAのウェブサイト(www.globalsmartcitiesalliance.org)からご連絡いただければ幸いです。


原文筆者:
Andrew Collinge(Strategic Advisor, Dubai Digital Authority)
Yasunori Mochizuki(NEC  Fellow, World Economic Forum)
Shefali Rai (Project Specialist, C4IR India) 

翻訳協力:
木吉 雄哉 (スマートシティプロジェクト・インターン)


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